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GUILTY GEARシリーズ25周年記念:サンプリングから見る石渡太輔のジャギジャギ世界観

 アークシステムワークスの人気タイトルGUILTY GEAR(以下GG)シリーズは、1998年『GUILTY GEAR』にはじまり、2021年『GUILTY GEAR STRIVE』をもって、そのストーリーが完結した。携帯ハードなどで発表されたスピンオフ的タイトルやマイナーチェンジは省略するが、その道程にはプレイステーションで発表された『GUILTY GEAR』、アーケードへと進出した『GUILTY GEAR X』(2000)とその続編『GUILTY GEAR XX』(2002)、ストラテジーアクションとして作られたXBOX用ソフト『GUILTY GEAR 2 OVERTURE』(2007)、再びアーケードに戻った『GUILTY GEAR Xrd』(2014)、そして最新作『GUILTY GEAR STRIVE』という舞台が用意されていた。
 家庭用『XX』から入った筆者にとっても20年の時が経っている。だからこそ、シリーズの生みの親たる石渡太輔氏が、(一部のコンシューマーやスピンオフタイトルを除いて)一貫してゲームを統括してきた末に、自らの手でサーガを完結させたことには感慨深いものがある。常にリアルタイムでゲームに触れてはいなかった(『XX』のバージョンアップ多すぎッス)、そんな不埒なユーザーこと筆者だが、完結作『STRIVE』に触れながら作品をめぐるアレコレを調べていくと、石渡氏のジャギジャギな世界観がいまなお残っていることに驚き、再び歓んだ。
 ジャギジャギとは、石渡氏が敬愛するJudas Priestのギターを形容する際に用いたオノマトペである(『ギルティギア サウンドコンプリートBOX』収録「THE 座談会」より)。BGM用に生楽器の音を録音する際、あらゆる場面でミュージシャンに要求したその音は、混沌としたGGワールドを象徴するものだ。それは『GUILTY GEAR』のころから、石渡氏の脳内にある秘密の花園(シークレットガーデン)にてそれは鳴り響き、音に限らず外部からの引用=サンプリングが構成を手伝うフランケンシュタイン的光景を包括している。つまりは、耳にあるいは目にジャギジャギなのである。マニアックだが気性の荒さを秘めているオタク×ヤンキー、その両極端な性質を持つ両刃のノコギリがごとく世界観。そこにはDJ的な知識の装飾が希薄で、センスエリートな空気はほぼない。音楽ジャンルで例えるなら、過去の音楽を再評価・再利用するヒップホップや渋谷系に代表されるレアグルーブ的価値観にあらず、むしろそれらに押しのけられたオールドロックの世界が芯のまま続けられているのである。シリーズ25周年となる2023年のうちに、その領域をハンパになるのは承知の上で、書き出してみたかった。
 とはいえ、サンプリングの答え合わせというは易いが、量は膨大だし憶測の域を出ないものを羅列するだけでは物足りず。よって今回はサンプリングされた対象を引き出すことで浮き彫りになる石渡氏独自の世界観、言い換えれば、キャラクターメイキングやゲームシステムに対する認識へと目を向けてみる。
最初に留意してほしいのは、本記事ではシリーズのキモである生音志向なメタルBGMからの指摘はほぼ行なっていない!筆者が音楽的・文化的にメタルというものへの造詣が浅いことからの判断である。メタルに精通している方は各自補足していただきたい。

キャラクター

ゲームデザイナーズミュージシャン
 
ここから頻繁に名が書かれる『ギルティギアゼクス ドラフティングアートワークス』(2001 エンターブレイン。以下『ドラフティングアートワークス』)掲載の石渡太輔インタビューは、本文1ページの量ながら興味深い記述に富む。創作内におけるファッションのモチーフを問われた石渡氏は、「学生時代から引きずっていた漫画『BASTARD‼-暗黒の破壊神-』あたりの影響が出た」と話している。萩原一至『BASTARD‼』はファッションのみならず、「科学と魔法の共存」「人と魔の戦いによって荒廃した世界」、そして「メタルまたはハードロック由来の命名」と、『GUILTY GEAR』の構成要素を多分に含む。後年になっても石渡氏は『ストリートファイターII』に、『BASTARD‼』的なストーリーを盛り込みたかったと述懐している。
『GUILTY GEAR』は少人数で制作されたことでも知られているが、開発当時はコンテの作り方をアニメ制作会社に教わり、システム面は既存のゲームの攻略本から学んだという。頭の中あるいはすでに戯画化されたイメージを埋めるべく、過去の対戦格闘ゲームがサンプル化された。特に陰影を少ない色調で表現するアニメ的なグラフィックと、アメコミ的なケレン味あるキャラクターたちが跋扈するカプコン『ヴァンパイア』シリーズは、後述する同社の『ジョジョの奇妙な冒険』と並んで指標となったことだろう。シリアスシーンに崩し絵を描く(≠ギャグを挟む)内藤泰弘『TRIGUN』的な緊張と緩和も、GGシリーズのアニメーションとの共通性があるはずなのだが、今回は割愛する。
 『GUILTY GEAR』は音楽的にいえば耳コピ的に作られた。そして音楽とはGGワールドの輪郭である。石渡氏の音楽嗜好はBGMに反映されるだけでなく、敬愛するミュージシャンたちがキャラクターとして箱庭の中で再創造されている。引き続き『ドラフティングアートワークス』に目を向けてみよう。「音楽が好きになるきっかけはQUEEN」と石渡氏は話しており、同書のGGワールドを補足する単語コーナーでも、なぜか同バンドの項目があって「イギリス最強のロックバンド」と紹介されているほどだ。このQUEEN熱はGGシリーズ主人公のソル=バッドガイを鋳造し、本名であるフレデリックと通り名バッドガイ(フレディのソロアルバム『Mr. Bad Guy』(1985)に由来する)の刻印まで付けてきた。ソルのテーマ曲「Keep Yourself Alive II」は、QUEEN「Keep Yourself Alive」の続編を勝手に名乗り、同曲の邦題「炎のロックンロール」は(対戦時における)ソルのイメージの源とも言いたげだ。
『餓狼伝説』のビリー・カーンがアクセル・ローズ(Guns N' Roses)をモデルにするなど、特定のミュージシャンや楽曲を引用することは過去にもあったが、世界観の構成要素にメタル〜ハードロックを持ち出し、そのアイコンをモチーフにするまでの試みは前例がなかった。『GUILTY GEAR』から『STRIVE』まで皆勤するアクセル・ロウが、アクセル・ローズの名とビリー・カーンのスタイルを踏襲したデザインであることは、記号的な使用に留まっていた過去の作品への返事に思える。ソルと並んでストーリーの根幹に絡むことをふまえれば、アクセルもGGワールドの髄と呼べる存在である。
もう一つ、若きころに改造されて人外の力を得たソル(フレデリック)と、その施術を実行した飛鳥=R=クロイツ(『STRIVE』にてプレイアブル化)の関係性は、『デビルマン』の不動明と飛鳥了に見えなくもない。ダークヒーロー志向であるソルの模様の一つに数えておきたい。

椎名林檎

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椎名林檎『幸福論/すべりだい』(1998年5月27日発売)。初代『ギルティギア』発売から約2週間後にリリースされた
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ここでは割愛するが、椎名林檎のアーティスト写真やメディア掲載時のショットはイノ的なものが散見できる(逆です)。

 さんざん指摘されてきているように、イノのモデルが椎名林檎であることは明らかだ。ホクロの位置から生年月日が一緒なうえに、デューゼンバーグのギターに「ディートリッヒ」と名付けるところまでダブらせている。必殺技の名称も東京事変的な熟語+カタカナ作法で、ペダンチック時々エロチックである。
またまた『ドラフティングアートワークス』を引っ張り出すが、まだイノが登場しない『X』シリーズの時点で、石渡氏は「多分後々まで影響を受け続けると思うのが椎名林檎ですね」と話している。その予感通り、『XX』から登場したイノは同シリーズのボスキャラクターも兼任した。
 ストーリー上でも重要な立ち位置であるだけでなし、『ドラフティングアートワークス』内インタビューで「ミュージシャンになりたい」と叫ぶ石渡氏の妄想を具現化したかのごとく、『XX』シリーズの勝利アニメーションではギターを弾く。また同シリーズのテーマ曲「陰祭り」ブレイク部分は石渡氏が演奏に参加している数少ない機会で、ドップラー効果めいたギターが聞ける。ある意味でソル以上に石渡氏の感情移入が激しく、アニマとさえ呼べるキャラクターである。
 イノ(I-NO)という名前はブライアン・イーノからと思いきや、エスペラントで女性名詞につく接尾語「ino」とされている。「カフェ・ド・アーク」というアークシステムワークス社発のラジオにて言及されたとWikipediaに記載されていたが、誰か録音にあたってもらえないだろうか。ちなみに『Xrd』から登場したラムレザルの技名はすべてエスペラントであり、『STRIVE』のテーマ曲でも冒頭のみだが同言語で歌われる。

カート・コバーン

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有名なNIRVANAのロゴ

 公式からの言及こそないが、『STRIVE』から登場したハッピーケイオスのサングラスがNIRVANAという上記Xポストには膝を打った。髪型もカート・コバーン(発音には是非もあるが、日本メディアでは馴染あるカート・コバーン表記とした)風で、常に半裸なのはイギー・ポップだという意見も海外のフォーラムで見かけた。これだけでは説得力に欠けるが、ハッピーケイオスのキャッチコピー「ガンスリンガージャンクメサイア」が、北米で「broken gunslinger messiah」に変更された事実がこの説を補強してくれる。Junkはジャンキー、ヘロイン中毒のそれを意味するスラングで、これが封じられることで却ってコバーンが意識されるからだ。
GGシリーズのネーミングはメタルとハードロック、それも80年代までのそれらから引っ張ってきたのがほとんどだ。ゆえにイノ(椎名林檎)や、90sUSグランジの彗星たるカート・コバーンをモチーフにしたハッピーケイオスの存在感が増す。

 ここまで述べてきた3人は『STRIVE』ストーリーにおいて重要なポジションである。イノとハッピーケイオスは互いが半身的関係と説明される。つまり石渡氏の中では椎名林檎とカート・コバーンが同一存在なのだ。フレディ・マーキュリー、椎名林檎、カート・コバーンを中心に世界が揺るがされる図式は、そのまま石渡氏のロック史観にさえ思えるのだった。

アンジーとネオ時代劇
 『X』シリーズから登場する日本人キャラクター御津闇慈と、『GUILTY GEAR』の隠しキャラだった梅喧は、日本人という設定に準じてか、日本由来の元ネタである。闇慈は日本のメタルバンドであるアンジーとそのボーカルである水戸華之介からの命名と思われる。
梅喧は手塚治虫『どろろ』や沙村広明『無限の住人』のような人体を武器にした武士あるいは流れ者というコンセプトが前に出たと『ドラフティング』内で言及されている。『無限の住人』は『るろうに剣心』(北米題『SamuraiX』)と並ぶ90年代和製スチームパンクことネオ時代劇で、こちらもGGシリーズのようにハードロックやメタルからキャラクターの名前を引用している。Black Sabbathを黒衣鯖人(くろいさばと)とするなど、英名を無理やり翻訳する痛快なセンスは、『X』から登場した蔵土縁紗夢(クラドベリ・ジャム→クロウドベリー・ジャム)へ受け継がれている。
 余談だが『るろうに剣心』ではアンジーから名をとったキャラクターがいるほか、同バンドの曲名「天井裏より愛を込めて」が口に出される。SNK社とのメタルというかむしろヒップホップなやり取りをふまえると、同漫画と90年代対戦格闘ゲームが共有していた光景を考える余地は広大だ。
余談ついでに脱線するが、2003年上半期に家庭用『XX』(2002年12月発売)を購入して間もなかった筆者は、『無限の住人』づてに同作者の『竹易てあし漫画全集 おひっこし』を手にとった。ある場面でバンドをやっている大学生が先輩に対して「ヴェノムのコピーはもうやめましょう」とこぼす。このバンドが『X』から登場したヴェノムの由来と知ったきっかけであった。

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『竹易てあし漫画全集 おひっこし』(2002年6月)
沙村広明によるワイルドな目つきの女性は『GG』シリーズのキャラクターにも影響を与えている、ような気がする

その他
ここからは上で勝手に括った石渡的ロック史観に属さぬ、周縁のキャラクターたちを少しだけ拾ってみる。すべてのキャラクターが石渡氏の頭の中から湧いてくるということはないようで、ファウストの紙袋を被っているというデザインは、同僚が描いた「将来の石渡氏」というおふざけイラストが発端であった。そこに『エレファントマン』を思い起こしたというのは納得できるが、そこからコメディリリーフ(ストーリー上では真面目)にするという方針転換は面白い。
『Xrd』までのファウストは日本人向けのネタが多く、ドリフのネタはその典型であった。海外のファンダムを眺めてみて気付くと同時に面白く感じるのは、こうした日本人に向けられたネタが海外圏でおそらく伝わっていないということだ。たとえばこのwikiではドリフ由来である「オイッス!~声が小さい~もういっちょオイッス!」が「日本の挨拶の様式」と解説されている。国際的なシェアが前提となった昨今を鑑みた結果、『STRIVE』にてファウストのキャラクターは大きく変更された。それにしても変わりすぎな気がするけど・・・。

ファウストはコミカルなアクションが特徴のキャラクターですが,そのネタ元は日本人にしか通じないものも多い。グローバルで展開していくのに,まだドリフでいいのかみたいな部分はありました(笑)。彼のイメージとバックボーンが面白く生きる形にした結果,今のビジュアルになったわけです。

『「GUILTY GEAR -STRIVE-」の開発を務める石渡太輔氏&片野アキラ氏インタビュー』より

 『XX』でファウストと縁のあったザッパも、不条理なユーモアを持つコメディ枠であった。幽霊に憑依されて闘うという特異な設定(奇しくもAC版『XX』と同じ2002年5月に稼働した『レイジ・オブ・ザ・ドラゴンズ』には、同じく悪霊に取り憑かれて闘うアリスがいる)で、通常ではあり得ない方向に関節を回す各モーションや、プレイヤーの操作とは関係なく発される意味不明のセリフが大きなインパクトを与えてくれる。ダッシュに顕著だが、関節の道理を無視したモーションは映画『エクソシスト』をなぞったものである。そしてザッパに付きまとう女幽霊・S子は、Jホラー映画のアイドルとさえ呼べる『リング』(1998)の貞子が由来であろう。悪霊に憑依されるという設定から連想したのか、『エクソシスト』から『リング』、そして後述の『ジョジョ』とあちこちの幽霊を引っ張り込んできたザッパのコンセプトは、石渡氏のツギハギakaジャギジャギな世界観を体現している。なお、S子という名前はアンジーの楽曲に「S子、赤いスカート」があるため、これとかけている可能性もある。
 ザッパの怪言動は声優のうえだゆうじが担当していた『セクシーコマンドー外伝 すごいよマサルさん』へのオマージュだろうか。ザッパの誕生日はうえだ氏と同じ日に設定してあるなど、石渡氏にとって声優もキャラクターを構成する要素として重視している。自身の影を使役するキャラクター・ザトーONEが、『XX』からはその影「エディ」(Iron Maidenのジャケットによく登場するマスコット的存在にちなむ)としてプレイアブル化したことは、その好例だ。ザトーの声をあてていた塩沢兼人が2000年に逝去したことをうけ、キャラクターの人格そのものを子安武人演じるエディにシフトさせた。これについて季刊『Comickers』2003年秋号収録のインタビュー内では、「声優さんもキャラクターの一部として運命を共にしたかった」と語られている。『Xrd』になるとザトーは蘇生し、声はエディの子安武人氏がそのまま担当するようになった(厳密にはドラマCD『NIGHT OF KNIVES』の時点で子安氏が後任しているが)。興味深いのが、死を経過したという理由でザトーが無感情・無関心な性格になっていることである。あくまで生前のザトー、塩沢氏が演じるザトーではないということを告げるかのようであった。

システム

90年代への回答
 パロディを「解釈」とするならGGシリーズは紛うことなき90年代対戦格闘ゲームのパロディである。過去の作品に対する称賛はもちろん、不満や疑問に思った点への解答がシステム面で表現されていることにも留意したい。キャラクターデザインにおいても影響色濃い『ヴァンパイア』シリーズからは、同作のチェーンコンボ(通常技が小→中→大の順番で非目押し的に出せる)が、GGでは「ガトリングコンビネーション」へとアレンジされていると思われる。通常技を目押しでなくキャンセルで出せる点ではチェーンコンボと同じだが、特定のルート(いわゆる小攻撃から大攻撃の順に限らない)がキャラクターごとに用意されている。
もう一つ『ヴァンパイア』から例を挙げると、『XX』の追加キャラであるスレイヤーは、吸血鬼という出自と動作中無敵になるダッシュがデミトリ的である。デミトリのダッシュは必殺技でキャンセルできるが、スレイヤーの場合はジャンプでキャンセルがかけられるようになっている。ダッシュをキャンセルしたジャンプを、さらに必殺技でキャンセルすることで、ダッシュの無敵時間が各行動に付加されるという仕組みだ。『ストリートファイター2』のキャンセルや、以降のシリーズで重要になった移動投げなど、システムの盲点が遊び方の幅を増やすのは対戦格闘ゲーム史において常である。『GUILTY GEAR』が既存の対戦格闘ゲームの攻略本を読むことで構築されたことをふまえると、スレイヤーの無敵付加や、ここでは説明を省くがファウストの「ドリキャン」といったテクニックは、ユーザーがゲームのポテンシャルを広げてきたことへの敬意に見えてしまうのだ。
 先にも挙げたザッパは、幽霊にまつわるフィクションからサンプリングしたデザインだったが、ゲームシステム面でもサンプリングを意識させるところも覚えておきたい。まずザッパの性能は、悪霊にとりつかれている設定ゆえに複数の霊がランダムで召喚されるというトリッキーなものだった。この幽霊を憑依させて、時に本体と同時に攻撃を仕掛ける図は『GUILTY GEAR』リリースの7ヶ月後に稼働したカプコン『ジョジョの奇妙な冒険』(1998年12月稼働。以下・ACジョジョ)のパロディ(解釈)に見えてしまう。スタンドとして操作する人形と本体で同時に攻撃が仕掛けられるデーボや、連続入力した行動をスタンドにとらせながら本体が自由に動ける「タンデムアタック」のシステムをザッパの叩き台とするのは、本体の風貌が『ジョジョ』風なこともあいまって、そう突飛なことではないだろう。ちなみに『ACジョジョ』は原作でいう「第三部 スターダストクルセイダース」をベースにした作品であり、原作第1話タイトルは「悪霊にとりつかれた男」であった。
原作から描き起こしたクセあるポーズとポーズの合間を、まるで荒木飛呂彦本人が手がけたかのごとく自然に埋めている『ACジョジョ』は、マンガをゲームとして動かしていた。かつて『BASTARD』をゲームにしたいという石渡氏の原初の願望は、これによって刺激され『X』(2000)へのブラッシュアップに繋がったのではないか。不愛想だが根っこは暖かいソルのキャラクター像(「やれやれだぜ」というセリフ付き)から、最新作『STRIVE』で追加されたアクセルの時間停止ムーヴ「ワンヴィジョン」(曲名はQUEENの楽曲に由来する)に至るまで、『ジョジョの奇妙な冒険』はGGシリーズを貫いている。
 他社だが、SNK『サムライスピリッツ』シリーズにも倣っているところが大きいことは追記しておきたい。『GUILTY GEAR』時代の血がドバドバ出るエフェクトやHSのヒットストップにはじまり、殺界~一撃必殺技(絶命奥義)、『XX』以降に搭載されたサイクバースト(怒り爆発)、試合にスローモーションをかける『Xrd』の黄色ロマンキャンセル(『零』無の境地)あたりはに倣うところが大きいと思われるので、こちらも追記しておく。

破壊的セルフパロディ
 マイナーチェンジを繰り返していた『XX』シリーズのユーザーにとって、2014年に稼働した『Xrd』は新鮮さと懐かしさを与えただろう。少なくとも筆者にとってはそうだった。新規デザインとともにアニメのように描画される3Dモデルを得たキャラクターと、『XX』(中でもシリーズ全盛期にあたる『#R』)ベースな操作感覚とBGMの方向性によるコントラストは、GGが自らをサンプルした結果だった。
特にBGMは旧作へのデジャヴを与える瞬間が頻出する。ミリアのテーマ「The Lily of steel」は『X』〜『XX』「Writhe In Pain」イントロ的な4つ打ちとハープシコード風のキーボードからはじまる。スレイヤーのテーマ「Jack-a-Dandy」は、サックスのリフもさることながら、ベースが旧作BGM「Haven't You Got Eyes In Your Head?」のギターに近いフレーズを弾いているところがニクイ。
何よりも象徴的であるのは、新規BGMの一つ「Magnolia Èclair」がJudas Priest「Electric Eye」風イントロを持つジャギジャギ讃歌であったことだ。『Xrd』が『XX』のリビルドであること、ひいては石渡氏の世界観が何一つブレていなかったことが宣言されている。

  『Xrd』は旧来のユーザーにとって敷居が低く、新規ユーザーにとってはその逆であった。だからこそ『STRIVE』の開発において、パロディ=解釈のルールがGG自らに適用されたのだった。つまり何が従来のGGシリーズを構築していたかを客観的に捉え、その上で見つけ出した個々の要素を破壊していくことである。ユーザーの絶対数を増やすというプラグマティックな必要こそあれど、これが『STRIVE』開発の核であったことは、こちらのようなインタビューでも告白されている。
興味深いのが『STRIVE』発売直前にアップされたCutscenesのインタビュー動画で、「遊べば遊ぶほど発見があることが"ギルティギアらしさ"」と石渡氏が話していることである。まっさらになったGGワールドでも、プレイヤーがテクニックを見つけて、ゲームを発展させていくという往年の対戦格闘ゲームが見せていた光景が幻視されているとでもいうべきか。そんな再構築されたGGワールドにおいて筆者が真っ先に見つけたものは、石渡氏の世界認識、フレディ・マーキュリーや椎名林檎といった(氏にとっての)ロックスターが世界の中心となる、20年以上変わらないジャギジャギなそれであった。これだけではなんなので、『STRIVE』もやりこまねばね。

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