法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

作品が批判されて委縮することを拒否したくて都知事候補「ひまそらあかね」を支持した表現者は、とりあえず世にだした作品が批評されるのに耐えられないのはナイーブ過ぎると認めるべきだと思うよ

 たとえば藤子・F・不二雄エスパー魔美』の1エピソード「くたばれ評論家」に、下記のような有名なくだりがある。
『エスパー魔美』の名言は、批判を忘れておしまいにしようという主張ではない - 法華狼の日記

公表した表現が批判されることを覚悟すべきこと。批判することも反発しかえすことも自由であること。
そうした表現の自由にまつわる主張が、表現者である父親の人格とともに描かれ、この頁だけでも普遍性をもっている。

 これは批判についての一般論をそのまま漫画化しただけともいえるが、批判された表現者が批評の権利を認めたことでドラマとして味わいがある。
 上記エントリで紹介したように、エピソード全体でも表現と批評をめぐる多様な視点がくみこまれ、有名なくだり以外にも見どころが多い。


 さて、都知事選で「ひまそらあかね」名義で立候補した暇な空白氏*1に対して、複数の表現者が"燃やされる"ことへの抵抗を期待して支持を表明していたようだ。


宇崎ちゃん、アツギ、キズナアイラブライブVtuber戸定梨香ちゃん、
温泉むすめ等の文化が続けてフェミニストに炎上させると
ひまそらあかねが今に繫がる不正の追求を始めた
文化を燃やすような
正義を気取ったやつには裏があるはず
本当に立派なことをしているやつか、調べてやろうという理由からだそうです。


ひまそらさんの追求がはじまり、左翼利権が表にでるようになると有名左派アカウントによる文化を燃やす行為は極端に減った。


ひまそらさんが救ってくれている文化には俺の関わる漫画も含まれている


ひまそらさんの行動に大変感謝している


ひまそらさんは一人で不正と戦っているので
彼のしてくれた恩に報いることができないと思っていた。
そんな、ひまそらあかねが都知事選に出馬した。
せめてこれくらいはとの思いで、
すり替え大好きの人権村の住民に叩かれる事
覚悟してポストしている。
ひまそらあかねがいなければ
次はあなたの大好きな作品が燃やされるかもしれない。
俺は小学生の時に週刊少年ジャンプを発売日前の早売りをする店で買っていた
あのときの高揚感は今でも忘れられない。
そういう文化を潰そうをするやつを許せない
あのときの高揚感を次世代にも受け継がせたいので
俺はキャンセルカルチャーによって漫画を描く事が
できなくなっても仕方がないという思いでポストしています
といわけでちなみに超短期休載中の喧嘩稼業の続きを描く気があるんだよとアピールしています。


#ひまそらあかね
※有名人、本名の方はリツイート&いいねは押さないでください。

 しかし「文化を燃やす」と上記ツイートで紹介された大半が、個々の妥当性や対応の是非に違いがあるとしても、批判という言論の自由を行使しただけの事例ばかり。
 たとえば暇な空白氏が標的にしている仁藤夢乃氏は*2、あくまで観光地で目にした広告的コンテンツとしての「温泉むすめ」をツイッターで批判的に言及しただけで、批評という言論の自由の範囲内だった。コンテンツも設定を修正しつつ継続している*3
 他に「宇崎ちゃん」も批判対象は献血ポスターであって作品『宇崎ちゃんは遊びたい!』そのものではないと発端の人物が明言したし*4、事実として修正されたのはポスターのガイドラインだけで*5、漫画連載も2期にわたるTVアニメ化も特に延期などなく継続している。
 上記ツイートにはないジャニーズ問題*6でも、刑事裁判で性加害が認められるような問題が噴出しただけで、関連する名称変更や活動自粛などはありつつ、所属していたタレントの芸能活動は継続している。


 一方で都知事選において有力候補者に数えられていた蓮舫氏は、政治家として議会において法規制に抵抗した実績がある。


10年前「非実在青少年」問題が奇襲的に盛り込まれガチのマンガアニメ規制になりそうだった際、動きの鈍かった都議会民主党の尻叩いて見直しまで持ってった立役者が蓮舫議員であるのって意外と知られてないんだよね。表現規制反対派から彼女は人気なさそうだけどそのことは覚えておいた方がいいと思う。

 もちろん、蓮舫氏が表現規制派であるかのような評価がインターネットで散見されていることも知っている。
 しかし根拠といえば、蓮舫氏がモデルのキャラクターの語る攻撃対象が表現そのものであるかのように誤解されている『アニメ店長』であったり*7蓮舫氏と石原慎太郎氏がモデルのキャラクターが最初の放送をのぞいて黒塗りされている『銀魂』であったりと*8、そもそもフィクションであったり関係者が抗議の存在を否定している*9ものばかり。
 選挙における投票行為は候補者の全肯定を意味しない。蓮舫氏に他の問題点があったとしても、反表現規制を理由とした投票の選択肢になってもおかしくないと思うのだが。


 そして暇な空白氏の発言を本当にきちんと追っているなら、2022年12月に制作会社公認のゲームMODをスクリーンショットなどを根拠に批判して、作者が更新を停止したことは知っているだろう。


なんかランスMODが魔王雑魚いの解釈違いって言われたので更新停止したぞお前のせいだぞとか言われるんやが、公認をもらうことを了承して世にだした作品が批評されるのに耐えられないのはナイーブ過ぎると思う。ナイーブな人みたいだから本件過去ツイート削除して、二度とランスMODには触れません

 念のため、上記ツイートそのものは一般論としては正しいとは思うし、更新停止にいたらしめた側の釈明だとしても自由な言論の範疇ではあるとは思う。
 しかし第三者にすすめられたためらしいとはいえ*10遊んでいないゲームを批判する自由を認められるなら*11、原理的に望まずとも目にしてしまう広告を批判する自由も認めるべきではないだろうか。
 もちろん表現への批判や作者が委縮することの評価はそれぞれの場合によるし、どこを基準にするかも個々人で異なるが、「文化を燃やす」という表現に暇な空白氏の行為をふくめないことは難しいのではないだろうか。

*1:はてなアカウントはid:kuuhaku2

*2:そもそも表現を批判されたことへの反発で監査請求をはじめたと公言することは、裁判で公益性を認められないことにつながる可能性が弁護士らから指摘されている。 Colaboへの監査請求を支持する動機に「リーガルハラスメント」もあることが、はてな匿名ダイアリーで語るに落ちていた - 法華狼の日記

*3:「夜這い」表現で炎上中の『温泉むすめ』、名前が消えた後援企業の見解は | 週刊女性PRIME

*4:日赤「宇崎ちゃん」献血PRポスターは"過度に性的”か 騒動に火をつけた米国人男性に聞いてみた | 文春オンライン

*5:日赤が「宇崎ちゃん」献血コラボきっかけでガイドライン策定、第二弾は漫画仕立てに - 弁護士ドットコム

*6:アニメ監督というだけでなくJAniCA代表理事でもある入江泰浩氏がリツイートしていて悪い意味で驚いた。 ノルシュテイン監督がウクライナ侵攻の責任をゼレンスキーにもとめ、幾原邦彦監督が暴行声優の降板をSNSの罰あつかいし、入江泰浩監督がひまそらあかねを真っ当と評する時代 - 法華狼の日記

*7:『アニメ店長』の断片的な描写から、あたかも蓮舫氏が表現規制派のように受容されている違和感 - 法華狼の日記

*8:

*9:「銀魂」伝説のレンホウ回に再び注目が集まる 規制はDVD発売時のもの - ねとらぼ

*10:暇空茜氏、流れてきた戦国ランスMODのスクショをみて「正座させるレベルに解釈違い」など→作者、更新停止へ→「批評されるのに耐えられないのはナイーブ過ぎると思う」 - Togetter [トゥギャッター]

*11:なお、ポケットモンスターのデザイン模倣が批判されたゲーム「パルワールド」に対しては、虚偽情報を根拠に批判していたという。収益プレビュー数が伸びない暇空茜、捏造情報でパルワールド炎上させようとする - Togetter [トゥギャッター]