pixivは2024年5月28日付でプライバシーポリシーを改定しました。改訂履歴
pixivは2024年5月28日付でプライバシーポリシーを改定しました。改訂履歴
※キャプション必読ください
この家に来てから一年ほどが経ったある日の夜のこと。
「おやすみなさい」とマスターの手の甲にキスをして、頭を撫ででもらう。
寝床に入って少しすると、近くですぅすぅと小さな寝息が聞こえてきた。
姿が見えなくてもすやすやと眠っている様子が目に浮かぶ。ニョンかな。
かく言う私は全然眠れなかった。
ランダルと一緒に昼寝をしてしまったのがいけなかったかな…。
ランダルはこの家の次男。たまにとんでもないことを仕出かすけど、私に懐いてくれているらしく、元気に「遊ぼう!」と寄ってくる姿が愛らしい。
彼のペットのセバスチャンは……いい子だけど、まだ私のことを警戒している感じがする。
来たばかりだし、仕方ないか。
せめて脱走するのをやめてくれたら、みんな手荒な真似はしないと思うのだけれど。
彼は自分でトラブルを寄せ付けているような気がする。
私も脱走しようと企てたことがあったっけ。
みんなの目を盗んで家を出たはいいものの、帰る場所がわからなくて。
挙げ句の果てには森で迷って、結局マスターに迎えにきてもらったことがある。
この家に来る以前のことは忘れてしまった。
気づいたら森の中にいて、ニェンに抱えられながらマスターの後についてこの家に向かっていた。
初めの頃は何度かマスターに聞いてみたことがあったけれど「🌸は大切な家族、私の愛する子猫なのだから、必要ないだろう」とはぐらかされるばかりで教えてくれないので、もう聞くのはやめることにした。
それでも刹那的に頭をよぎる記憶がある。
どれも黒く濁っていて、近くで誰かが泣いている声がして、自分も悲しみの渦中にいて。鈍い痛みと、終わらない恐怖。
私は誰かに痛めつけられていたのだろうか。
だとしたら、誰に?どこで?
……
ああ、完全に目が冴えてしまった。
ホットミルクでも飲んでこようかな…。
二人を起こしてしまわないようにそっとドアを開けてキッチンへ向かった。
誰もいない静かなキッチンで小さなランプを灯す。
ミルクを取り出そうとして冷蔵庫を開けてみると、奥の方に“KOKANEE BEER”の文字が見えた。
澄んだ青い空に氷山のデザインが施されているビール。
スポーツドリンクだと見た目で勘違いして飲んでしまったことがある。
ビールを飲んだことが無かった私は初めての苦いフレーバーに驚きつつも、こういうジュースなのだろうと一口だけ飲んでしまった。
すぐに気づいたマスターに止められたけど、その後とてつもない眠気に襲われてしまって、ニョンが部屋まで運んでくれたっけ。
マスターがすごく心配してくれていたのを覚えている。
飲んだら、眠れるかな。
数缶あるうちの一つに手を伸ばして、プシュッと飲み口を開けた。
口いっぱいに広がる苦味に初めはやっぱり顔をしかめるけど、ちびちびと飲んでいるうちに慣れてきた。
だんだんと頭がぼーっとしてくる。
その間、考え事をしていたかもしれないし、していないかもしれない。
マスターが明日はショッピングモールに行くって言ってたっけ。
ビールを飲んだことがマスターにバレたら、怒られちゃうかな。
喉の奥から不快感が込み上げてきた。
まずい、と思いながらも体が動かない。
突然、ランプの光を遮るようにテーブルに影が落ちた。
誰か来たのかな。マスターだったらどうしよう。
「オイ、何してんだよ」
「あ……え……ニェン……」
こんな時間に何故かキッチンに足を運んだ男は、テーブルに置かれたビールの缶を片手で持ち上げて揺らした。
「まだ半分以上残ってんのにベロベロじゃねぇか。お子ちゃまだなァ?」
クククと喉を鳴らしている。
バカにされた。自然と眉間にシワが寄る。
ニェンはいつもそうだ。勝手にヒエラルキー上位に自分を置いて、私のことをいじめてくる。
マスターはみんなを平等に愛してくれているはずなのに。
そのとき、気持ち悪さが絶頂に達して、思わず口に手を当てた。
「うっ……」
ニェンも体をビクッとさせて目を見開いた。
「……吐くならバスルームでやれ」
動こうにも動けない様子を察して、ニェンはため息をつきながら私の腕を引いて自分の肩に回した。
「吐いたらブッ殺すからな」
バスルームに着くと、ニェンは乱暴に私の腕を肩から外して便器の前に押しやる。
下を向いたらまた吐き気が込み上げてきた。
おえおえと言っている私の後ろで、ニェンは腕を組んで壁に寄りかかっていた。
上手く吐けない。
なのに胃液は喉まで上がってきている。
こんなに気持ちが悪いのに。どうして。
下を向いてえずき続けていると顔に圧がかかってきて、自然と涙目になってきた。
思わず助けを求めるようにニェンの方を見上げてしまう。
「ニェン…」
「あー、クソが……」
ニェンは私の横に屈んで、喉の奥に人差し指と中指を突っ込んできた。
驚きと吐き気を促すその行為に、私は喉につかえていた物を吐き出した。
「うぇっ……えっ……」
口から出る物は形も色も、臭いも味も気持ち悪くて。
さっきまでは、マスターが作ってくれた美味しい夕食だったのに。
「一人じゃ吐くこともできねェのかよ。大体、お前があのままくたばったみてぇに寝てたら、マスターが明日の朝にキッチンの惨状を見てどう思うか考えろ。迷惑かけんじゃねえ」
ブツブツと横から文句を言われている気がするけど。
私は吐く行為に集中していて、まだお酒が残っているせいで、ニェンの言葉が頭に入ってこない。
しばらくして、物が出切った感覚がした。
ニェンが指をさらに奥の方まで入れてくるけれど、もう胃液しか出てこない。
「はぁ、はぁ」
その様子を見て男は指を抜く。
女の吐瀉物で濡れた自分の指を見て「最悪だ」と思いながら、湿っぽい呼吸を繰り返す女の方に目をやった。
口の周りにはだらしなく唾液が垂れて、唇が濡れて艶がかっている。
生理的な涙がほんのりと朱色がかった頬を伝っていた。
男はゾクゾクと内側から湧き出る形容し難い感覚に襲われて、乱暴に女の両頬に手を寄せる。
さっきまで自分の指を咥えてあられもない姿を晒していた女が、蕩けた目で自分を見上げている姿に理性が飛び、唇に噛み付いた。
「んっ……はぁ、ぁ……ふ…」
女は一瞬驚いたように身体を強張らせたが、強引に続けていると力が抜けてきたのが手を通して伝わってきた。
二人以外には誰も存在しない時間と空気。
意識すればするほど体温が高まる。
コイツはいつの日からか諦めたような表情をするようになった。
ある日のマスターとの買い物帰り。
森を歩いていると一人の女が倒れていた。
服も靴もボロボロで、身体中がアザだらけだった。
マスターの厚意で家に迎え入れることになったが、俺はペットが増えることに対して積極的じゃない。
自分に向けられるマスターからの寵愛が減ってしまうような気がしたからだ。
しかも脱走しようとしてマスターの手を煩わせていた。
悪態をついてやると口答えまでしてくる。
お前は俺よりも下ってことがわからねェのか。
手を上げようとすると、必要以上に震えて身体を丸めて敵を見るような視線を向けてくる。
その姿に少しだけ昂りを感じながらも、それ以上は出来なかった。
そんな女が今、自分の手の中でされるがままに舌を絡ませて、必死に酸素を求めて唇を動かしている。
漏れる吐息と喘ぎに加虐心を煽られて、一層深く、しつこいくらいのキスを続けた。
口の中に広がる酸味と苦味。
奥歯から舌の裏まで丁寧に舐め取っていく。
自分が如何に気持ちの悪い行為をしているかを自覚して、そうさせている女に腹が立つ。
上顎を舌で撫でてやると、女はくすぐったそうに体をよじった。
「ん……んぅ……」
女の鼻から漏れる声に脳内が侵されて、得も言われぬ感情に包まれる。
これ以上続けていては自分がおかしくなりそうで、男は顔を離した。
「はぁ、は、ぁ、はぁ、」
「…まっず」
女はやっと酸素を取り込めた安心感で、男に身を寄せて眠ってしまった。
男は舌打ちをして、その辺にあった自分が愛用しているタオルで女の口周りを拭う。
そのまま女の体を姫抱きにしてその場を去った。
それから数時間ほど。
いつもより早く行動を開始したルーサーがリビングへと入ってきた。
「おや……」
すやすやと体を寄せ合って眠る愛猫たち。
ルーサーはそばにあるブランケットを広げて、愛する彼らを起こしてしまわないようにそっと重ねた。
「ふふ♡ペット同士の仲が良いのは微笑ましいね。でも…」
片方の猫の目から涙が流れているのを指で掬って、少し考えるような仕草をする。
そして、彼女のこめかみに人差し指をあてがった。
「愛する家族がこれ以上苦しまないように、マスターとしての務めを果たさなければならないね」
その日以降、彼女は暗い記憶をフラッシュバックすることは無くなった。
人の温もりを感じる。誰かに抱きしめられている感覚。
「……マスター……?」
私は目覚めて一番に視界に広がった光景にギョッとした。
な、なんで、ニェンがここに……
思いがけない状況に心臓の動くスピードが自然と速まる。
このままだと自分の心音でニェンを起こしてしまいそうだ。
抜け出そうにもニェンの腕が背中まで回っていて、上手く動けない。
どうしようかと考えながら、目の前の男の顔を眺める。
綺麗に生え揃ったまつげがときどきピクッと動いたり、サラサラとした前髪が揺れて顔に影を落としたり。
普段は絶対に見せてくれない姿に見入ってしまう。
なんとなく、少しヒゲが伸びた顎の下に手を伸ばして撫でてみると、ほんの少しだけ表情が緩んで心地良さそうにする。
眠っていてもゴロゴロするんだ…。
同族ながらに関心する。
そのまま撫でているとまぶたがピクピクと動いてぱちっと開かれ、
「お前……何してんだよ。」と吐いた。
いや、それはこちらのセリフでもあるんですが。
ニェンの圧には勝てずに、弁解しなければと思考をぐるぐるさせていると、
「ボヤッとしてんじゃねえ、さっさと退けろ」
そう言って乱暴に体を起こすので、ソファーから転げ落ちそうになって私も立ち上がった。
「………。」
ニェンは黙ってリビングを出て行ってしまった。
一体何だったんだ。
時計を見ると、もうすぐマスターたちが起きてくる時間。
なんだか体が重い。
というか胃が気持ち悪い。バスルームで顔でも洗おう。
しかし……私はなぜニェンの腕の中で寝ていたのか……。
昨晩の記憶が全く無い。
いつも通りの彼である限り絶対に無いようなシチュエーションだったために、私は何か大変なことをやらかしてしまったのだろうかと不安に苛まれながら廊下を進む。
バスルームにはいつも通りの景色と、誰かが使ったであろう薄いピンク色のタオルが乱暴にバスタブにかけられている。
それを見た私は朧げに思い出される唇の感触にハッとして、当分の間はニェンと顔を合わせるたびに頭を抱えることとなった。
※直接的な性描写は無いのですが、なんかスケベな状況なので苦手な方と15歳以下の方は諸々ご注意の上、自己責任でお願いします。
6/10 若干加筆修正しました。
ニェンって意外と面倒見良かったりするのでは…と思っています。
ブックマーク、いいねなどありがとうございます。大変励みになります(TT)
ご連絡はTwitter(@gozeneet)のDMまでお願いします。
マロ↓に感想やリクエストなどいただけると嬉しいです。
https://marshmallow-qa.com/7qbls90bn1e8ayy?t=SWK1NR&utm_medium=url_text&utm_source=promotion