621がV.Ⅸになるifルートの話   作:ikos

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時系列的には前話の続き。
今回は短いエピソード集の形式です。


間話

フロイトとレイヴン

 

 

「そんなわけで、貴方の仕事を肩代わりすることになったわ」

「そうか。頑張れよ」

「……ところで、何してるの?」

「この腕だろ、折角だから左手だけでどの程度使えるかシミュの操作系をいじってる」

「……えええ……できるもの……?」

「わりといけるが、フットペダルが欲しいな。さすがに指が足りない」

「車みたいなものね。確かに面白いかも」

「だろう? 企画をスネイルに投げてみないか」

「不測の事態に役立ちそうだものね。良いと思う」

「ああ。押し切ればあとは勝手にやってくれるだろう」

 

 

 

なお、費用対効果が悪すぎて普通に却下された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

臨時隊長1日目

 

 

「短い間だけどよろしく。……その声、貴方がこのあいだ止めに入った人?」

「ヒッ!? は、はい! 先日は失礼しました!!」

「助かったわ。あのまま撃ってたらおおごとだったもの」

「は、ははは……そうですね……」(躊躇いなくとどめ刺そうとしてなかったか!?)

「若いのをいじめるのはその辺りにしてやってください、V.Ⅸ」

「いじめているつもりはないけど……ええと、貴方が副隊長さん? スネイル隊長から聞いていると思うけど、しばらく私がV.Ⅰの代理を務めます。

ただ、集団戦の経験がほとんどないの。悪いけど、プランを立ててくれる? その通りに動くわ」

「はい。でしたら右翼から迂回して、目標に――」

 

 

 

 

 

 

 

6日目

 

 

「なあ、なんか……めちゃくちゃやりやすくないか……?」

 

「最大戦力がこっちの予定通りに動いてくれる!」

「突出しない!」

「遅れてこない!」

「言ったらちゃんと退いてくれる!」

「途中でどっか行かない!」

「最高か……!?」

 

 あまりに飼い慣らされた発言を放ちながら、第1部隊のどよめきが収まらない。

 勿論フロイトでもなんだかんだ最終的には帳尻を合わせてくるのだが、その最後までが死ぬほど大変なのだ。

 

「なのになんで……隊長と絡むと、ああなんだろうな、あの人……」

「本当にな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

メッセージの記録 / フロイトとレイヴン

 

 

【なあ ひまだ】

 

 【そう】

 【たいへんね?】

 

【スネイルに仕事を押し付けられた】

 

 【それたぶん貴方の仕事よね】

 【そしてそれは暇とは言わない】

 

【そういえばジャガーノートは期待はずれだった】

【どうしたらおもしろくなるか】

【地雷はわるくない】

【でかくしてみるか】

【ミサイルはびみょうだ】

【とばすか プロペラで】

 

 【大きくするって地雷を?】

 【飛ばすのは本体よね】

 【だいたいあれ、プロペラで飛ぶ?】

 【重そう】

 

【じゃあブースターで浮かす】

 

 【浮いたあとは?】

 

【うえから落ちてくる】

 

 【そんなゲームあった気がする】

 【何回で壊れるの、それ】

 

【回転させてもいいな】

 

 【今度は浮かないかんじ?】

 

【円形にして360°地雷とミサイルを】

 

 【もう別物ね】

 

 

 

「フロイト!! いつまで駄犬と戯れているつもりです、いい加減仕事に戻りなさい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10日目

 

 

《レッドガンの襲撃です! あれは……G5 イグアス「ヘッドブリンガー」! 来ます!》

 

《生きていやがったか、狂犬野郎! アーキバスに尻尾振って飼ってもらったらしいなァ!? 今日こそブチ殺す!!》

 

《うわガラ悪っ》

《初手ガチギレじゃねえか》

《臨時隊長、何やったんです……?》

 

《……初対面の共同作戦で寝返って背中から撃ったというか》

 

《そりゃキレるなァ!!》

《俺でも根に持つっスよ!!》

 

《だって倍額積まれたし……》

 

《そういやこのひと独立傭兵だった!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メーテルリンクとレイヴン

 

 

 そんな具合でピクニックを重ね、合間合間で単独作戦に駆り出されて、3週間が過ぎた。

 アーキバスの食堂で、レイヴンはぐったりと机に突っ伏す。

 

「……待って。おかしい。フロイトってこんな働いてた……?」

「まさか。今気付いたの?」

 

 メーテルリンクが意外そうに、手製の菓子を勧めてくる。

 最初に共犯者への誘いをかけたのはレイヴンだったが、メーテルリンクにはたぐいまれなる菓子作りの才能があったらしい。あっという間に上達して、いまやショートブレッドもどきではなくいっぱしの「お菓子」になっている。溶かしたヌガーを挟むなんて細工まで施されているほどだ。ほろほろととける歯ごたえが素晴らしい。

 甘味に心を慰められながらも、スネイルへのうらみつらみは消えない。何しろこの3週間というもの、部隊作戦が終わったと同時に次の指示が入り、それを終わらせて拠点へ戻れば次のブリーフィング、と、まともに休めないほど仕事を詰め込まれていたのだから。さすがに使い倒しすぎだ。

 

「くっ……人が下手に出ていれば……! 丁寧な対応をやりすぎた……!」

 

 なんとなく上司であるような気がしていたが、こちらは自由気儘が信条の独立傭兵様だ。これ以上嘗められてはたまらない。

 とりあえず、もう次からは絶対に丁寧語をやめよう、と心に誓った。

 

「まあまあ、元はと言えば第1隊長を負傷させたせいなんだから」

「自業自得ね? そのとおり!」

「これに懲りたらもうちょっと安全にやってほしいとは思う……」

「安全ってどうやって」

「……シミュレーションにするとか、ペイント弾にするとか」

「フロイトが納得すると思う?」

「貴方も乗り気じゃないのはわかった。……まったく、つける薬もないね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

最終日

 

 

 ちなみにフロイト復帰後の一戦でレイヴンが負傷した際、比較対象がひどすぎてなぜだか「たぶん心根は優しい女性」扱いされていたようで、第1部隊の隊員たちからはブーイングが起きた。

 

「……男も女も関係あるか?」

「ないと思うわ。お互いACに乗ってるんだし」

「だよな」

 

 

 ただし負傷期間がお互いに結構退屈だと分かったので、自然とコアへの攻撃を(できるだけ)避けるようになったのだった。

 

 

 実際に体感する前に気付いてくれ、とは、スネイルの心の叫びだったかも知れない。

 

 

 







怪我させてしまった/した後は「しくじったなあ」と思うのに、全然懲りるということを知らない二人です。

…いやなんでだよ、懲りようよ、強くなる目的もないのになんで命かけて訓練してるんだ…いやそれ自体が目的だからってわかってるけど…!と書いてる人間がなってるレベル





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