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ブロードウェイのメンバーを前に、「プペルを歌ってくれ」と言われた理由

  

先日、ニューヨークでミュージカル『えんとつ町のプペル』のリーディング公演があって、公演終わりで、キャスト&スタッフ、そして、リーディング公演に来てくださった関係者交えてのレセプションパーティーがあったんです。

 

そのレセプションパーティーの終盤で、演出のウィルがギターを持ち出してきて、「『えんとつ町のプペル』を歌ってくれ」と言ってきたんです。

 

普通、ブロードウェイのキャストがズラリと並んでいて、ブロードウェイの錚々たるスタッフが顔を並べている中、兵庫県川西市出身のド素人が歌うなんて嫌じゃないですか?

 

でも、そこは持ち前の酔っ払いと、持ち前の「世界のNISHINO」が上手く機能してくれて、やっぱ、ノリノリで歌っちゃうんですね。

 

いやぁ、このあたりの図太さは凄いですね。

 

そもそも、なぜウィルが「プペルを歌ってくれ」と、僕にギターを渡してきたかというと、『えんとつ町のプペル』という物語って、まず曲から作ってるんです。

 

あの「ハロハロハロ、ハロウィン、プペプップープペル」というフザけた曲が先にあったんです。

 

G.Bm.C.Dかな?

 

あのメロディーと、仮歌詞が先にできたんです。

 

ていうか、たぶん僕、曲がないと作れないんです。

 

「ご自由に何でもお書きください」と言われたら、どこから手をつけたらいいか分からないのですが、「この曲に合う物語を書いてください」と言われたら、ある程度、制限ができるじゃないですか?

 

「制限」って手がかりでもあるので、制限ある方が(「この中でなんとかする」という方が)作りやすいのは、たぶん、モノづくりをされている方は皆そうだと思います。

 

大切なのは、「どれだけ良い制限を自分にあたえるか?」で、僕の場合は音楽が一番肌に合うんです。

 

それをウィルが知っていたから、「今回、皆にやってもらった作品は、この曲から生まれたんだよ」と紹介してくれて、それで、最終的にはキャスト&スタッフ皆で歌ったんです

  
 

『チックタック』の時はUruさんのカバー曲をずーっと聴いていた 

 
さて。

 

「曲から作る」といっても、曲を作るのが、そもそも大変じゃないですか?

 

ギターなんて、劇場の楽屋で空き時間に覚えたぐらいで、音楽の知識も手数も持ち合わせていないので、良い曲をポンポン作れるわけがないんですね。

 

じゃあ、物語を作る時に曲が作れなかったらどうするか?

 

その時は、既存の曲を使うんです。

 

「これだな」という曲をアトリエで延々と流すんです。

 

で、『チックタック ~約束の時計台~』という、身体が植物になっていく感染症を患った女の子の物語を描く時にも、ピッタリの曲を探していて、その時に見つけたのが、Uruさんがカバーされていた鬼塚ちひろさんの『流星群』という曲です。

 

まず、鬼塚ちひろサンがそもそも天才すぎるのですが、そこに輪をかけて、Uruさんの歌が本当に最高で、あれは、8年ぐらい前だったと思うんですけども、ずーっと聴いていたんです。

 

そこから、「Uruさんって、他にどんな曲をカバーされてるんだろう?」と思って、モサモサ探していたら、他のカバー曲も全部良くて、僕の中でUruさんって「カバー曲の人」というイメージだったんです。

  
  

オリジナル曲もMCも小説も、メチャクチャよかった 

 
あれから時間は経って、Uruさんが映画とかドラマとかの主題歌を歌われていたのは知っていたのですが、自分に手一杯だったのもあって、なかなか追えていなかったんです。

 

そんな中、マネージャーさんが、仕事終わりに突然、「西野さん、明日、Uruさんのライブをあるんですけど、行きます?」と言ってきたんです。

 

マネージャーさんは、当然、今の僕のスケジュールを知ってるわけじゃないですか?

 

映画の制作も始まっていることも知っているし、ミュージカルの制作があることも知っている。

 

その上で誘ってこられたわけだから、「何かあるんだろうな」と思って、「行きます!」と答えたんです。

 

で、行くと決めたからには「絶対に楽しんでやろう!」と思って、ライブ直前まで、Uruさんの曲を聴き倒したんです。

 

そこで知ったんですけど、これは本当に本当に失礼な話で、本当に申し訳ない話なのですが、Uruさんって、御自身で曲を作られてるんですね。

 

8年前の「素敵なカバー曲を歌われる人」というイメージが僕の中であったので、御自身が作られていたと知って、ひっくり返ったのですが、また、(こんなことは僕よりも皆さんの方がお詳しいと思うのですが)Uruさんが作られる曲が全部いいんです。

 

あと、ライブのMCでも、誰も興味がない「チョコモナカジャンボ」のイントネーションについてのこだわりを延々と話されていて、腹抱えて笑っちゃったし、今年、Uruさんが出された小説の一節も紹介されていて、これがまたメチャクチャ良かったので、帰り道に買って帰って、その晩に全部読んだのですが、小説もまた、メチャクチャいいんです。

 

なんか、「メインディッシュだと思って食べていたものが、まだまだ前菜だった」という経験をしました。

 

「魔法少女まどか⭐︎マギカ」のような。「え、ここからが本番だったの?」という(笑)。
 

 
Uruさんの才能、どうやって世に出てきたか?

 
で、まさか、ここからが本題なんですけども…

 

 

そのUruさんが、どうやって世に出てきたか?

 

僕もそうだし、結構な業界関係者が、まずは「カバー曲」でUruさんを知ったと思います。

 

僕、製作総指揮として映画を作っているので、アーティストさんが選ばれる現場に立ち会っているのですけども、映画の曲が選ばれるのって、大体3パターンなんです。


 

一つ目は「大物アーティストに主題歌の製作をお願いする」というパターン。

 

大物アーティストの名前を借りる…という下心があるパターンですね。

 

僕がプペルで真っ先に断ったやつです(笑)


 

二つ目は「時代を捉えている勢いあるアーティストに楽曲制作をお願いする」というパターン。

 

ノリにのっているので、ドンズバの曲を上げてきてくださる可能性が高い。


 

今の2つは楽曲制作をお願いするパターンです。

 

ということはつまり、「イメージに合わない曲が上がってくる」というリスクもはらんでいる。

 

これが大物アーティストになると、「ん?なんか違うかも」となっても、なかなか「すみません。ゼロからやり直しで」と言えなかったりします。


 

そんな時に、3つ目のパターンが採用されます。

 

3つ目は「コッチで納得のいく楽曲作って、誰かに歌ってもらう」というパターン。

 

というわけで歌ってくれる人を探すわけですが、どうやって探すかというと、ベタですけどもYouTubeなんですね。

 

YouTubeの「歌ってみた」で話題になっている人とかを、業界関係者はメチャクチャ観てるんです。

 

僕のところにも、普通に、「この子の声、良くないですか?」みたいなYouTubeがスタッフから頻繁に送られてきます。

 

まだ再生回数が10万回とか5万回とかでも。

 

でも、やっぱ、それって、カバー曲を歌っておいてくれないと、そのラインまでもいかないんですね。

 

いきなりオリジナル曲を歌って、「スゲー」となるのは、本当に稀で、まずはカバー曲を歌っていただいて、ある程度の数字を稼いでもらわないと見つけられないんです。


 

まずは「あやかる」から始めるという、遠回りのようで手堅い方法

 
Uruさんにしても、あれだけクリエイティブの才能をお持ちの方が、まずは「カバー」から始まっているかもしれないわけで、逆に言うと「カバー」から始めていないと、才能が見つかるまでにもっと時間がかかっていたかもしれない。

 

もちろん、最終的には御自身の力でもぎとったのは間違いないんです。

 

カバーをキッカケに見つけてくれた関係者に、「私、オリジナルも作るんです」とゴリッといかれたのでしょう。

 

遠回りのようですが、才能を世に出す方法としては、非常に手堅い。

 

今、音楽に限らず、いろんなものが作りやすくなったから、皆、すぐに「ゼロ→1」から始めちゃうんだけど、ぶっちゃけ「他人の世界観なんて興味ねえよ」というのが全地球人の総意なので、まずは「あやかる」というところから始めて、才能で撃ち抜ける射程圏内まで入る…というのが大事だなぁと、今回あらためて思わされました。


 

もしも、あの才能が見つかってなかったら、エンタメ界の損失でしかないので、「カバー曲をやろう」と思ってくれた数年前のUruさんには感謝です。

 

Uruさんの小説ホントに面白かったので、オススメです。

 

セレナーデ』というタイトルです。

 

 
 
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