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【高校野球】勝負の夏(下)熊谷商、古豪復活へ


リーダー陣を中心に、こまめに練習メニューを確認する熊谷商の選手たち=6月14日、熊谷商高校
 古豪復活へ―。熊谷商は春季県大会で39年ぶりの8強入りを果たし、夏への期待を膨らませた。1985年春を最後に聖地から遠ざかっているが、過去5度、夏の甲子園の土を踏み「夏の熊商」と称された。旋風を起こすべく、勢いを加速させている。

 「継続は力なり」。野球の心構えを記した横断幕が掲げられたグラウンドには、空が真っ暗になるまで貪欲にバットを振り、全力で駆けて汗を流す選手たちの姿があった。同校OBの新井茂監督(45)は「本当の意味で夏の熊商になるため5、6月をどう過ごすか。この頑張りが夏につながる」と力を込める。

 春季北部地区予選では2試合ともに、異なる2投手の継投による完全試合で五回コールド勝ち。県大会では、最速145キロの長身右腕中村謙吾を主戦に、競って競って、終盤に畳みかける「執念の野球」を体現。聖望学園と叡明から2試合連続でサヨナラ逆転勝利を収め、準々決勝では秋春王者の花咲徳栄に1―4と詰め寄った。

 躍進の起点となったのは、昨年9月、秋季北部地区予選で松山に2―3で逆転で惜敗した一戦。協力体制を整えるため打撃、守備などを9部門に細分化して各々にリーダーを据えた。あいさつやランニング時の隊列などの基礎に重点を置いたことで、チームが変革。

 リーダー陣が率先して声をかけ、試合後には監督よりも先に選手らで課題を指摘し合うほどに成長。結束が強まり、エースの力投を野手が援護する最高の勝ち方をやってのけた。

 春からは、監督として同校の黄金期を築いた故・斉藤秀雄氏が掲げた選手心得のうち一つを抜粋し練習前に全員で読み上げている。中村謙吾主将は「伝統校だからこそ期待されてスタンドから厳しい言葉も飛ぶ。おごりを持たず一からやり直してきた」と歴史を背負う覚悟はできている。

 「甲子園。目標はそこだけ。自分が最少失点に抑えれば、仲間が打ってくれる」と中村謙。43年ぶりの夏の聖地に足を踏み入れるため、古豪の意地をかけた熱い夏が始まる。
2024/07/05 11:00:00
記事提供:埼玉新聞

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