「野良犬共」
「81-009 SRPH」。
満を持して現れた、正真正銘最後の敵。
それは翼のようなフライトユニットを広げ、ゆっくりと顔を上げる。
「……いくぜ」
「!?」
消えたと見紛うほどの高速移動。
「81-009 SRPH」は、翠と緋の残光だけを残して唐突に消滅した。
少なくとも、見かけ上はそうとしか認識できなかった。
「……ゴード、うしろ!」
「まずはテメェだ!」
刹那、背後でコーラルの緋い光が閃く。
「81-009 SRPH」の右腕、その巨大で複雑なコーラルオシレータからはまるで爪のように枝分かれしたコーラル刃が発せられていた。
「……ッ!」
声で反応が間に合い、紙一重でその斬撃を避けた。だが。
「セラ!」
「――――!!」
ギリギリで空を切ったブレード。その刀身から剥離するように、緋に染まった光波が放たれる。
それは「ジュピター」の装甲を掠め、地面に文字通り爪痕を残した。
抉れ、焼け焦げた地面。それは、放たれた光波が致命的な威力を有していたことを物語っている。
だが、それをゆっくり眺めている時間は無い。
「まだまだァ!」
続いて、左腕の武装……
その銃口から、凄まじい連射速度でレーザーが放たれる。
レーザー兵器でありながら、マシンガン以上の連射レート。
しかし、代わりに高機動目標への照準追従性は控えめだ。
雨のように降り注ぐ光弾、だが数発を除いてそれらは空を切った。
「……命中しませんか……ならば! イグアス、モードチェンジです!」
「……ああ」
放たれたレーザーを凌ぎ切るや否や、それを発射していたユニットが変形する。
構えを伴って放たれたのは、2種類のエネルギー弾だ。
まるでシャボン玉のようにも見える淡い光の球体と、紫色に輝き炸裂する光弾。
別々の性質を持ったエネルギーが、同じユニットから大量にばら撒かれた。
「ふふ、これぞ我々の新たなる最高傑作……超大型4連装複合可変マルチエネルギーインテグレーションオーバードウェポンユニットです! 素晴らしいでしょう?」
あえての低精度で広範囲に撒き散らされるそれらの面制圧能力は、異常と言っていい。逃げ場と言える逃げ場はなく、装甲が焼かれる。
「レーザーとプラズマ、パルス、そして光波……『44-142 KRSV』と比べて、銃身も扱えるエネルギーの種類も何と2倍です! よって、これを『88-284 KRSW』と名付けましょう!」
「……御託はいい」
「あ、ちなみにこれはKRSVの
「御託はいいっつってんだろ!」
「――――――!!」
間断なく放たれるエネルギーの弾幕。さらに途中から、右腕のマルチコーラルオシレータからも炸裂するコーラル弾が放たれ始める。
反撃しようと近づけば、あっという間に消し炭になる勢いだ。距離を取って弾幕を薄くするしかない……だが、その攻撃は長く続かなかった。
「……イグアス、後ろです! 対処を!」
「…………!」
「81-009 SRPH」の背後から、「ボイジャー1」が光波ブレードを振るったからだ。
「……野良犬!」
だが、その斬撃が「81-009 SRPH」に触れる直前、フライトユニットが翠と緋に閃く。
次の瞬間には、またもその敵機の姿は掻き消えていた。
「また、きえた……」
「次は……上か!」
頭上から、翠の光が差す。
見れば、先程と同じ爪状、ただし色だけが異なるブレードを左腕から展開した「81-009 SRPH」がそこには居た。
「今度こそ、食らいやがれ!」
地面へと叩きつけるように振るわれる光の爪。だが、すでにそこに「ジュピター」はいない。
「チイッ!」
間髪入れずに、今度は右のブレードが振るわれる。
「――――――!!」
「オラァ!」
左、右。翠、緋。エネルギー、コーラル。
2つの光刃が、交互に閃く。
振るわれる斬撃、その全てから追撃するように光波が放たれており、またフライトユニットによる超高速移動も織り混ぜられている。
けれど。
「チッ……ちょこまかと……!」
細かな差異はあるが、骨子となる
躱せない攻撃では、ない。
斬撃の嵐を掻い潜り、特に大振りの攻撃に合わせて懐へ。
そのまま、アサルトアーマーを――
「――――!!」
「…………ッ!」
だが、それはかすりもしなかった。
コアが展開してから、実際にパルス爆発を生じるまでの僅かなラグ。
その間に、またしても「81-009 SRPH」の姿は跡形もなく消えていた。
「……イグアス、ここはあれを使ってみましょう」
「……ああ」
「――――」
移動先は、またも上だ。だが、その高度は先よりも高い。
器用にブースタを吹かして空中で静止した「81-009 SRPH」は、左腕のユニットを構える。
「――――エネルギー、統合開始」
「各エネルギー発生装置、動作正常。統合作業、50%完了……出力の引き上げを開始」
ACの推力では直ぐには辿り着けない高度。それだけの距離があっても、その銃身に尋常ではないエネルギーが集まっていることが見て取れた。
レーザー、プラズマ、パルス、光波。複数のエネルギーが、合体した銃身内で統合され、凝縮され、増幅されていく。
「……させない!」
もちろん、それを黙って見ている者などいない。
いち早く反応した「ボイジャー1」は、高度を上げながら肩の光波キャノンを放つ。
「――――――!」
だが、チャージを続ける左腕とは独立した存在であるかのように、「81-009 SRPH」の右腕が動いた。
放たれたのは、追尾誘導するコーラル弾。意思を持ったように動くそれが、「ボイジャー1」の放った光波と衝突、相殺する。
「エネルギー統合作業、全工程完了。総出力、400%……最終圧縮工程に移行」
その間にも、致命的なカウントダウンは続いていた。オールマインドの淡々とした、だがどこか楽しそうな声が、猶予がほとんどないことを知らせる。
俺もユーリも発射を食い止めるべく上昇していたが、時間が足りなかった。おそらく、チャージ完了までに「81-009 SRPH」へ肉薄することは叶わないだろう。
「……回避に専念するぞ」
「……うん」
エネルギーを節約するとともに、全神経を回避に集中。避けられなければ、命は無い。
「最終圧縮工程、完了。発射シーケンス、オールグリーン……これこそ我々の最高傑作、もう誰にも笑わせはしません! イグアス、発射を!!」
「――――――!」
「ああ……食らえ」
銃口が、輝いた。
音は無かった。おそらくそれは鼓膜が吹き飛ぶほどの轟音で、ACのシステムが自動的にカットしたのだろう。
色は、判別できなかった。複雑に混じり合い圧縮されたエネルギーは、純粋な光とも言える様相を呈していたからだ。
結果から言おう。
それは、外れた。
射手である
もし、狙撃を本領とする射手が
それでも。
……もう一度言おう。それは、外れた。だが正確に言えば、クリーンヒットとはとても言えない結果だった、と言うのが正しい。
「……ユーリ」
「……まだ、だいじょうぶ……」
「ボイジャー1」を狙ったそれは、ほんの僅か、本当にごくごく僅かにだけ、標的を掠めてあらぬ方向に向かう。
そして地面に着弾し、凄まじいエネルギーの奔流を発生させた。
その暴力的な光は技研都市のビルをなぎ倒し、瓦礫を消し飛ばし、着弾地点に巨大なクレーターを作る。
空中にいた俺達にすらその余波は届き、装甲を焼け付かせた。
そして、標的を掠めた、僅かな光。
それは、「ボイジャー1」の右腕を、肩からごっそり消し飛ばしていた。
今構想のあるもの改
- AMちゃんルートIF
- 465、仕事の時間だ
- ループ621
- レッドガンIF
- ヴェスパーIF
- 葦名一心VS岩本虎眼