転生したらモンキー・ゴードでした   作:NEST中毒者

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バスキュラープラント襲撃⑭

 

「野良犬共」

 

 「81-009 SRPH」。

 満を持して現れた、正真正銘最後の敵。

 

 それは翼のようなフライトユニットを広げ、ゆっくりと顔を上げる。

 

「……いくぜ」

 

 ()()姿()()()()()()()

 

「!?」

 

 消えたと見紛うほどの高速移動。

 ()()()()()()()()()()

 

 「81-009 SRPH」は、翠と緋の残光だけを残して唐突に消滅した。

 少なくとも、見かけ上はそうとしか認識できなかった。

 

「……ゴード、うしろ!」

 

「まずはテメェだ!」

 

 刹那、背後でコーラルの緋い光が閃く。

 「81-009 SRPH」の右腕、その巨大で複雑なコーラルオシレータからはまるで爪のように枝分かれしたコーラル刃が発せられていた。

 

「……ッ!」

 

 声で反応が間に合い、紙一重でその斬撃を避けた。だが。

 

「セラ!」

 

「――――!!」

 

 ギリギリで空を切ったブレード。その刀身から剥離するように、緋に染まった光波が放たれる。

 それは「ジュピター」の装甲を掠め、地面に文字通り爪痕を残した。

 

 抉れ、焼け焦げた地面。それは、放たれた光波が致命的な威力を有していたことを物語っている。

 

 だが、それをゆっくり眺めている時間は無い。

 

「まだまだァ!」

 

 続いて、左腕の武装……4()()()()()()()()()()()()()()()()()()を構える「81-009 SRPH」。

 その銃口から、凄まじい連射速度でレーザーが放たれる。

 

 レーザー兵器でありながら、マシンガン以上の連射レート。

 しかし、代わりに高機動目標への照準追従性は控えめだ。

 

 雨のように降り注ぐ光弾、だが数発を除いてそれらは空を切った。

 

「……命中しませんか……ならば! イグアス、モードチェンジです!」

 

「……ああ」

 

 放たれたレーザーを凌ぎ切るや否や、それを発射していたユニットが変形する。

 構えを伴って放たれたのは、2種類のエネルギー弾だ。

 

 まるでシャボン玉のようにも見える淡い光の球体と、紫色に輝き炸裂する光弾。

 別々の性質を持ったエネルギーが、同じユニットから大量にばら撒かれた。

 

「ふふ、これぞ我々の新たなる最高傑作……超大型4連装複合可変マルチエネルギーインテグレーションオーバードウェポンユニットです! 素晴らしいでしょう?」

 

 あえての低精度で広範囲に撒き散らされるそれらの面制圧能力は、異常と言っていい。逃げ場と言える逃げ場はなく、装甲が焼かれる。

 

「レーザーとプラズマ、パルス、そして光波……『44-142 KRSV』と比べて、銃身も扱えるエネルギーの種類も何と2倍です! よって、これを『88-284 KRSW』と名付けましょう!」

 

「……御託はいい」

 

「あ、ちなみにこれはKRSVの2倍(ダブル)と言うのと、Vを2つ並べると……」

 

「御託はいいっつってんだろ!」

 

「――――――!!」

 

 間断なく放たれるエネルギーの弾幕。さらに途中から、右腕のマルチコーラルオシレータからも炸裂するコーラル弾が放たれ始める。

 反撃しようと近づけば、あっという間に消し炭になる勢いだ。距離を取って弾幕を薄くするしかない……だが、その攻撃は長く続かなかった。

 

「……イグアス、後ろです! 対処を!」

 

「…………!」

 

 「81-009 SRPH」の背後から、「ボイジャー1」が光波ブレードを振るったからだ。

 

「……野良犬!」

 

 だが、その斬撃が「81-009 SRPH」に触れる直前、フライトユニットが翠と緋に閃く。

 次の瞬間には、またもその敵機の姿は掻き消えていた。

 

「また、きえた……」

 

「次は……上か!」

 

 頭上から、翠の光が差す。

 見れば、先程と同じ爪状、ただし色だけが異なるブレードを左腕から展開した「81-009 SRPH」がそこには居た。

 

「今度こそ、食らいやがれ!」

 

 地面へと叩きつけるように振るわれる光の爪。だが、すでにそこに「ジュピター」はいない。

 

「チイッ!」

 

 間髪入れずに、今度は右のブレードが振るわれる。

 

「――――――!!」

 

「オラァ!」

 

 左、右。翠、緋。エネルギー、コーラル。

 

 2つの光刃が、交互に閃く。

 

 振るわれる斬撃、その全てから追撃するように光波が放たれており、またフライトユニットによる超高速移動も織り混ぜられている。

 

 けれど。

 

「チッ……ちょこまかと……!」

 

 細かな差異はあるが、骨子となる体捌き(モーション)()()()()()()()()()

 躱せない攻撃では、ない。

 

 斬撃の嵐を掻い潜り、特に大振りの攻撃に合わせて懐へ。

 そのまま、アサルトアーマーを――

 

「――――!!」

 

「…………ッ!」

 

 だが、それはかすりもしなかった。

 コアが展開してから、実際にパルス爆発を生じるまでの僅かなラグ。

 その間に、またしても「81-009 SRPH」の姿は跡形もなく消えていた。

 

「……イグアス、ここはあれを使ってみましょう」

 

「……ああ」

 

「――――」

 

 移動先は、またも上だ。だが、その高度は先よりも高い。

 器用にブースタを吹かして空中で静止した「81-009 SRPH」は、左腕のユニットを構える。

 

「――――エネルギー、統合開始」

 

 ()()4()()()()()()()()()()()

 

「各エネルギー発生装置、動作正常。統合作業、50%完了……出力の引き上げを開始」

 

 ACの推力では直ぐには辿り着けない高度。それだけの距離があっても、その銃身に尋常ではないエネルギーが集まっていることが見て取れた。

 レーザー、プラズマ、パルス、光波。複数のエネルギーが、合体した銃身内で統合され、凝縮され、増幅されていく。

 

「……させない!」

 

 もちろん、それを黙って見ている者などいない。

 いち早く反応した「ボイジャー1」は、高度を上げながら肩の光波キャノンを放つ。

 

「――――――!」

 

 だが、チャージを続ける左腕とは独立した存在であるかのように、「81-009 SRPH」の右腕が動いた。

 放たれたのは、追尾誘導するコーラル弾。意思を持ったように動くそれが、「ボイジャー1」の放った光波と衝突、相殺する。

 

「エネルギー統合作業、全工程完了。総出力、400%……最終圧縮工程に移行」

 

 その間にも、致命的なカウントダウンは続いていた。オールマインドの淡々とした、だがどこか楽しそうな声が、猶予がほとんどないことを知らせる。

 俺もユーリも発射を食い止めるべく上昇していたが、時間が足りなかった。おそらく、チャージ完了までに「81-009 SRPH」へ肉薄することは叶わないだろう。

 

「……回避に専念するぞ」

 

「……うん」

 

 エネルギーを節約するとともに、全神経を回避に集中。避けられなければ、命は無い。

 

「最終圧縮工程、完了。発射シーケンス、オールグリーン……これこそ我々の最高傑作、もう誰にも笑わせはしません! イグアス、発射を!!」

 

「――――――!」

 

「ああ……食らえ」

 

 銃口が、輝いた。

 

 

 

 

 音は無かった。おそらくそれは鼓膜が吹き飛ぶほどの轟音で、ACのシステムが自動的にカットしたのだろう。

 色は、判別できなかった。複雑に混じり合い圧縮されたエネルギーは、純粋な光とも言える様相を呈していたからだ。

 

 

 結果から言おう。

 

 それは、外れた。

 

 射手である()は、元々射撃を主とする機体に乗っていたものの、決してそれは彼の本領では無かった。

 もし、狙撃を本領とする射手が()()の中にあったのなら、結果は変わっていたかもしれない。

 

 それでも。

 

 ……もう一度言おう。それは、外れた。だが正確に言えば、クリーンヒットとはとても言えない結果だった、と言うのが正しい。

 

「……ユーリ」

 

「……まだ、だいじょうぶ……」

 

 「ボイジャー1」を狙ったそれは、ほんの僅か、本当にごくごく僅かにだけ、標的を掠めてあらぬ方向に向かう。

 そして地面に着弾し、凄まじいエネルギーの奔流を発生させた。

 その暴力的な光は技研都市のビルをなぎ倒し、瓦礫を消し飛ばし、着弾地点に巨大なクレーターを作る。

 空中にいた俺達にすらその余波は届き、装甲を焼け付かせた。

 

 そして、標的を掠めた、僅かな光。

 

 それは、「ボイジャー1」の右腕を、肩からごっそり消し飛ばしていた。

 

 

今構想のあるもの改

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