「続けようか」
文字通り命を危険に晒すことで、奪われた視界を取り戻したフロイト。
ほんの些細なことで即死しても何もおかしくはない……そんな状況に自ら身を置いてなお、微塵の恐怖も覚えてはいない様子だ。
「まだまだ、もっと面白くなりそうだ……!」
「…………」
それに対して、俺は足元に転がるドローンの残骸を右手で掴んだ。
そのままそれを、近接攻撃に特化した腕部のパワーで握りつぶす。
そして手の中で無数の細かな破片に分かれたそれを、敵機の開いたコクピットめがけて投げつけた。
「はは、いきなりえげつないな……!」
破片による、疑似的な散弾。装甲に対して有効打を与えられるほどの威力ではないが、生身の人間に当たればまず即死だ。
だが、それは着弾する寸前で展開したパルス防壁に掻き消される。
「ディクリプター」が、初めて左手のパルスバッシュシールドをシールドとして使ったのだ。
「盾はあまり性に合わないんだが、これはこれで……悪くない」
続けざまに放ったニードルガンも、
「さあ、今度はこっちの番だ」
言葉と共に「ディクリプター」が
放たれるのは、高い威力と衝撃を持った正確無比な銃撃。だが、それを振り切ろうと大きく動けば、潜むドローンに狩られることになるだろう。
対する俺は、正面突破を選択する。チャージしたチェーンソーの刃を機体正面に構え、回避行動は最小限に。
避けきれなかった弾はチェーンソーで受け、進路上のワイヤーを直撃前に切断。被害を押さえながら前に出る。
やがて距離は縮まり、敵機に肉薄する。だが、チェーンソーはそのまま。仕舞うでも振るうでもなく、
……赤熱と高速回転を行うチェーンソーの刃からは、絶えず高温の火花が散っている。これも装甲に影響を与えるようなものではないが、人間が浴びればまあ無事では済まない。
その死の火花を、左手で撒き散らし続ける。一方の右手は、ニードルガンを構えた。
「……なるほど、徹底した弱点狙い……
「……ああ」
継続的に放たれる火花からコクピットを守るべく、シールドを展開した「ディクリプター」。そのパルス防壁は展開直後こそ強力なものだったが、少し経てば急速に薄れていく。
「
「……当たりだ」
……最初に戦った時から、「ディクリプター」はガードというものをしなかった。
もっぱら近接モードで杭を発生させるのに使い、シールドを展開するのは時折挟むシールドバッシュと先ほどのイニシャルガードの時くらい。
「ずっと盾を構えているなんて性に合わないし……なにより、近接武器として使いたかったからな。とにかく熱効率と瞬間的な出力を上げてくれと先進開発局の連中
話している最中にも、パルス防壁は減衰し続けていた。このまま割れれば、チェーンソーを振るうまでもなく殺せる。
だが、そう容易い相手ではないことは承知の上だ。
「……さて」
突然、「ディクリプター」がその機体を捻る。
同時に、右肩の火炎放射器から炎が噴き出した。
その炎は機体の捻りによって、周囲を薙ぎ払う。ちょうど「バルテウス」がやるのと同じように。
振りかざされた炎に当たって、機体が僅かに怯む。その隙に距離を離された。
……だが。
「……はあ、はあ……ゲホッ、ガハ……」
苦し気な声と咳が、通信から漏れる。
「さすがに熱いな、肺が少し灼けたか……」
ACの装甲を溶断しうるほどの高熱。敵機に向けて放ったとはいえ、コクピットを開放した状態でその余波を浴びれば、そうもなるだろう。
「だが、操縦に支障は無いな」
それでも、フロイトは毛程たりとも鈍らない。
続けざまに広範囲モードで放たれた炎が、またも視界を埋め尽くした。
これまで幾度か体験したパターン。だがそうワンパターンなことを彼がするだろうか? いやあえて――
なんて、裏の裏を想像してもキリがない。出来るのは、次の攻撃に全力で備えることだけだ。
「………………」
赤い炎の中。
翠に煌めくパルスの光が、視界の端に映った。
「……ッ!」
「ジュピター」を貫くべく繰り出されたパルスバッシュシールドの杭を、紙一重で回避。
だが、そのシールドを握るものは存在しなかった。
シールドの持ち手を見れば、そこにあるのは複数のドローンだ。
ワイヤーを固定するためのアンカーだけを機体から出して、無理矢理持ち手に固定されている。
……先の火花による攻撃時。
フロイトはわざわざシールドが限界に近づくのを待ってから、火炎放射で反撃してきた。
その目的はおそらく、パルスバッシュシールドが生命線であると印象付けるため。
それを棄てる、なんて思わせないため。
直後、背後でヒートカッターが閃いた。
「がっ……!?」
だが、それは「ジュピター」の装甲を僅かに抉るのみで、致命傷を与えることは無かった。
なぜなら、振り向きざまに放ったニードルガンの弾頭が、敵の右腕を吹き飛ばしたからだ。
……機体の、ではない。生身の右腕だ。
彼は強化人間ではなく、機体と神経接続することは出来ない。
操縦桿を握る生身の腕を失ってしまえば、対応する機体の腕を動かすことは物理的に不可能だ。
……正直言って、これは賭けだった。
この腕部では、狙った場所に正確に弾を当てられる保証は無い。
だから、前の目潰しでは杭を直接握って突き刺すという方法を取った。
実際、弾頭は狙いの中心である胴体を逸れ、右腕を吹き飛ばすだけに留まっている。
……それでも、賭けには勝ったと言えるが。
「はっ……はあ……」
画面越しの映像でも、「ディクリプター」のコクピット内に夥しい量の血が溢れていることが分かった。
炎の中を突っ切ってきたためか、焼け焦げた跡も見て取れる。
「まだだ……! こんな楽しい時間、この程度で終わらせてたまるか……!」
それでも。
それでもフロイトは止まらない。
「
動かせなくなった右手のライフルからヒートカッターを取り外し、左手に握り直す「ディクリプター」。
「……お前に!! 勝ちたい!!」
同時に、それ以外の全武装をパージ。全推力を振り絞って斬りかかってくる。
……時間切れだった。
冷却の終わったコアが、アサルトアーマーを展開する。
広範囲を消し飛ばすそれは、毛程の容赦も手心もなく、装甲に覆われていないコクピットをその中身ごと破壊し尽くした。
「……まだ……動け、俺の……体……」
最後に、そう聞こえた気がした。
「――――――――――」
「……さよなら、エア……ごめんね、今までありがとう」
こちらの決着と時を同じくして、向こうの決着も付いていた。
「SOL 644」は何かに手を伸ばすような仕草を見せた後、コーラルの光と共に爆散する。
これで、技研都市に集結していた9機を倒したことになる。
「……これで」
「……いや」
すでに、霧は完全に晴れていた。
補給シェルパに信号を送り、呼び出す。
「……?」
「補給するんだ、急げ!」
「……うん」
ユーリを急かし、自分も急いで補給する。
それが終わるのと、補給シェルパが複合エネルギー砲撃で消し飛ばされるのは、同時だった。
「……イレギュラー」
現れたのは、8機の黒いAC。
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51-121 F
51-122 S
51-123 O
51-124 R
51-125 H
51-126 M
51-127 SW
51-128 P
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「まさか、ここまでやるとは……」
オールマインドのパーツを基調としたAC達。
「ですが、バスキュラープラントは稼働に至っていないものの、基礎部分は完成しています」
無機質に黒く塗りつぶされたそれらには、既視感があった。
ヴェスパーの、デッドコピー。
「……ここで、貴方がたを消せば、どうにでもなる」
それだけではない、周囲の空間に僅かな揺らぎが見えた。迷彩機か。
「消えてもらいましょう。我々の計画……人類と生命の可能性のために」
どこからか響く声と共に、それらは一斉に襲い掛かってきた。
一番悩んだのは「51-127 SW」です。型番被りを放置しているオマちゃんが頭文字被りを気にするだろうか?
今構想のあるもの改
- AMちゃんルートIF
- 465、仕事の時間だ
- ループ621
- レッドガンIF
- ヴェスパーIF
- 葦名一心VS岩本虎眼