転生したらモンキー・ゴードでした   作:NEST中毒者

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バスキュラープラント襲撃⑥

 

 崖越しにこちらを見据える、9機の敵。

 

「作戦通りにいくぞ、ユーリ」

 

「うん」

 

 それを確認した俺達の行動は、逃走だった。

 当然だ。数で勝る相手に、だだっ広い場所で正面から挑む? 誰がやるか。

 

 故に、まだ距離がある内に敵に背を向け、入り組んだ技研都市へと引き返す。

 

「――――――――――!!」

 

「……待て! モンキー・ゴード!」

 

 追跡を開始したであろう敵の声を聞きながら、補給シェルパに信号を送る。

 

 しばらくすれば、技研都市が()()()()()()()()

 同時にレーダーが使用不能になり、通信にノイズが走り始める。

 

 そう。先ほど技研都市中に仕掛けた補給シェルパの中身は、E()C()M()()()()()()()()だ。

 レーダーと通信を阻害する霧を、辺り一帯にまき散らす代物である。

 

 勿論、かのザイレムに使われているものほど高度でも、大型でもない。

 展開時間は限られているし、ごく短距離なら通信も可能だ。

 

 だが、それで十分。

 

 この霧が晴れる前に、分断して殺せるだけ殺す。

 もちろん、相手が一箇所に固まっていれば無意味だが、そうはならない確信もあった。

 

「さて、この辺だな。手筈通りに」

 

「わかった」

 

 都市の中でも特に障害物の多いところに到着し、所定の位置につく。

 

 しばらく待っていれば、上空に緋い光がちらつく。

 

 来た。

 

「――――――――――!!」

 

 それは、鳥のように変形した「SOL 644」だ。

 

 ECMフォグの中にもかかわらず、こちら……いや、「ボイジャー1」めがけて真っ直ぐ飛んでくる。

 

 

 想定通り。

 

 Cパルス変異波形、エア。

 

 お前は、ECMフォグの中であってもユーリの脳深部コーラル管理デバイスの位置を拾える。

 そして、お前はあの中で一番速く、一番戦闘経験が浅い。

 なにより、こう思っているのだろう。

 

 「レイヴンとは自分の手で決着を付けたい」と。

 

 すべて、想定通りだ。

 

 

「――――――――――!!!」

 

 「ボイジャー1」を認めた「SOL 644」は、急降下で突撃を開始。

 

「ごめん、ごめんね。エア」

 

 その軌道上に、寸分の狂いもなく光波が置かれる。

 

「――――――――?」

 

「いまは、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ……あなたが、憎いの」

 

「――――――――――」

 

あなた(コーラル)さえいなければ、ウォルターは――って、どうしても、かんがえちゃうから」

 

「………………」

 

 翼を広げた「SOL 644」は、「ボイジャー1」に激突する寸前で展開したアサルトアーマーにそのコーラルアーマーを消し飛ばされ、動きを止めた。

 

「おかしいこといってるって、わかってる。でも……ごめんね」

 

 間髪入れず、拡散レーザーを撃ち込まれて吹き飛ぶ「SOL 644」。

 その先の物陰で潜んでいた俺は飛び出し、チェーンソーを構える。

 

 さて、「SOL 644」の装甲は厚い。

 コクピットは存在せず、ジェネレータの位置も不明。

 

 よって狙うのは、腕。

 左の肩口にチェーンソーを突き立て、肩のコーラルキャノンごと左腕を斬り落としにかかる。

 

「――――――――――!!!!」

 

 轟音と火花を上げて、白い装甲が切り裂かれる。 

 

 やがて、傷口から血のようにコーラルを垂れ流しながら、「SOL 644」の左腕が吹き飛んだ。

 

「――――――――!!!!」

 

 そこで「SOL 644」がACS負荷限界(スタッガー)から復帰。

 飛び退いたかと思えば、多数の分身を展開。自らも残された右腕でコーラルブレードを発振し、今度はこちらに斬りかかってくる。

 

 やはり、戦闘経験は浅い。反射で動きすぎだ。

 

 分身を上に後ろに動いて回避。最後に斬りかかってきた本体は、避けない。

 

 代わりに、アサルトアーマーを展開。

 今はコーラルシールドが消えている。今度は事前に削る必要もなく、「SOL 644」は1発でACS負荷限界(スタッガー)に陥った。

 

 次は、右を貰おう。

 

「――――――――!!!!」

 

 先ほどと同じことを、今度は右でやる。

 これで、「SOL 644」は武装の大部分を失った。

 

「――――――――」

 

 再びACS負荷限界(スタッガー)から回復した「SOL 644」の動きは、先程とは違った。

 

「――――――――――」

 

 2、3歩後ずさりしたかと思えば、飛行形態に変形。

 その機首を敵に向けるでもなく、霧の中に消えた。

 

 ……さすがに、無策で突っ込んでは分が悪いと悟ったか。いったん引いて体勢を立て直す気だな。

 こちらを探知できる存在の片方を逃がしたのは痛い。だが速度の差から、追うこともできない。

 

「ゴード、次は」

 

「ああ、じきに来るはずだ」

 

 もし、先行した「SOL 644」を追って来た存在がいるなら、そろそろ頃合いだ。

 今はそちらを狩ることを優先するべきだろう。

 

 「SOL 644」が飛んできた方向を見据え、新手を待ち構える。

 

「見つけたぞ……!」

 

 次に霧から現れたのは、青の差し色が特徴的な軽量2脚AC。

 その肩には、牙を剥く狼のエンブレムが描かれている。

 

 そう。「スティールヘイズ・オルトゥス」だ。

 だが、先のリークの影響だろう。それは所々未完成なのか、いくつかの部分を既存パーツで補っている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 それは、俺達の姿を認めると、まっすぐ俺の方に向かってきた。

 

「モンキー・ゴード……! 貴様だけは、必ず……!」

 

 想定通りに、強い怒りを湛えながら。

 


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