転生したらモンキー・ゴードでした   作:NEST中毒者

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幕間②

 

 ある暗い一室。

 モニターの前に座った男が、何かを話していた。

 

「カーラ、そちらの状況は?」

 

「最悪だ、もうクリーナーが全部やられた……!」

 

「……そうか」

 

「まったく、どこのどいつだい、有ること無いことぶちまけてくれたのは!」

 

「こうなったなら、いっそコーラルの危険性を企業に打ち明けて……」

 

「……ダメだ、先程こっちのデータベースがハッキングを受けて、コーラルに関する資料が全部焼かれた。私でもチャティでも防げないなんて、一体誰が……」

 

「そっちもか……犯人については、思い当たるものが――」

 

 

「安そうな方から片付けよう」

 

「ボ……ス……」

 

「……っ!? チャティ!」

 

「お前が『RaD』の頭目か。あの掃除機ども、あれはまあまあ愉快だったぞ」

 

「……チッ! ウォルター、戦闘に集中する。もう切るよ!!」

 

「さあ、お前自身は果たして面白いのか、見せてくれ!」

 

「こちとら、遊びでやってんじゃないんだよ……!」

 

 

 

 

「……クソッ!」

 

 バツン、と音を立てて通信が切断された後、男は拳を机に打ち付ける。

 

「集積コーラルの直接確保は失敗、ザイレムは起動不能、俺たちの存在は完全に露見した。今や全勢力が俺たちの敵だ……! 一体どうする……!」

 

 独り言ちていると、今度は別の相手から通信が入った。

 

「ウォルター! ねえ、ウォルター!!」

 

「……621」

 

「いったい、なにがおきてるの? オーバーシアーって、コーラルを焼くってなに?」

 

「……あの告発を見たのか」

 

「ほんとの、ことなの?」

 

「……ああ、そうだ。俺たちの目的はコーラルを焼き払う事だ。コーラルの爆発的増殖による致命的な破綻を防ぐために」

 

「―――――――――――!?」

 

「……今までお前に伏せていたことは、謝罪する」

 

「……ねえ、ウォルター」

 

「……どうした」

 

「わたし……どうすれば、いいの?」

 

「…………」

 

 沈黙。男は考え込むように、何も話さない。

 しばしの時が流れて、ようやく口を開いた。

 

「今から送る座標に、向かえ」

 

「……うん」

 

「そこには、星系外脱出用のシャトルが隠してある。それに乗り込んで、この星系から出るんだ」

 

「……えっ?」

 

「星系外に出たら、俺の伝手を頼れ。今、連絡先を送る」

 

「……まって」

 

「お前には、この惑星で傭兵として稼いだ金が十分にある。それで再手術を受けて――」

 

「まって!!」

 

「……何だ」

 

「このほしからでて、どうするの? コーラルを、もやすんでしょ?」

 

「……621」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、いいんだ」

 

 

「……どういう、いみ?」

 

「俺たちの目的はコーラルを焼くことだったが、集積コーラルの直接確保は失敗し、サブプランだったザイレムも完全に潰された。俺たちは、詰みだ……」

 

「だから、にげるの? なら、ウォルターも……」

 

「……いいや」

 

「なんで」

 

「恐らく、ここにもじきに敵が来る。俺は、それを食い止める」

 

「それなら、わたしが……」

 

「……コーラルを焼き、破綻を食い止めることが俺の意味だ。それが不可能になった以上、俺に生きる意味はない。……だが、お前は違う」

 

「なに、いって」

 

「お前は、その意味を背負う必要はないんだ。俺はお前に望まぬ意味を押し付け、お前を縛りつけてきた。……それはもう終わりだ」

 

「……やだ」

 

「お前を縛るものは、もう何もない。もう、お前は自分のために生きていいんだ。これからはお前自身で選択して、お前自身の意味を見つけろ。……いきなり投げ出す形になってすまない。勝手なことだというのは分かっているが……」

 

「いやだ!!」

 

「……621」

 

「わたし、わかんない、わかんないよ! あなたがいないと、わたし、なんにも……!」

 

「…………」

 

「ねえ、わたし、えらべないよ……! あなたがおしえてくれないと、あなたが、導いてくれないと、わたし、なにも、なにもわからない……!」

 

 

「いいや、違う」

 

「なにも、ちがわないよ……!」

 

 

 

「……『レイヴン』、『G13』、『戦友』……『ユーリ』」

 

「……っ」

 

「お前にも友人が、大切な人ができたろう?」

 

「……それ、は」

 

「出会いは偶然や、俺が引き合わせた結果だったかもしれない。それでも、彼らと関わりを深めたのは、お前自身の選択だ」

 

「…………」

 

「例え、彼らと袂を分かつ結果になったとしても。それには、確かに意味があった」

 

「……でも」

 

「もうお前は、俺の手綱が無くても、歩いて行ける。どこへだって、飛んで行けるんだ」

 

「……それ、でも」

 

「だから、どうか生きてくれ」

 

「……っ」

 

「すまない、酷なことを言っていると思う、だが――」

 

「いやだ! わたしは、それでもあなたが必要なの! あなたといっしょに、いきていたいの!!」

 

「……すまない。だが、俺はここまでだ」

 

「やだ、やだよ! おねがいだから、そんなこといわないで!!」

 

「……もう時間が無い」

 

【ハンドラー・ウォルターの権限により、強化人間C4-621を休眠モードに移行開始。脳深部コーラル管理デバイスをシャットダウン】

 

「さよならだ。お前の選択が、お前自身の可能性を広げることを、祈る」

 

「いやだ!! まって!! いかない、で……」

 

【休眠モードへの移行を確認。コクピットハッチをロック。オートパイロットを起動】

 

「パ、パ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【目標地点に到達。オートパイロットを解除。強化人間C4-621、覚醒しました】

 

 

「レイヴン!起きてください、レイヴン!」

 

「エア……」

 

「すみません、脳深部コーラル管理デバイスが落とされてしまっては、私は何も……」

 

「ここ、は……」

 

「ウォルターの言っていた、シャトルの座標、です」

 

「……そっか」

 

「あなたはこれから、どうするのですか? そのシャトルで、脱出を?」

 

「……ううん」

 

「では、何を」

 

「…………」

 

「……私は、人とコーラルの可能性を、守りたい。できればあなたにも、協力してほしい」

 

「………………」

 

「ですが、あなたがウォルターの意思を継ぐというのなら……それを否定は、しません」

 

「………………」

 

「……レイヴン」

 

 

 

 

 

 

 

「――――わたし、は」

 

 

 


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