「アーキバス部隊、第1波の壊滅を確認しました」
オペレータの声がする。
あのシュナイダー機を落とした後、残存する鹵獲部隊を掃討するのに、さほど時間はかからなかった。
ベイラムMT部隊との戦いでそこそこ数が減っていた上に、プラズマ爆撃の巻き添えでも結構な数が減ったからだ。
「ファクトリー」で作られたと思しきあの部隊は、ベイラムの部隊にとっては士気を挫いてくる恐るべき敵だろうが、気にしない者にとっては大した脅威ではない。
「第2波、来ます!」
粗方片付いたあたりで、新手だ。
「第2隊長閣下に報告します。ベイラム部隊と接敵、戦闘開始」
「レッドガンの名のもとに……アーキバスに栄光を……」
「MT部隊に大規模な損害を確認、作戦の成果は上々です」
「総長……総長……」
今度は、アーキバスの正規部隊らしい。
機体は、封鎖機構の鹵獲兵器が大半だ。
ただし、しっかりと弾避けとなる「部品」を混ぜて、揺さぶりを掛けてくるあたり徹底している。
「クソが……まだレッドガンを騙るのか……!」
「畜生……撃ちたくねぇよ……」
ベイラム側の士気は、微妙なところだ。
五花海の詐欺を信じてか、義憤に燃えてか、ヤケクソじみて攻撃的になる者、敵の中に仲間が混ざっているという事実に耐えられず、極端に消極的な者、だいたいこの2種類に分かれているようだ。
今度の正規部隊は、先ほどと違い練度も高い。
確かな連携を以て、足並みの乱れたベイラム部隊を殲滅していく。
だが、その洗練された動きが逆効果になる面もある。
「総長……総――」
「ああ、レッド――」
全員が動きのおかしい「部品」であった第1波と違って、今回はまともな部隊の中に「部品」を混ぜている。動きを少し観察すれば、どれが弾避けとして混ぜられた「部品」なのかは一目瞭然だ。
動きのおかしい機体を優先的に潰していけば、通信に混ざるうわ言が減っていくのが分かった。
「皆さん! 残る相手はアーキバスの正規部隊のみです! レッドガンの名を騙り、その名に泥を塗った張本人ども! 果たして、これを許しておけますか!?」
「部品」の殲滅を確認し、五花海が檄を飛ばす。
「そ、そうだ! アーキバスのクソ共に、地獄を見せてやるぞ!」
「俺達を侮辱したこと、後悔させてやる!!」
五花海の扇動により、どうやら怒りの矛先は、今しがた元仲間を殺しまわった俺ではなく、アーキバスに向いたらしい。
奮起したMT部隊の動きは、先ほどよりもかなり良い。
次第に、ベイラム部隊がアーキバス部隊を押し返し始めた。
そこで、通信が入る。
「高速で接近する機体反応! 新手です!」
通信から間もなく、その新手が姿を現す。
地面を高速で駆ける、ACよりもはるかに大きい機体。
「緊急調整により少し遅れたが、
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AAS02A:ARQUEBUS CATAPHRACT/V.Ⅳ Swinburne
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「クソッ! カタフラクトの改修型か!?」
「正面だ! 正面を狙え!」
「ダメだ、あれは……パルスアーマー!?」
「火力が高すぎる! 近づけない!」
「ククク、分を弁えない不法者ども……! このスウィンバーンが指導してくれる!」
現れたカタフラクトの改修機……「アーキバス・カタフラクト」は、元になった機体とは比べ物にならないほどの強化が為されていた。
まず目につくのは、機体上部の旋回砲塔に取り付けられた3連装スタンニードルランチャー。
元々は連装ミサイルランチャーがあった場所に取り付けられたそれは、貫徹力と攻撃範囲を両立し、MT部隊を薙ぎ払っている。
もう片方の可変レーザーキャノンは元の機体から引き続き装備されているようだが、その威力も底上げされている。
砲塔下部についていたガトリングキャノンは、レーザーガンに換装されているようだ。
続いて本体。
車体固定式のガトリンググレネードが取り外されているが、それより目を引くのは、車体正面のコアユニットだ。
MTの代わりに、4脚ACが据えられたそのコアを、パルスアーマーがすっぽりと覆っていた。
おそらく、バルテウスから流用したものだ。
ブースタから出る光は青白いものに変わっており、高出力の還流型ジェネレータに換装されていることが見て取れる。これで増加したEN負荷の帳尻を取り、レーザーの威力を上げているのだろう。
弱点を補強しながら、強みである火力も伸ばしている。
見事な強化だと言わざるを得ない。
それから、パイロットの動きも適切だ。
不用意に足を止めず、弱点を上手く庇いながら火力を投射し続けている。
封鎖機構のそれとは、格が違う。
総合すれば、非常に隙が無く、強力な敵だ。
これは、なかなか骨が折れそう――
「皆さん、下がっていてください」
突然、五花海が言う。
「ここは、私にお任せを」
「……了解」
それを聞いたMT部隊は、反論もせずに下がる。よくあることだ、とでも言わんばかりに。
「何のつもりだ? 不法者」
それを見たスウィンバーンが、不思議そうに問いかける。
「いえ、少しばかり、私の話を聞いていただきたいと思いましてね」
「……いいだろう、私は人の話を最後まで聞かない愚か者ではないからな。 それで? 何の話だ?」
「単刀直入に申し上げましょう」
「我々に付く気はありませんか? スウィンバーン殿」