「空力……空力……空力……空力……」
宙を舞う異形の機体、「シュバルベ」が、こちらにプラズマライフルを向ける。
「……っ! 皆さん、散開なさい!」
五花海が叫ぶと同時、空からプラズマライフルの爆撃が降り注いだ。
それは、エクドロモイが持っていたものを改修したものらしく、威力、範囲、速射性ともに優れている。
降り注ぐプラズマは、ベイラムのMT部隊、そして巻き込まれた数機のアーキバス機を薙ぎ払っていく。
「クソ、この化け物め!」
ベイラムのMT部隊が反撃に出るが、高高度で浮いているうえに速度もある。まるで当たっていない。
「まったく、アーキバスの悪趣味もここまでくると滑稽ですね……!」
五花海も、MT部隊に混ざってミサイルを発射するが、「シュバルベ」は速度にものを言わせ、雑な回避軌道で振り切って見せた。
「……人類は」
「……?」
ミサイルを躱し切ったそれが、言葉を発する。
「人類ははあまりにも飛ぶには適さないそうだ進化が足りないんだ重過ぎるんだ余計な内臓を抜いて骨を中空にしてそれから脳の容積も削るべきだそうだそうだ歯も顎もいらない捨てなければ捨て去らなければ」
矢継ぎ早に言葉を紡ぎながら、それは2対のフライトユニットを展開させる。
「なにより翼だ翼を生やさなければ何時まで経っても飛べないままだ筋力も足りない羽ばたく力が必要だいつまでも腕なんて痕跡器官を引き摺り回しているから人間は飛べないんだそれでは空力が足りないとなぜ誰も理解しない理解できない」
うわ言と共に、展開したフライトユニットから大量のプラズマミサイルが放出される。
元になった高機動型LCにも搭載されているフライトユニット内臓ミサイル。だがプラズマミサイルに換装されている上に、ユニットが増えた分装弾数も単純に倍だ。
圧倒的な広範囲をカバーする絨毯爆撃に、MT部隊が次々と爆散していく。
だが、ミサイルを一斉掃射する際に静止する必要があるという弱点は、元の高機動型LCと変わらないようだ。
足を止めた異形に接近すべく、ABを起動。
「ああ、神よ!! 我らの脳に空力を与え給え!!!」
ハンドガンの射程に入るか入らないかの距離まで接近したところで、「シュバルベ」の
「どうやって着地するんだよ、それ……!」
ランディングギア……
慌ててブースタを切り自由落下するや否や、先ほどまでいた場所に球状のパルス弾が殺到した。
そのランディングギア……パルスキャノンがオーバーヒートしたのを確認して再接近を試みるが。
「何物も、私を捕らえ、止められぬのだ! アアアアアアアアアアアウウウウウウウアアアアアア!!!」
その時にはすでに高速飛行を再開していた「シュヴァルベ」は、あっという間に距離を離していく。
「ああ、素晴らしい! 私は脳に空力を授けられたのだ!! 人を超え、超次元へと到った!! アハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
狂乱しながら飛び回るそれは、滅茶苦茶にプラズマライフルを乱射する。
「空力、揚力、浮力、上昇推力、アッパーフォース! 羽、羽根、翅、飛膜、翼! イカロス、ダ・ヴィンチ、ジョージ・ケイリー、オットー・リリエンタール、二宮忠八、ライト兄弟、アルベルト・サントス・デュモン!! 大いなる空力のアカシックレコード、私はその一部になった!! 空力が私、私が空力なのだ!! アーヒャヒャヒャヒャ!!」
気が狂ったように――いや実際狂っているのだろうが――喚き散らしながら飛び回ってはいるが、一応はこちらから距離を取るように動いている。
「厄介だな……!」
先の「CEL 240」に続き、またしても「ジュピター」の弱点が出た。
これは、「ジュピター」に限った話ではない、どんな兵器でも、自分より射程、速度ともに上の相手に延々と引き撃ちされればどうにもならないのは自明の理だ。
それを覆すには、さて……
「五花海!」
「……何です?」
「コースを送った、確認してくれ」
「……いいでしょう」
一応念を入れて、婉曲に作戦を伝える。
五花海が了承したのを確認すると、再びABを起動。追跡を再開する。
「ああ、ああ、私はゴイサギ、ヒクイドリ、フクロウ、クジャク、ヒゲワシ、モズ、クロヅル、そしてツバメだ……! 人間が追いつけるはずがない……!!」
やはり、速い。
「シュバルベ」は、五花海の放ったミサイルを回避しながらも、こちらの追跡を振り切ってくる。
ただのホバー移動で、軽量ACのABを超えるスピード。まったく狂った話だ。
「やはり空力、空力がすべてを解決するのだ……!」
「シュバルベ」はなおも、こちらにプラズマライフルを向けながら飛び続ける。
「鳥、鳥こそが、人類の――」
それは、突然飛行を止めた。
原因は、単純。
俺と五花海によって軌道を誘導されたそれが、バスキュラープラントの支柱に背中から激突したからだ。
「な……に……?」
バードストライク。
実によくある事故だ。鳥にとっても、航空機にとっても。
「鳥の視野角は300度以上あるらしいが、お前はどうだ?」
激突の衝撃で
「ああ……その機体……」
ほとんど装甲の無いその機体を引き裂くのは、実に容易いことだった。
「軽くて……シンプルだ……よく飛べそうだな……」
あっさりと中枢部を破壊し尽くされたそれは、滞空する力を失い、落下していく。
「うら……やま……しいな……」
地面に叩きつけられた「
AA18Asc:SCHWALBE
解説
シュナイダーに魔改造された高機動型LC。
腕をフライトユニットに変えて、足はLAMMERGEIERのホバーモードで固定。そこからプラズマライフルを持つマジックハンドと、ぱっと見ランディングギアっぽいパルスキャノンが生えている。
軽量化のために頭をもいで、装甲も剥ぎまくっている。
フライトユニットのミサイルはプラズマミサイルに換装。
コンセプトは単純、飛び回ってプラズマで爆撃、寄られたらパルスキャノンで迎撃。
狂った見た目の割には理にかなっている。
欠点は装甲、姿勢安定性ともに貧弱なこと、速すぎてそこらのパイロットじゃ扱いきれないこと。
名前はツバメのドイツ語から。
由来は、バードストライクが多い鳥だから。鉄血は特に関係ない。
Device Sc134
解説
AMちゃんのリークによりスパイ容疑がかかり、ファクトリー送りにされた元シュナイダーのテストパイロット。
ファクトリーの洗脳()によって発狂()した。
当然ヴェスパー部隊ほどの腕はないので、狂った機体を御しきれずバードストライクする羽目に。