節約モードでデフレマインド復活も

海外のインフレに端を発した今回の物価上昇は、長年、日本の消費者や企業に染み付いたデフレマインドを大きく変えました。

すなわち、▼人々が、今後、物価が上がることを予想し、▼消費者は、値上がりを(仕方なく)受け入れ、▼企業も価格転嫁に踏み切るといった行動の変容が見られるようになったのです。

「物価は上がらない」「価格は上げられない」というデフレ時代の強固なノルム(社会通念)が変わったのです。

その心理の変化こそが、デフレ脱却には極めて重要なことでした。

しかし、肝心の賃金がいつまでも上がらなければ、この心理の変化を、現実として長続きさせることはできません。

スーパーなど消費の現場では、例えば、値上げ率の大きかったナショナルブランドから、価格の安いプライベートブランド(PB)商品への移行が急速に進むなど、消費者の節約モードが急速に強まっています。

消費者が血眼になって、少しでも安い商品を探しまわり、企業がシェア拡大を目論んで、価格転嫁をライバル企業より手控えれば、デフレ時代に逆戻りしかねません。

今は、その剣が峰にいるようなものです。デフレ打破のための最後の壁は、実はとても厚いのです。

デフレ脱却の芽を潰さないために

賃金が上がることが何より大事です。

少なくとも、上がると予感できることが必要です。

苦しい世帯への給付金の速やかな交付、物価高対策の継続、円安の一定の是正、主要企業による賃上げの前倒し発表など、賃上げを促進すると共に、賃上げまで「持たせる」政策が特に求められています。

デフレ脱却の芽を潰さないために、とても重要な局面に入っているように思えます。

播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)