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彼らはなぜ神宮外苑再開発反対のデマに乗ったのか

坂本龍一、桑田佳祐、村上春樹ほかサエキけんぞうなど著名人がデマに乗って神宮外苑再開発に反対の姿勢をとった。なぜ彼らは調べたり現地へ行けばわかることや、多様な人々の多様な意見を無視してデマ拡散者になったのだろうか。情報の発信源のひとつで、反対運動の旗手でもあるロッシェル・カップについても考えよう。

加藤文宏

 まず大前提となる「事実」を確認しよう。
 2024年7月3日、神宮外苑再開発コンソーシアムのメンバーであり、自社ビルの建て替え、自社敷地における緑の保全を行う伊藤忠が「神宮外苑再開発について」と題するリリースを公開した。
 リリースは、昨年10月に活動家が行った同社施設への落書きの被害と、逮捕された活動家の書類送検についての説明から書き起こされている。そして「今後も毅然とした姿勢で臨む所存」と同社の姿勢が明確に示された。
 続いて、6月に行われた大阪での株主総会で、神宮外苑再開発について丁寧に説明したにもかかわらず、質疑応答に入ると環境活動家が長々と持論を展開して進行を邪魔したことが明らかにされた。
 この後、同社が再開発に参加する意義や樹木の保全について説明されている。
 人工林である神宮外苑の「みどりを維持するため」、継続的な樹木の管理、倒木や古くなった樹木の植え替えが必要であること。
 これらの管理や維持は、行政等ではなく、明治神宮をはじめとする土地所有者が行っていること。
 伊藤忠ビルの敷地には社屋と付帯商業施設があり、樹木は街路樹や生垣、中庭の植栽などだけであること。
 「みどりを守る」ための多大な資金が、秩父宮ラグビー場、神宮球場等神宮外苑にある施設からの収入より得られていること。施設が老朽化し、安全性・防災性の向上、バリアフリー対応等への更新の観点から、建て替えが喫緊の課題になっていること。伊藤忠ビルもまた同様であること。
 伊藤忠が本社ビルの建て替えを検討しはじめたとき、既に計画検討が始まっていた神宮外苑再開発側から声をかけられ、地域一体開発で建設費捻出や事業継続性などを解決する運びになったこと。
 既存樹木を出来る限り守りながら移植や新植を行い、樹木の本数をこれまでよりも増やし、より豊かな自然環境を創っていく計画であること。4列の銀杏並木は計画策定当初から伐採が検討されたことがなく、将来にわたって保全されること。
 以上が、簡潔かつ明快に説明されたうえで、「既存樹木調査データ」へのリンクが添えられている。

 このリリースのポイントは3点
1.活動家による犯罪と株主総会での特殊株主(総会屋)まがい行為が発生した事実の提示。
2.活動家の実力行使と総会屋まがい行為での主張が、根拠なきものであることの説明。
3.伊藤忠が「毅然とした姿勢で臨む」と明らかにしたこと。
である。
 なお、落書き事件を扱ったのが警視庁公安部であると報道されたことでも明らかなように反対運動はただの環境保護運動ではなく、株主総会で長々と持論を展開して進行を邪魔した人物はロッシェル・カップではないかと別の投資家が証言している(後述)。

 外苑再開発反対運動は一般社団法人日本イコモス国内委員会が発したヘリテージ・アラート(文化的資産が直面している危機の指摘)から始まったとみてよいだろう。ヘリテージ・アラートでは神宮外苑を「17世紀から続く東京の庭園都市パークシステムの中核」としている。しかし同地は武家屋敷などのあと練兵場を経て、明治天皇大喪会場となったのちに神宮外苑として整備されているので、運動の発端からしておかしいのだ。
 この奇妙な反対運動の旗手でありエバンジェリストとして活動しているのがロッシェル・カップだ。
 カップの主張を整理した記事があるので紹介する。

1.伐採されるとする樹木の本数が1,000本/3,000本/10,000本と増えて主張されていること。実際には計画区域全体の樹木の本数は1,904本、伐採本数は743本である。
2.当初は伐採予定だった軟式球場内の銀杏が保存されることになった後も、伐採されると主張されていること。
3.ショッピングパークららぽーとのような施設がつくられるとあり得ない主張をし、「作って欲しくない皆さん、再開発計画の見直しを求めてこのオンライン署名にぜひ賛同して下さい!」と反対署名を呼びかけたこと。
4.「神社の中で間違いなく、明治神宮はお金持ち」と誤解を生む主張をしたこと。
5.新しく建設されるホテルの屋上にテレビ番組タイアップのDASH島がつくられる。城島茂プロデュースのTOKIO HOTELがつくられる。など、あり得ない話を拡散したこと(のちに削除)。
6.独立行政法人日本スポーツ振興センターが所有する土地にある秩父宮ラグビー場が、国有地内にあると主張したこと。
7.銀杏並木と建設されるビルの距離が8mとしたうえで、銀杏の根は15ft(フィート)拡がるので「良くない」とした。この説を採用したとしても、15ftは4.5mなので何ら問題にならない。単位への勘違いを誘導する主張を行った疑い。
 以上、指摘されている7点は「再開発の内容と規模」、「神宮外苑の実情や開発の背景」に疑惑を抱かせ、悪印象を与える意図のもと発言されたとしか言いようがない。
 このほかカップは、再開発が環境破壊であると印象操作する発言を未だに続けている。なお、株主総会で進行を邪魔した発言主は声の特徴からカップではないかと他の株主によって指摘され、指摘した人物から事実確認に答えるよう求められているが彼女は無視している。

 本題に入ろう。
 日本イコモス、ロッシェル・カップ、共産党、蓮舫といった面々が宣伝した神宮外苑再開発害悪論を、坂本龍一、桑田佳祐、村上春樹ほか、最近ではサエキけんぞうまでもが拡散した。
 いっぽう数多くの一般人たちが資料と現況を突き合わせて、日本イコモスとカップの誤りを指摘し続けてきた。
 私はカップが2022年にオリンピック関連事業のため代々木公園の樹木が伐採されると大げさな誤情報を流したとき彼女に注目し、2023年2月に福島県の除去土壌問題で当事者をないがしろにして物議を醸したできごとを経て、神宮外苑再開発問題に関わった。当事者への取材では労力を要したが、伊藤忠がリリースで伝えた情報は既にネット上から入手済みであった。取材は無理でも、コンピュータやスマホを扱える人なら平等に情報へアクセスできたはずなのである。
 つまり前記した著名人は最低限の下調べさえしなかったのだろうし、もし事実を知っていたのなら反権力や反資本家はたまた反神道(反明治神宮)や反天皇制のためなら嘘をついてもかまわないと考えていたことになる。
 いずれにしろ愚かな姿勢であるが、著名人たちは自分こそが(音楽や文学、言論によって)大衆を善導する「前衛」と勝手に思い込み、前衛仲間が反対しているからとデマを鵜呑みにしたのだろう。これは虫が光に引き寄せられて移動する「走光性」のような性分から生じた行動だった。
 自惚うぬぼれたい人々は大衆の中にもいて、彼らがしばしば口にする「ネトウヨ」より賢くなったつもりで活動家や著名人が吹聴するデマに乗った
 プロレタリアート(賃金労働者階級)や大衆運動、革命など指導する前衛党を名乗る共産党と、我こそ前衛と自惚れる人々はもともと親和性が高い。ゆえに、これら賛同者たちは事実、社会、当事者への理解が粗く、解像度が低いまま批判を繰り返すのである。重要なのは現実ではなく、誰が前衛かなのだ。
 思い返せば、原発事故後に事実を歪曲したりデマを吹聴した著名人も同様だった。坂本に至っては「たかが電気」演説を行い、彼の言い分は電力完全自由化によって権益を拡大させたかった再エネ企業家の受け売りだった。このときも彼は、自分こそ大衆を善導する「前衛」と位置付け、反原発を掲げた自称前衛に引き寄せられ、科学的な事実や、エネルギーとインフラの事実、異なる意見の人々の意見を知ろうとはしなかった。
 違うというなら、再開発反対派の人々は少なくとも伊藤忠のリリースに謙虚にならなくてはいけない。だが、リリースに対応しようとする動きは現れていない。

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 神宮外苑再開発に反対する共産党の真意は、大衆運動によって権力、権威といったものを不安定にさせるところにあり、これはいつものことだ。
 では悪目立ちしているロッシェル・カップを動かしている原動力は何なのだろうか。
 カップは日本における本拠地を、国内最大級の再開発プロジェクト「汐留シオサイト」内の高層ビルに置いている。彼女は神宮外苑再開発を批判しつつ、環境と景観ががらりと変わった汐留の利便性を享受しているのだ。このような彼女が環境保護活動に目覚めた理由を語る音声が発見された。 

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https://jennifershinkai.com/blog/2023/05/24/the-ikigai-in-career-and-activism-with-rochelle-kopp / Jennifer Shinkai IKIGAI & INCLUSION

 カップは上野恩賜公園内にある不忍池の駐車場建設問題に反対する意見をメディアに取り上げられたことが成功体験になり、環境保護活動に関わるようになったらしい。さらにユダヤ教の概念「ティックーン・オーラーム」に触れ、「世界の修復」のため活動していることを明かしている。彼女は、環境保護活動のかたちをとったティックーン・オーラームによって、大衆と社会を善導する「前衛」自認者だったようだ。

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カップはティックーン・オーラームについて過去にツイートもしていた。

 神宮外苑の運営者は宗教法人明治神宮だ。宗教的使命感を抱いたカップが、「世界の修復」を目指して明治神宮らによる神宮外苑再開発に反対するため、事実に基づかない非論理的な主張と扇動を行っていたのなら大問題である。土足で宗教、異文化、社会、経済活動に踏み込むものと思われかねないのだから、せめてデマと目される情報を使った扇動はやめるべきだ。
 そしていま、ロッシェル・カップという存在を私たちの社会はいかに扱うべきかだけでなく、自らを前衛と自惚れた人々をいかに扱うべきか問われている。
 伊藤忠は、思想性や背景をいちいち考慮するまでもなく、乱暴者や総会屋まがいの所業として毅然と対応するという。カップの例で言えば、ユダヤ教が悪いのではなく、彼女の言動がおかしいだけなのだから、そうするのが最善の処置なのだろう。


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著述家、写真家。論壇誌、その他メディアでの執筆、講演。加藤文名義で日本経済新聞社、文藝春秋他から著作発表。インタビュー誌「IJ」創刊|講演・講師承っています。
彼らはなぜ神宮外苑再開発反対のデマに乗ったのか|加藤文宏
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