文芸評論の神様・小林秀雄を1度だけ見かけたことがある。まだ記者になりたての1974(昭和49)年の頃。横浜の中華街で昼食中、店のシューマイをテークアウトで夫人らしき女性と買いに来た。奇麗な白髪で整った顔立ち。「あっ、小林秀雄だ!」と思わず立ち上がった。そして83年、80歳の小林が東京の慶応病院で亡くなる際、社会部で同病院を担当しており、その死を速報した。
まもなく文化部に移り、小林の三回忌の際、小林の妹高見澤潤子(夫は漫画「のらくろ」で知られる田河水泡)の「兄 小林秀雄」が刊行され、高見澤を取材した。当然同書に中原中也と、その恋人長谷川泰子が登場する。そして25(大正14)年11月「あの女と一緒に住む...