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- 2024年5月29日
定額減税 その仕組みをわかりやすく解説 対象となるのは?年金受給者は
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6月から実施される定額減税。
年収が2000万円、所得が1805万円を超える人は対象外となりました。
今回の定額減税で、1人あたり年間でいくら減税されるのか。子どもも対象に含まれているのか?わかりやすくまとめました。
定額減税とは
今回の定額減税では、1人あたり年間で▼所得税が3万円、▼住民税が1万円減税されます。
納税者本人だけでなく扶養している▼子どもや▼年収103万円以下の親族らも減税の対象となります。
例えば、夫婦と子ども2人の4人家族の場合、共働きかいわゆる「片働き」かに関わらず世帯全体では、▼所得税が12万円▼住民税が4万円のあわせて16万円が減税されます。
一方で、減税の時期や方法は、所得税と住民税で異なるほか、会社員か個人事業主かといった働き方によっても違います。
○給与所得者
まず、毎月の給与やボーナスから源泉徴収で所得税が差し引かれている会社員などの給与所得者の場合です。
所得税の減税は勤務先の事情にもよりますが、早ければ6月に受け取る給与やボーナスから反映されます。
ボーナスなどで所得が多ければ6月分だけで全額減税されるケースもあります。
一方、扶養家族の人数や所得によっては、6月分の納税額から減税額すべてを差し引けないことも想定され、その場合、7月以降の所得税から順次、差し引くことになります。
国税庁の資料に示されている具体的なケースで見てみます。
本人と扶養家族3人で所得税の減税額が12万円の場合です。
本人の毎月の給与にかかる所得税が1万1750円、6月のボーナスにかかる所得税が9万3000円だと仮定すると、6月の給与とボーナスが支払われる際に、あわせて10万4750円減税されますが、12万円には届きません。
このため、7月の給与でも1万1750円減税され、それでも残る3500円分は8月に減税されます。
一方で、住民税は、6月分の納税額が0円となります。
その上で減税分を反映させた1年分の納税額を、7月以降の11か月に分割して納税することとなります。
○個人事業主
次に個人事業主の場合です。
原則として来年行われる確定申告の際に減税が適用されます。
ただ、個人事業主は、前年の所得や税額が一定以上の場合、確定申告の前に一部の額を納税する「予定納税」という制度があります。
予定納税の対象となる個人事業主に対しては、7月の1回目の予定納税の際に本人分の3万円の減税が適用されます。
1回で減税しきれない場合は、11月に行われる2回目の予定納税に繰り越されます。
また、予定納税にあわせて扶養家族の分の減税を受けるには税務署に申請手続きが必要となります。
一方、納付している住民税は、扶養家族の分を含めて6月分から減税されます。
○年金受給者
公的年金を受け取っている人の場合です。
公的年金も社会保険料などを差し引いた分が一定の金額以上の人には所得税がかかるため減税の対象となります。
公的年金は2か月に1回、偶数月に支払われるため、6月分の支給で減税しきれない分は、8月以降の支給に繰り越されます。
また、年金を受け取りながら働いて給与所得もある人の場合、いずれも減税の対象となり、確定申告などで精算するケースもあります。
○高額所得者は除外
定額減税は富裕層を対象とすべきではないとして、年収が2000万円、所得が1805万円を超える人は対象外となりました。
○狙いと課題
今回の減税の規模について、政府は▼所得税がおよそ2兆3000億円、▼住民税が9200億円余りと見積もっています。
政府は、ことしの春闘による賃上げが実際に給与に反映される時期にあわせて減税を行うことで、手取りの増加を実感してもらい、デフレ脱却を確かなものにしたいとしています。
しかし、一律の給付に比べて制度が複雑なことや、減税が複数の月にわたって行われるケースも多いことから、手取りの増加を実感しにくく効果が薄いのではないかという指摘も出ています。
減税しきれない分は給付も
定額減税では、扶養家族も含めて1人あたり4万円が減税されるため、子どもなど扶養家族が多い人は年間の納税額から減税額すべてを差し引けないというケースが想定されます。
また、単身者でも年収が低く年間の納税額が4万円に満たない場合もあります。
政府はこうしたケースでは、減税しきれない分を給付で補うことにしています。
給付は事務負担を軽減するため1万円単位で行われます。
例えば、減税しきれない額が1万5000円となる場合、給付額は2万円となります。
政府は、所得税と住民税を納めているおよそ6000万人のうち、減税額すべてを差し引けず給付が行われる対象者の数をおよそ2300万人と推計しています。
納税額の確定を待つと給付の時期が大幅に遅れてしまうことから政府は減税と並行して給付を行うことにしています。
具体的には、それぞれの市区町村が過去の納税額の実績などをもとに減税しきれない金額とそれに伴う給付額を推計し、夏ごろから順次、対象者に給付の申請書を送付するということです。
また、納税額が確定する段階で▼収入が大幅に減少したり、▼扶養家族が増えたりして給付額が足りなかった人には、来年以降、追加の給付も実施します。
このほか、政府は住民税の非課税世帯や住民税の均等割のみ課税されている世帯に対しては、▼去年から順次、10万円の給付を進めているほか、▼子育て世帯にはさらに手厚い支援が必要だとして、18歳以下の子ども1人あたり追加で5万円の給付を行っています。
デジタル庁“事務迅速化へ自動計算システム提供”
定額減税と並行して行う給付は市区町村が事務を担いますが、デジタル庁は、事務の迅速化に向けて給付額を自動計算するシステムを提供しています。
このシステムでは、▼過去の住民税の納税額や▼扶養家族の人数などを入力すると、所得税分も含めて減税しきれない金額がどれだけあり、それに見合った給付額はいくらかを自動で計算します。
デジタル庁によりますと、全国のおよそ9割の市区町村が、このシステムを利用するということです。