関西在住の女性Ｔ様が「今の旦那に恋愛感情はない。こどもを産むために結婚した。セックスレスになり、女として枯れそうだったから女性用風俗に通っている」と言った。年齢的にギリギリだったから、早く結婚する必要があった。損得勘定で結婚したため、旦那とのコミュニケーションはうまくやることだけが目的となり、人格的な繋がりはない。誰にも弱さを見せることができず、誰にも甘えることができず、女性用風俗に行くことで鬱憤を晴らしている。風俗は疑似恋愛だから、弱さを見せるとつけこまれる。だから、一定の距離感を保っているが虚しさもある。Ｔ様は、そのようなことを言った。

コミュニケーションとコントロールは別物だと思う。好かれたいとか、嫌われたくないとか、自分にとって都合のいい方向に物事を運ばせたいと思うことは、コミュニケーションではなくコントロールだと思う。コントロールが成功すれば嬉しいが、それはコミュニケーションではない。コミュニケーションのない相手と同じ空間で長い時間を過ごすことは、経済的に安定しても、精神的に安定することはない。誤解を恐れずに言えば、今、多くの人々がコントロールをコミュニケーションと履き違えているように感じる。情を、愛と履き違えているように感じる。誰かを「可哀想な人」認定して、優しくすることを愛だと履き違えているように感じる。

私は本が好きで、本をよく読む。だが、読んでいる途中に「あ、この作者は弥生人だ」と思った途端に読むのをやめて、本を捨てる。弥生人は物語を多用する。物語の罠に嵌ると、清く正しく生きること、世のため人のために生きることが良いことだと思い込まされて、型に嵌る。物語によって一時的に救われることもあるが、物語を生きる限り、反動を経験する。物語で救われた後に、物語によって苦しむ。人生楽ありゃ苦もあるさを信じ込むと、本当にそうなる。ほんの少し前の日本では、国のために死ぬことが良しとされた。今の時代から見たら狂っていると思えることが、普通にまかり通っていた。同じように、今の時代の常識も、数年後の人類が見たら狂気だと感じるであろうことは多い。

物語にはコントロールがある。意図があり、思惑があり、作為がある。作者が持って行きたい方向に読者を連れて行こうとする。真のコミュニケーションに目的はない。コミュニケーションそのものが目的になる。コントロールを目的としたコミュニケーションは、物語の罠だ。母親が「早くしなさい」とこどもを叱るのは、愛ではない。教育ではない。物語の押し付けだ。物語を信じ込むと、人を殺す方向に突っ込む。常識は人間を不幸にするためにある。良い学校を出なければ価値がない。良い会社に入らなければ価値がない。病気の人間には価値がない。結婚できない人間には価値がない。これらの物語を信じ込み、自分や他人を可哀想な人認定すると、あっという間に悲劇のヒロインになる。

踊りや音楽などの芸術は、本来、その場限りのものであった。瞬間瞬間に立ち上がり、消え、形を失っていく。生と死と再生を繰り返すものを、言語で記録するようになってから、芸術そのものではなく「芸術についたゴミ」を大事にするようになった。生命そのものではなく「生命についたゴミ」を大事にするようになった。愛そのものではなく「愛についたゴミ」を大事にするようになった。エゴとは、芸術についたゴミである。物語とは、生命についたゴミである。情とは、愛についたゴミである。物語を信じると、死ぬ方向に突っ込む。弥生人は死ぬ方向に突っ込ませる。死なないでいいよ。世のため人のために生きないでいいよ。縄文人は生きる方向に突っ込ませる。物語の説得力は凄まじく、油断をしていると「その通りに生きなくちゃ」と思い込まされる。だが、物語は幻想だ。弥生人は物語を多用する。縄文人は物語から解放する。死なないでいいよ。世のため人のために生きないでいいよ。これから名古屋に行く。