都知事選候補の石丸伸二氏について、「救国の英雄」レベルの全肯定か、全否定レベルの誹謗中傷かしか見かけないのは不健全なので、安芸高田市の財政資料や都知事選出馬以前に出ていた動画などから実体はどんな感じなのか調べてみたので聞いて下さい。いわゆる「劇場型政治の功罪」についての話でもあります。 ・ 1●日本の田舎で「変革」を起こした実体験から考えると… まず私事ですいませんが、私は石丸氏とほぼ同世代で同じ大学同じ学部卒であり、もともとシンパシーがあって好意的に見たい気持ちはあります。 一方で卒業後のキャリアは対照的なところがあり、私は外資系コンサルティング会社のマッキンゼーに入ったあと、こういう「グローバルの先端的なやり方で日本企業を脅していうことを聞かせる」的なスタイルの限界を感じるところがあって、その後色々あって日本の中小企業相手のコンサルタントになっています。 中には、日本の地方の中小企業で、10年で150万円ほど平均給与を引き上げられた事例もあるんですが、そういう「日本の田舎で本当に変革を起こした」的な実体験から言うと、衆目環視の中で 『恥をしれ!』 …とか言いまくる事自体はあまり良いことではないというのはまずあります。 実際、上記の会社が「変わっていく」プロセスでは辞めてもらった高齢の役員もいたんですが、コンサルとして関わる僕以上にクライアントの経営者はめっっっっっっっっっっっっっっっちゃ気を使っていて、メンツをタテながら段階的に権限を削っていって最後は「勇退」していただく、みたいな感じだったんですよね。 正直、まあまあ都会育ち・外資系出身の自分からするともどかしい気持ちはあったんですが、クライアントの経営者は「田舎ではこうやらないと、社員が半分出ていったりしかねないんですよ」とか言っててめちゃリアリティがありました。 で、結果として、「大方針」は経営者側が出しつつも、細部の細部の部分では「反対派の人の知恵」も盛り込んでいくことで本当に「田舎町でも成立する変革」は実現したところがあるな、と私は感じています。 とはいえ!私企業と市政は違いますし、私のクライアントの会社がある街よりも安芸高田市はさらに「田舎度」が高いので、単純に石丸氏のことを否定したいわけではありません。あまりに閉鎖的な田舎においては、ああいうアクションが必要なときもあるでしょう。 ・ 2●発信力は超一流、ただSNSで殴り合うしょうもない能力ではない本質的メッセージング力がある。 実際、上記のような体験があったので、「恥をしれ!」とかバズってた頃の石丸氏についてはそれほど私は好印象がなかったのが正直なところなのですが、今回の都知事選にあたって石丸氏の発信をちゃんと見直してみると、発信内容の確かさ、本質的な深さにはびっくりしました。 彼は「発信力」がありますが、それもただメディア映えするように騒いで見せて耳目を集めるみたいなレベルのものではなくて、ガチで本質に立脚した一貫性のあるメッセージをわかりやすく伝える能力がある人だと思います。そこにはかなり驚愕しました。 逆に、「SNSの論破合戦のプロ」みたいな印象があることで、そういう「本質的なメッセージング能力がある部分」が覆い隠されてしまっているところもあるように思いました。 ・ 3●一方で、安芸高田市の市政の実体は、そこまで「奇跡的にすごい」という感じでもなさそう 一方で、安芸高田市における市政の実体を色々と見てみると、在任期間が短かった事もあり、前宣伝ほどの「圧倒的にすごい」というような印象ではない感じがありました。 詳しくはリプ欄に貼ってあるリンクから詳細が書かれた記事に飛んでいただければわかりますが、だいたい以下のような三点にまとめられるように思います。 >>> ・発信力は百点満点以上、スーパー凄いし、しかもよくある「メディアで暴れて見せるけど無内容」みたいなんじゃなくてちゃんと本質的な内容に立脚した発信ができる能力がある。 ・一方で、「改革の実行度」みたいな話でいえば、子育て予算を潤沢に「使う方」はだいぶん増やせたけど、じゃあ実際「財政改革」の方はちゃんとできたかというと… ・「将来的な削減プラン」は策定したけど、実現するかどうかはわからないし、そのうちなし崩しになる可能性も結構ありそうで、もっと良い事例も他の自治体ではあるかも?という感じ。 <<< ある意味で、「敵を作る劇場型政治」だから着手できたことも、「敵を作る劇場型政治」だからこそ”やりきること”はできない面もあった・・というように総括できるかもしれません。 ・ 4●実は有能な部分もある小池都政 一方で、今回、小池氏、石丸氏、蓮舫氏の三人について掘り下げる記事を書いていますが、実は意外にも小池都政は、あれだけフワフワ何も考えてない風をしておきながら、全予算の3%もの見直しをサラリと実現し、潤沢な子育てサポートを追加の税負担なしに実現したことはもっと褒められてもいい部分ではあると思います。 現状の都民の69%が評価し、立民支持層ですら6割が評価するという都政は、単に選挙アピールがうまいから、というだけではないのだ、ということを直視することが必要と思います。 しかしそういう「小池の実はステルス的に有能な能力」は、どうしても密室政治的要素に繋がってしまいますし、できれば石丸氏のようなオープンな議論の先で、一歩ずつ公開状態で政治が動くようにできればと多くの人が思うのではないでしょうか? それについて言えば、結局日本のメディアの能力と、日本人全体の政治意識が低すぎて、「密室でやらないとまとめようがない」状況になってしまう現状から変えていかねばならないように私は感じています。 つまり、国民とメディアが「誰かを血祭りにあげるプロレス」を求めている状態で「オープンな議論」をすれば、その結果は「プロレスしか実現しようがない」ということです。 どうすれば、「議論ができる国」になり、石丸氏のような人が無駄に狂犬的に喧嘩せずに彼の能力を発揮しやすい国にできるのか? それについての提案まで踏み込んだ三連続都知事選特集記事を書きました。 この要約ポストにピンと来たあなたは、リプ欄に吊るしておくリンクから、ぜひお読みいただければと思います。