A.オルクスを野放しにしておくと封鎖機構の機体鹵獲作戦で拠点一つ根こそぎ鹵獲してアーキバスの戦力がやばいことになります
「何故です…スネイル…」
〔不憫なことだ お前を相手にして助けも貰えないとは〕
アイスワームを撃退した後ウォッチポイント・アルファを進み、ヴェスパー部隊長2人を襲撃。ラスティとミドル・フラットウェルも退けてわたしたちは技研都市に突入。メーテルリンクと五花海を退けた。
〔これである程度の時間稼ぎにはなる…先を…待て!〕
アラート音を聞いて咄嗟に飛び退く。これは…プラズマ爆発…!
『…V.IXオルクス現着した。2機とも落とされたようだがここまでは織り込み済み…独断で突入した独立傭兵レイヴンを排除する』
《…AC アンフォラ、来ます!》
右腕のプラズマライフルを技研製のものに変更したアンフォラ…オルクスがわたしに襲いかかる。
…オルクスはアーキバスだから「前回」までのように最後までわたしの味方ではいられない。そんな当たり前の事から目を逸らして、彼の隣に立てると思っていた。
『あまり君とはやり合いたくなかったのだが…仕方ないか。ホーキンスさんの仇は取らせて貰おう』
脚部を変形させてホバリングモードに移行し、わたしを見下ろしながらそう言い放つ彼の言葉に感情が乗っているようには感じられない。戦う建前が欲しいだけなのかも。
チャージされたプラズマライフルの攻撃範囲を考えるとこのまま地上で戦うのは得策とは言い難い。アサルトブーストでオルクスを追いかけてショットガンを浴びせていくと、オルクスはプラズマライフルをチャージショット主体から連射主体の運用に切り替えて手数で攻めてくる。
以前ヒアルマー採掘場でわたしを苦しめたあの圧倒的なスピードは今の彼の機体にないが、アーキバス先進開発局のジェネレータによって増幅された彼のEN射撃武器はどれも脅威的な火力だ。射撃武器からの被弾は最低限に抑え、彼の機体が苦手とする近距離戦でわたしの有利を押し付けていく。
クイックブーストによってENを消費しきったのか、オルクスはホバリングを解除して降下を開始。高負荷な武装で固められた彼の機体はEN供給効率にも難を抱えているはず…今が好機。
『僅かな隙に食らいついて離さない…やはり君は猟犬のようだ…』
後一押しでACS負荷限界というところで彼はパルスアーマーを展開。ACS負荷をリセットしつつEN回復までの時間稼ぎを狙っているが、展開中の隙にパルスブレードを振るい、PA干渉で耐久力を削り取る。
4脚を回転させながらのブーストキックでわたしを吹き飛ばし、オルクスは再度ホバリングへ移行。再び距離を取ろうとするオルクスとそれを追いかけるという構図に戻った。
圧倒的な速度差がない限り基本的にAC同士の戦闘は追う側が有利。退く側と違い、追う側はアサルトブーストをしながら攻勢をかけられるから。
『ッ…逃げきれないか…!』
オルクスに追いつき、ショットガンとニードルランチャーで今度こそACS負荷限界。パルスブレードによる2連撃で吹き飛んだ彼に向かってアサルトブーストで接近し、ショットガンを撃ち込んでからアサルトアーマーを発動。
再度ACS負荷限界に陥った彼にスタンニードルランチャーを打ち込んで、彼の機体は機能を停止した。
『…ここまでか。これだから君とはやり合いたく無かったんだ』
冷静な態度は崩さずに、底の見えない奈落へ彼が墜ちていく。
『…の修正…いや、まずは…が優先か…脱出装置も…ガバ…どうしたものか…』
《コーラルの共振が…弱まっていく…この機体と作った人々の意思…過去から続く全ての声たちが…》
〔!?いかん…!避けろ621!〕
《レイヴン!?機体制御が…!》
〔クソッ…!一手遅かっーーー〕
………再教育をされるのはこれで3回目。検査を受けて、尋問されて、罵られて、暴力を振るわれる。痛いものはやっぱり痛いけれど、心を無にして脱出の時を待つ。初めての時と比べると慣れたものだ。あの時はされる行為の全てが苦しかったから、助けに来てくれたオルクスが輝いてみえ…………
…そうだ。オルクスはわたしが殺したんだった。
わたしのルビコンでの活動は思っていた以上に独立傭兵オルクスに依存していたことに今更気がついた。さっきまでの余裕は消えて血の気が引くのを感じる。彼の助けも無しに、この不自由な身体でどうやって脱出すれば良いんだろう。どれだけこの痛みに耐えれば良いんだろう。
…あれから何度も痛めつけられて、今日もまた再教育の時間だ。わたしの居る独房の扉が開かれる。
『まさか、君とこうなるとはな…』
「おる…くす…!?」
扉を開けて入って来たのは頭に包帯を巻いたオルクスだった。
『見ての通り、誰かさんに惨敗して大怪我を負った病み上がりのV.IXオルクスだ…今回からは俺が君の再教育を行わせて貰う』
「ぇ…?」
オルクスが生きていてくれた…そう思ったのも束の間、彼の言葉の意味を理解する…また忘れていた。アーキバスに所属している彼に、わたしを助ける理由なんてなかった。
『ここまで計画が狂う…というか手遅れになるとは思ってなかったが…君の酷い有様を見れば流石に溜飲も下がるというものだな』
わたしの目の前の椅子に彼座りながら彼は話を続ける。
『にしても第2隊長閣下も趣味が悪い…駄犬に負けて腸が煮えくり返ってるだろうから復讐の機会を用意したとかそういうつもりなんだろうが…「新品」のままにしておきますってのは生々し過ぎるだろう…俺は別にそういう趣味は無いんだが…配慮が斜め上過ぎて笑えるよ…胸糞悪い』
そう言う彼の顔はどうみても真顔だ。とても「笑える」なんて思っているようには見えない。
『はぁ…虜囚相手に無駄話をし過ぎたか。そろそろ始めよう。レイヴン、再教育の時間だ。といっても利き腕が折れてるから手荒なことは出来ないんだがな』
そう言って彼からの再教育が始まった。彼は彼自身が言ったように、わたしに暴力は振るわない。ただ…
『ーーーーー』
やめて
『ーーーーー』
ききたくない
『ーーーーー』
いやだ
『ーーーーー』
あなたがわたしにそんなこというわけない
『ーーーーー』
たすけて…おるくす…
ただ…彼はわたしの事を罵るだけで、でもそれがわたしにとっては耐え難いものだった。わたしを励ますエアの声も頭に残らない。
来る日も来る日も彼の言葉に打ちのめされて…
わたしの中で、何かが砕けた気がした。
精神攻撃は基本
壁(レッドガン√)、ヒアルマー採掘場(封鎖機構√)、そして今回…落下からの生存に定評があるオルクスです。しぶとい。
オルクスに蔑称を付けたい(他に案があれば活動報告にコメント頂けると助かります)
- オルクズ
- オルカス