さて、621と一緒に旧宇宙港でルビコニアンデスワームくんの脅威を目の当たりにしたことでアーキバスとベイラムは停戦協定を結び、一時共闘についての交渉を進めている。
そんな中で俺が何をしているのかといえば旧宇宙港の防衛だ。621は恐らく多重ダム防衛に向かったのだろう。他にこの仕事を任せるに相応しい傭兵もいなかったため、ちょうど手の空いていた俺とラスティでこの作戦を行うことになったと言う訳だ。
基本的にヴェスパー部隊長が同時に出撃するときはホーキンスとペイターのように2脚あるいは逆関節と4脚で組むのだが、俺はメーテルリンクと、ラスティはオキーフとペアになることが多いのでこの組み合わせは結構珍しかったりする。
「やぁ戦友、久々の協働だな。助け合いの精神でいくとしよう」
『よろしくお願いします、第4隊長殿』
手数に優れ単騎でレッドガン迎撃を達成出来るラスティのスティールヘイズと単発の火力に優れる俺の機体であればそこまで相性は悪く無い筈だ。惑星封鎖機構相手にも遅れを取ることもないだろう。
[旧宇宙港を不法占拠した企業勢力に告ぐ
ただちに武装解除し封鎖圏外へと退去せよ]
[これ以上の進駐は惑星封鎖機構への
宣戦布告と見なし例外なく排除対象とする
繰り返す例外はない]
旧宇宙港の建物の上で待機する俺たちが、惑星封鎖機構残存艦隊の接近を捉えた。
「封鎖機構が動き出したか…連中も相応の戦力でこの基地を奪還しに来るはずだ」
『強襲艦はお任せを、空は俺の狩場だと思い知らせてやります』
地上のLC、MTに向けてラスティが飛び出したのと同時に俺もホバリングモードに移行して強襲艦に接近開始。頭空力な機体を卒業したとはいえ、俺の立ち回りが変わった訳ではない。お高く止まった役人たちの更に上をいってやろう。
既に高度は足りているので、甲板の砲台による砲撃を左右に揺さぶって躱していく。気分はカーマンライン突破だ。流石にアーキバス要撃艦隊ほどの数ではないしENも有限だが。地上にいるラスティとMT部隊を守る為にも手早く片付けよう。
砲台は無視して艦橋に向けてレーザーキャノンとプラズマライフルを発射。こういうデカブツにはプラズマ爆風が良く刺さる。艦橋を破壊されたことで動力系統に誘爆したことで撃沈。ほんとにどういう作りしてるんだよ…
まぁご存知の通り、上を取られるとあまりにも脆い戦艦なので、あっさりと一掃。下からの攻撃が効かないことは上の防御をおざなりにする免罪符じゃないぞ。まさしく破綻した設計の妥当な末路…
『強襲艦の対処完了、そちらに合流します』
「やるな、戦友。背中を預けるに相応しい」
墜落していく強襲艦の上でENを回復し、爆発前に離脱してラスティ達の元を目指す。ラスティ達の反対側、封鎖機構のMT部隊の背後から攻撃を仕掛けて挟撃。まぁ、MTやLCとの戦闘程度についてはわざわざ語るまでもないだろう。
『ひとまず片付いたようですね』
「…いや、どうやら本命のお出ましらしい」
ホバリングモードを解除しラスティの隣に着陸。彼の示す方角から、何かが接近してくる。あれは…
『特務機体カタフラクト…』
お前かーい!カタフラクト、強固な装甲に包まれた 封鎖機構最強(笑)の地上兵器だ。実際木端傭兵やMT相手には強いのだろうが…
「コード23 ヴェスパー部隊のAC2機を確認。これより交戦を開始する」
カタフラクトの装甲は意外とザルで、前方であれば上からの攻撃も通る。要するに4脚であればかなり攻撃を当てやすいのだ。突進後の隙に武装を放ち、ラスティの補助もあってあっさりスタッガー。俺が総攻撃を仕掛けた後、スティールヘイズのレーザースライサーがコアMTを切り刻む。
「くっ…!我々の封鎖を拒む企業勢力にはここで消えて貰う!」
収束レーザーキャノンをクイックブーストで回避して上から一方的に高火力を押し付ける。先程のレーザースライサーも含めて、EN耐性に欠けるカタフラクトにはかなりの痛手だろう。レーザーキャノンによって再びスタッガーだ。
『第4隊長殿、仕上げは頼みます!』
「見せてくれる…!」
レーザースライサーによる連撃で、カタフラクトはその機能を停止した。あの損耗具合を見るにコアMTを取り替えても再利用は出来ないだろう。作戦を果たしつつアーキバスの戦力増強を防ぐとは抜け目ないな。
『お疲れ様でした、第4隊長殿』
「流石だな…戦友」
後片付けはMT部隊に任せて帰投。アイスワームくんとの決戦も近いだろうがどうなることやら…とりあえず今はスネイルに報告だな。
さてさて、アイスワーム討伐に向けたブリーフィングは終了。作戦のメンバーは本編と変わらず、総指揮G1ミシガン、現場監督スネイル、オーバードレールキャノンの射手V.IVラスティ、弾幕要員チャティ、ニードルランチャー担当G13レイヴン、墓穴を掘ったG5イグアスという編成だ。スネイルは俺にスタンニードルランチャーを持たせるつもりだったらしく、
「あと決まっていないのは スタンニードルランチャーを誰が当てに行くか…」
「ここは我がヴェスパー部隊から…」
「最前線で殴りに行く係なら最初から決まっている!G13!!話は聞いていたな?愉快な遠足の始まりだ!!!」
とミシガンに話を遮られて苛立っていた。まぁベイラム主導の作戦にアーキバスが出しゃばり過ぎるのもどうなんだという話だし、俺個人としても「やってられるかよ…俺は遠巻きに見物させてもらうぜ」という考えなのでこれで良かったのだと思う。俺の機体とアイスワームの相性自体は悪くないんだけどね。
アイスワーム撃破作戦から外された俺は封鎖機構の執行部隊との交戦による主力兵器の鹵獲作戦に参加することになる。ブリーフィングを終えて自室に戻ろうと廊下を進む俺の元にラスティが現れた。
「戦友…君と話がしたい、ついて来てくれないか」
『…了解です、第4隊長殿』
人気の無い場所で彼と向き合う。何について話すつもりかは想像がつく。未踏領域探査の直前辺りかと思っていたが…思ったよりかなり早かったな。
『それで…話とは?』
「このラスティには…ルビコンで為すべきことがある。ルビコンは常に脅かされ…掠め取られてきた。その不条理を止めなければならない…!」
ラスティは自分の身分と目的を語っていく。以前言った通り、俺は一応ヴェスパー部隊の中では職務に忠実という扱いを受けている。自分の事を俺に話すのはリスクが高い筈だ。
『…つまり第4隊長殿は解放戦線のスパイだった、という訳ですね。それを何故俺に?』
「オルクス…いや、“ルビコニアンのアクス”。君にも力を貸して貰いたい」
自身の正体を明かすリスクと天秤にかけてそれでも俺を誘った理由は…やはり俺のアーキバスに対する不満に気がついていたのだろう。よく考えてみれば俺、ラスティやオキーフの前だと仕事多すぎ!だの実弾使いたい!だとかの本音を普通に漏らしていたからな。
『…ルビコニアンのアクスは井戸に落ちて死んだ。そしてここに居るヴェスパー第9隊長オルクスには…君と同じように、アーキバスで為すべきことがある』
「そうか…ならば…」
説得が失敗に終わったと悟り、俺を消す体勢に入るラスティを手で制して話を続ける。
『ここからは、ルビコニアンでもV.IXでもないオルクスとしての発言になるのだが…俺の問題を片付けたその時には、真に君の戦友となりたい。そう思うよ』
俺は、ルビコン解放戦線に与する決断を下した。
というか、ラスティ俺のこと誘いたいんだろうなぁ…と察した時点で俺はその気だったんだけどね。つくづくスパイには向いてない男だ。
これをヴェスパールートと言い張る勇気
オルクスに蔑称を付けたい(他に案があれば活動報告にコメント頂けると助かります)
- オルクズ
- オルカス