ヴェスパー部隊の第9隊長である俺は建前としてアーキバス民生部門を預かっていたのだが、スウィンバーンが再教育センターに送られたことで会計責任者の仕事も請け負うことになってしまった。
俺が会計責任者として仕事を始めてからどんどん出てくるスウィンバーンの不正の証拠。その後始末に追われたり扱いやすいフロイトとしてスネイルに仕事を押し付けられたりで俺の仕事量はとんでもないことになっている。
俺も一応ヴェスパー部隊の中では職務に忠実という扱いを受けているのだ。下手なことすれば再教育センター行き、忠実なだけだとスネイルに使い潰される…マジで終わってるなアーキバス。そんな環境で仕事を増やすんじゃねえ殺すぞ、なんて言えるはずもなく…
『報告は以上です』
「全く、駄犬に命乞いをして部隊の品位を下げるだけに飽き足らず部隊の資金を着服していたとは…第7隊長への再教育は徹底的にやるとしましょう。ご苦労でした、オルクス」
さて、
「それと、貴方には私から報酬を用意しています」
はぁー…?まだなんかあるのかよ?私からの仕事を受けられること、光栄に思いなさい、的なアレか?また仕事なのか?また仕事なんだな?
「貴方はこのアーキバスにとって替えのきかない人材であることを自覚しなさい。あんな狂ったシュナイダーの試作機で事故にあってもらっては困るのですよ」
なんか俺の評価高くない?スネイルがそんな率直に評価することあるんだ…それDVの手口じゃん。きも、せめて女になってから出直してきて欲しい。
「そこで貴方に新しい機体を手配しました。私がアーキテクトを勤めた機体に乗れること、光栄に思いなさい」
余計なことすんなオールバック鬼畜DV眼鏡カタツムリ野郎。確かにあの機体はアレだけどさぁ…!乗り慣れてきたタイミングで別の機体渡すのは違うだろ!空気止めやカス、アホ死ね。V.IIうんこ。
『…身に余る光栄です!』
はぁ…でも俺に拒否権は無いんだよなぁ…営業スマイルで感謝を伝え、機体に関するあれこれを受け取る。きっとこのあとはフロイトと模擬戦コースだなぁ…安息の地はどこ…?
「やぁオルクス、君の良き戦友ラスティだ」
うわでた。どう考えても俺のことをルビコン解放戦線に誘う気満々のV.IV…ラスティだ。メーテルリンクのオルクス総受け本事件の直後から俺に向ける目つきが変わったせいでナニカに目覚めてしまったのかと一時は思ったが、流石に俺の考えすぎだろう…そうであってくれ。もしもラスティに性的な目で見られていたら俺の精神は耐えられない。
…そういえばラスティ男装の麗人概念とかもあったな。メスケモにされたりガチ狼にされたり忙しい奴だ。
『第4隊長殿お疲れ様です。この後お時間は空いていますか?』
「構わないが…もしかして模擬戦か?そういうことなら私に任せてくれ」
『はい、閣下に新しいACを賜ったので第1隊長殿に見つかる前に試運転に付き合って貰えればと』
俺の発言に好戦的な笑みを浮かべながらラスティが応じる。
「…それは第1隊長が戻ってくる前に私を倒すという挑発と受け取っても良いのか?」
…これ、言葉選びガバったな。とりあえずそれっぽい笑みを浮かべておく。まぁ、本気で来てもらった方がありがたいし…(震え声)
…そこの陰で鼻血を流してるメーテルリンク、後で覚えてろよ。総受け本事件でアーキバス中の腐女子を炙りだして味をしめたのか、
「大企業アーカイブ・コーポレーションのベスパー部隊の第9隊長アクスは、ある日第4隊長アッシュがスパイであることを知ってしまった結果、彼の共犯者になってしまう…」
とかいうあらすじの、なぜかラスティの正体をぶち抜いている新刊をリリースしやがって…お前が1番部隊の品位を損ねているのでは?
というか秘密を暴いたのが俺なら普通俺が脅して攻めに回らないか?総受け本といいメーテルリンクの中の俺はどうなってるんだよ。あとナチュラルに本名を当てるな。
気を取り直してシミュレータに入り、スネイルから受け取って機体データを確認…
うん…いかにもヴェスパー部隊って感じの機体だ。2脚、逆関節ACとの協働を想定した4脚…俺の知り合いで思い当たるのはフロイト、スネイル、ラスティ、ペイター、メーテルリンク…一応621もそうか。
その4脚に高火力長射程の武装を載せたコア理論に頼らない接敵以前での封殺を目的としたFCSか…以前の頭空力のように敵を振り切れる機動力はないから単騎で立ち回るのは厳しそうだな。
これといって不満はないが…強いて言うとしたらこのバケツ頭を載せる余裕で少しEN負荷を削って貰いたい所だ。
ラスティの準備も整い、戦闘開始。ブーストキックを繰り返してENを節約しつつ高度を稼ぎホバー移動に切り替える。
距離を詰めて来るラスティにプラズマミサイルで圧力を掛け、引き撃ちで立ち回るが…ナハトコア、アルラ、ホクシの組み合わせで回避能力に優れるスティールヘイズに対してこの武装だと相性が悪いな…やっぱりペアを組んでの横槍運用が本命か。
回避を多用したことで上昇に回すENがなくなったスティールヘイズにチャージプラズマライフルを発射。レーザーキャノンと双身式レーザーライフルで追撃を加えていく。スタッガーには一手足りないか…
まだ管理が甘くEN切れを起こした俺にラスティ急速接近。ランセツRFとサンプでスタッガーを取り、レーザースライサーで一気に削り取られて俺の敗北だ。良いなぁ…実弾武器。
「より高く飛んだのは私のようだな」
『…戦闘はこれが初めてですから。次は勝ちます』
「まだ時間はある、このまま2フェーズ先取制といこうじゃないか」
…勝ってからそのルール後出しするのズルくない?やるけど。
さて、2フェーズ目は俺が接敵以前での封殺を実践し勝利。3フェーズ目として逃げる俺と追いかけるラスティという構図が出来上がっていた訳だが…
「仲間はずれはよくないな、俺も入れてくれないと」
「『!?』」
「スネイルが組んだACか…第9隊長、早くやらせてくれ!」
スティールヘイズがロックスミスのレーザーブレードによって一刀両断される。フロイトさぁ…試合に乱入はダメだろ…
『第1隊長殿…!』
「もう我慢出来ない…スネイルが来る前にやるぞ」
問答無用かよ…こうなったらもう戦わない限り満足はしないだろう。やることは変わらない。後方に引きながら一方的に撃ち抜く…!
「…スネイルらしい堅実でつまらない機体だな、だが第9隊長…アクスであってるか?お前の動きは面白い」
『オルクスです』
なんで名前間違いでピンポイントに本名を当てるんだよ…メーテルリンクもそうだったけどさぁ…!
『そうだったか、悪いなオルクス。それはそうとお前…ホバリング状態で小刻みに左右へ動かすことで偏差射撃を躱しているな?』
…もうバレてる!?化け物かよ…!これで真人間ってのが末恐ろしいな。
「お前の戦い方…まるで雛鳥といった感じだ…まだ羽ばたくには足りないものがあるな…」
ヴェスパーは相手を見極めるような奴が多いな。ミシガンの「アーキバスのヴェスパーは評論家でも務まるようだな」という皮肉もあながち間違っていないのかもしれない。
4脚だとレーザードローンが振り切れない…スタッガーを取られてそのまま俺の敗北だ。
「まだ物足りないな…2回戦といこう、動けよ」
「フロイト…何を遊んでいるのです」
「お、スネイルか。お前の組んだ機体、結構楽しめたぞ」
「…当然です、私がオルクスの為に用意したのですかr」
「最も、オルクスとの相性は悪そうだったがな」
「はい?」
「まずは………」
スネイルとフロイトが言いあっている隙にラスティと共に撤退。今だけはお前に感謝するよ。
◯スネイル
胃に優しいオルクスを名前呼びするレベルで気に入っている
オルクスに近接持たせるの止めよう委員会副会長
◯ラスティ
ゲイヴンか、ノーマルか、お前女だったのか!?なのかは本編では触れないので読者の解釈に任せます
番外編でヤンデレ女ラスティとか書くのも楽しそう
◯フロイト
あいつの動きおもろい
◯621
オルクスに近接持たせるの推奨委員会副会長
オルクスとの協働にかけてわたしの右にでるものは居ないと自負している
尚、彼からは「一応」呼ばわりの模様
オルクスに蔑称を付けたい(他に案があれば活動報告にコメント頂けると助かります)
- オルクズ
- オルカス