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伊藤博康のテツな“ひろやす”の鉄道小咄

「特急」「新幹線」の言葉の語源は?:鉄道“超”基礎知識(18)

2019年7月25日

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長良川鉄道のディーゼルカーを「電車」と呼ばれてしまう…


■なんでも「電車」と呼ぶ習慣
当たり前のように使っている言葉に、意外な意味があることがあります。

たとえば「電車」。かつては都市部でしか使われなかった言葉でした。というのも、電車は都市部の通勤電車か市内電車がほとんどだったからです。

その名残で、地方に行くと今も「電車」と「汽車」を使い分けているケースがあります。「電車」は地元の電鉄会社線か市内電車で、「汽車」は旧国鉄線ということがほとんどです。これは、国鉄の電化が遅れて、電車といえば電鉄という地域が多かった名残です。

山陰の出雲市駅に近いところにはかつて、JR山陰本線と一畑電車の共用踏切があり、警報機に「汽車」「電車」と書いてありました。「汽車」が点灯すると山陰本線、「電車が点灯すると一畑電車がやってくるのです。

「汽車」と「電車」の表示があった島根県の大津里道踏切


ところが、いつの間にか非電化線を走る列車も「電車」と呼ばれるようになりました。いまや「電車」は、鉄道や軌道を走る車両の総称として使われるようになっています。

テレビの旅番組で、若手タレントが蒸気機関車をみて「SL電車!」と言い放ったのには流石に仰天しましたが、そのまま放映をしたところをみると、テレビ局としても特に問題なしとしたのでしょう。

鉄道好きには受け入れがたく思う現状ですが、ここまで普及すると、いずれ広辞苑の「電車」の項に、鉄道車両をさす総称といった解説文が追加されるのかも知れません。なにせ、言葉は生き物です。


■「特急」は「急行」があったためにできた
日本の鉄道では、優等列車に「特急」「急行」「準急」「快速」などいろいろな種別があります。名鉄の「快速特急」や近鉄の「快速急行」など、種別を組合せた例あります。なかには「特別快速」を「特快」と呼ぶ首都圏の中央線や、「快速特急」を「快特」と称する京浜急行電鉄などの短縮例もあります。これらの列車種別は、さまざまな優等列車に対応して編み出されたものです。

このうち「特急」「準急」は、「急行」があってはじめてできた急行ファミリーということはご存じでしょうか。

 特急=特別急行
 準急=準急行

がもともとの種別です。

急行列車は、いまの山陽本線を建設した山陽鉄道が、瀬戸内海の舟運への対策として1894(明治27)年に神戸~広島間で運転したのが最初です。その後、急行列車のなかでも速い列車を「最急行」と呼ぶようになり、1912(明治45)年には官営鉄道(後の国鉄)が新橋~神戸間の「最急行」を新橋~下関間に延長する際に「特別急行」と名付けました。これが特急列車のはじまりです。

1929(昭和4)年になると、特急に列車名をつけるようになり、新橋~下関間の特急列車は「富士」となづけられました。

「特別急行券」と書かれた切符(右)と、「普通急行」と書かれた切符(左)


上の画像は、右が1974(昭和49)年の「しなの」用特急券ですが、最上部に「特別急行券」と記してあります。左は1977(昭和52)年の東京周遊券の裏面です。「普通急行」と、いまでは見られない表記がされています。


■新幹線は、新・幹線

新幹線は世界的に「SHINKANSEN」として知られているが、語源は意外と知られていない


誰でも当たり前のように知っている新幹線ですが、なぜ新幹線というのでしょう。

かつての国鉄で、特に重要な路線を幹線、それに継ぐ路線を亜幹線と呼んでいました。東海道本線・山陽本線などは幹線で、中央本線は亜幹線です。

その幹線である東海道本線が戦後、輸送量の増加に対応できなくなったため、並行する新たな幹線を増設することになりました。復線を複々線にする案と、別線を新設する案が議論されましたが、かねてからの広軌化(標準軌化)論を実現するチャンスとして、別線での建設が決まります。

この標準軌により新設する幹線を、新・幹線と位置付けて「新幹線」と呼ぶようにしたのです。


◇今回のまとめ◇
・特急は特別急行の略
・新幹線は「新」+「幹線」

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