〔ウォルター!右舷ブロックの状況は!?〕
〔無人ACが6機、いずれもヴェスパーのデッドコピーだ〕
〔そっちもかい…笑えないねえウォルター!〕
…さて、イグアスに腕を吹き飛ばされ、強がりながら撤退した俺は現在オーバーシアーに雇われてザイレムに殲滅戦を仕掛けるオールマインドの手駒を排除している。
621が失踪した以上彼らには手駒が足りていない。もう少し渋るかと思ったが、案外あっさりと雇って貰えた。
イグアスも621も強くなったものだ…オールマインドの動向も軽く探ったが、621はスリープさせずにイグアスと訓練をさせているらしい。彼らも競いあって更なる高みへ登っている。今回は強がりを通せたが、次に会えば勝てると断言出来ないだろうな。
俺のデッドコピーを仕留めてオーバーヒートしたレーザーショットガンをウェポンハンガーにしまい、バーストハンドガンを取り出す。
腕部とハンドガンを失った俺は思い切って機体構成を変更した。もはや621とイグアスにダケットは通用しないだろうという考えもある。
これまでのようにコーラルジェネレータのEN容量と復元性能にものを言わせてクイックブーストを吹かすことは出来ないが、短期決戦においてはこちらの方が上だろう。
〔オルクス、そちらはどうだ〕
『ひとまずデッドコピーは全て片付けたが…まだそちらには向かえそうにない』
ウォルターからの通信に返答しながら、飛来してくる敵機を見据える。
「見つけたぞ…独立傭兵オルクス…!」
俺に向かってレーザースライサーを回転させながら突撃するのは角張ったデザインの軽量二脚AC、頭部とコアは俺の機体と共通している。
『待っていたぞ、“ランク9”ラスティ』
ALBAフレーム一式…スティールヘイズ・オルトゥスだ。恐らくオールマインドがオーバーシアーのことをリークしたのだろう。
「ルビコンは常に脅かされ…掠め取られてきた…その不条理を止めなければならない…!」
振るわれたレーザースライサーを後方へクイックブーストして回避。振り抜いた後隙に収束レーザーを撃ち込む。
「軽いな…やはり貴様は、死ぬことも…殺すことも恐れていない」
軽い、というのは引き金のことか、あるいは意志なのかは知らないが、どちらにせよラスティの言葉は的を射ている。
『…そうだな』
正直言って、俺はこの世界の人々に対してゲーム感覚が抜けていない。ナイル、キング、シャルトルーズ、オキーフ、ミシガン、スネイル、フラットウェル、フロイトに名前も知らない人々…大勢殺したが、特に感じるものは無かった…フラットウェルを除けば、既にゲームで殺したことがあるから。
「貴様は…何故フラットウェルを殺した…!」
『…彼を殺せば、君が来るだろう?その新型に乗って』
自分の都合が良いように話が進むなら殺す。それだけだ。
「貴様…!」
ニードルミサイルをクイックブーストで回避。上下に照準を揺さぶりながらハンドガンで衝撃を蓄積させていく。
「やはり貴様はルビコンを脅かす危険因子だった…この新型で終わらせる…!」
『良い機体だな…軽くて、安定していて、出力も高い』
「…ALBAをどこで手に入れた?」
わからん。カーマンライン突破をクリアした後に貰えるから…
『さぁな…パイロットを殺して鹵獲したんじゃないか?』
「何の話だ…!」
ALBAをお披露目するのは今回が初めてである以上俺の言葉は答えになっていない。困惑し、憤るのも無理は無い。
スタッガー。レーザーダガーで3連撃、連撃中にチャージしておいた収束レーザーでラスティを貫く。成功率は微妙だったが、リペアキットは間に合わなかったようだな。
「まだだ…!私はルビコンの夜明けを拓いてみせる…」
ターミナルアーマーが発動。リペアキットを2つ消費しているようだ。上空に飛び上がり、自由落下を交えながらターミナルアーマーの消失を待つ。
「オルクス、貴様はどうだ?」
『ルビコンに眠る脅威を焼…』
「違うだろう…!」
流石に分かっているか。
『………』
「理由なき強さほど危ういものはない…貴様を見ているとそれを実感する…」
『強くなりたいだとか、勝ちたいが理由じゃ駄目なのか』
…今の俺には強さしか残されていない。だからこそ血を吐いてでもそれを磨きあげてきたんだ。
「そういう所が危険だと言っている…!」
ターミナルアーマーが終了。流石に衝撃も蓄積してきたな…実弾オービットのオーバーヒートを見てから、ニードルミサイルを回避せずに受け止めてスタッガー。
レーザースライサーが直撃するタイミングでアサルトアーマーを発動。ジェネレータを変えた為威力は低下しているが、スティールヘイズをスタッガーに持ち込むには充分過ぎる。
再びレーザーダガーによる3連撃から収束レーザーを放つ。今度は撃破前にリペアキットが間に合ったか…俺もリペアキットを使用して仕切り直す。リペアキットを使うのは随分と久しぶりだ。
『強いな…ラスティ…だが、まだ負けられない』
さっきも言った通り、俺には強さしか残されていない。
それなのに…既に俺の実力は頭打ちを迎えている。
これ以上機体制御を磨いた所で生身の身体では負荷に耐えられない。強化手術を受けられるツテもない。
時間を忘れるほど楽しかったACの特訓を、いつしか惰性と義務感で熟すようになった。
ACに乗るのは楽しいと自分に言い聞かせて、ライセンスを維持するためだけに意味もなく人を殺す。
ーー621と戦いたい。621を越えたい。
…621に勝った後、俺は何をすれば良い?
もう俺を殺せるなら誰でも良かった。気まぐれにイグアスを拾う。少しずつ自分の殻を破っていくイグアスが妬ましくて、際限なく力をつけていく621が羨ましくて。
『負けられないんだ…彼らと戦うまでは…』
誰でもいいとは言ったけれど、やはり最後にイグアスか621の全力は見届けたい。
ラスティの攻撃を凌ぎながらハンドガンを連射して再びスタッガー。作業のようにレーザーダガーからレーザーショットガンを放つ。
『だから死んでくれ、ラスティ』
収束レーザーが、オルトゥスのコアを貫いた。
〔ウォルター!後方宙域に敵影…〕
〔あの機体は技研の…いや…!〕
…通信…封鎖ステーションへ行かないと。
「よう…待ってたぜオルクス…」
『…イグアス』
ウォルターとカーラはザイレムでALLMINDと交戦している。封鎖ステーションに居るのは俺とイグアスだけだ。
『…機体越しでも分かる…良い顔になったじゃないか』
「そういうてめえは随分と湿気たツラしてんな…」
『…楽しませてくれよ』
戦闘開始だ。
◯オルクス
火種を撒き散らすルビコンの害獣
理由を失った強さ
直近に自殺の予定がある者
たまにはお前も曇れ
◯ANGELS ANTHEM/アンギラス・アンセム
【挿絵表示】
短期決戦と言ってわざわざ150ジェネを載せたのにリペアカットが安定しないというアホみたいな欠点を抱えている
コアをエフェメラに変更するとEN供給効率にかなり余裕が出るのでブースターをALULAにしたりニードルガンを持ったり出来る
オルクスに蔑称を付けたい(他に案があれば活動報告にコメント頂けると助かります)
- オルクズ
- オルカス