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「チーム友達」と「KAMIGATA BOYZ」から考えるカウンターカルチャーの重要性

2024年の音楽シーンを振り返った時、まだ半分も終えていない現時点ではありますが、もう既に今年を代表する曲があります。

それが、千葉雄喜の『チーム友達』と、KAMIGATA BOYZの『無責任でええじゃないかLOVE』の2曲です。

あくまで僕目線での話にはなりますが、この2曲が持つパワー、文化的意義はものすごいと思っています。

どちらの曲にも共通しているのが、カウンターカルチャー的性質を持っているということ。

どういうことか。めっちゃざっくり言うと、

「今まで(最近)はこうだったけど、やっぱりこっちがいいよね!」

的なことです。

この考えについて、一曲ずつ順に解説していきたいと思います。
ジャニーズとヒップホップをこよなく愛する30代男性が、音楽的な視点というよりかは、エンタメ社会学的視点で考察していきます。



「チーム友達」

遊びから生まれた“チーム友達”

ラッパーの千葉雄喜により、今年の2月13日に配信が開始された『チーム友達』。

個人名義の曲だけではなく、その後もあらゆるラッパーがこの『チーム友達』のトラックを使った曲をリリースし、さらには現在SNSやTiktokで多くのダンス動画がバズるなど、もはやヒップホップの枠を超えたムーブメントになりつつあります。


各地方ごとに有名ラッパーを集めて繰り出される楽曲を聴いていると、まさに「全国にいる仲間がみんな友達」という世界観を、曲を作った当初から表現するつもりだったのかと思いきや、これは千葉雄喜と大阪出身のラッパーJin Doggが遊びの延長で作ったものだそう。

その場のノリや衝動とかが、いかに大事かがわかりますよね。
戦略的ではないものがこんなにヒットを生み出すんですから。
2021年に「KOHH」名義を捨て引退したにもかかわらず、千葉雄喜という本名でこの曲を引っ提げてカムバックしたことからも、突発的で、戦略的ではないことが理解できます。


リミックスしやすいシンプルな作りのトラックにするなど、他のラッパーが遊べる“余白”を持たせたこともヒットの要因ではありますが、大事なのはこの曲の音楽シーンにおける意義です。

それを知るには、まず日本のヒップホップ界で何が起きていたのかを知ることが鍵になります。


ディスやビーフが”フリ“になった

去年の12月に舐達麻がリリースした『FEEL OR BEEF BADPOP IS DEAD』という曲。
この曲には、長年揉めていたBAD HOPに対するディスがぶちまけられています。

BAD HOPのリーダー的存在であり、揉め事の中心人物であるYZERRも約2ヶ月後にアンサー曲『guidance』を出します。


ラッパー同士が対立を起こし、思いを曲などで表現し合うことを「Beef(ビーフ)」と言い、これはヒップホップの文化の一つとされています。

過去にもKREVAとMACCHO、 TERIYAKI BOYZとSEEDAなど有名なビーフが勃発していますが、若者から絶大な人気を誇る、舐達麻とBAD HOP(今年2月に解散)という2つのグループが真っ向から対立しているわけですから、人々は注目したわけです。

(この2組のビーフの詳しい経緯は、ネットで調べてみてください。あと普通にこの2曲はめっちゃかっこいいです。2組それぞれの良さが出ています。ステーキ食ってるのとか最高やし、テリヤキボーイズの引用とかも出てきます。東京ドームの解散ライブ直前にリリースしたYZERRのプロデュース能力とかもえぐい。)


日本のトップオブトップが、ヒップホップの伝統やマナーに基づいて喧嘩している状況。
この先どうなんねん、、というゴタゴタを一気に回収したのが千葉雄喜の『チーム友達』なのです。

少なくとも僕の目にはそう映りました。
「全部持っていくやん(笑)」っていう感じです。

ヒップホップが長い歴史の中で培ってきた、ディスやビーフという文化を“フリ”にして、「友達」を前面に押し出したわけです。

まあ、そんな背景を全員が理解しながら聴いている訳ではないですが、逆に言えばそれこそがこの曲の強みなのです。

「難しいこと言わんでええねん。とにかくみんなチーム友達やねん」のマインドだからこそ、ヒップホップを深く知らない人たちにも刺さったと思うのです。


計算して作られていないにも関わらず、タイミング的にも、ヒップホップが持つ性質的にも、カウンターの役割を持つことになった『チーム友達』。

仲間たちと一緒に歌うこの曲は、大袈裟かもしれませんが、対立や反抗の図式が脈々と受け継がれてきたヒップホップの歴史において、ある種の到達点ともいうべき楽曲に成り得たと思います。



「KAMIGATA BOYZ」

ジャニーズ魂、ここにあり

TERIYAKI BOYZ(※RIP SLYMEのRYO-Z、ILMARI、m-floのVERBALなどで結成ヒップホップクルー)に似た名前の「KAMIGATA BOYZ」は(意識したのか?)、STARTO ENTERTAINMENT(旧ジャニーズ事務所)の関西デビュー組である、SUPER EIGHT、WEST.、なにわ男子の3組で結成されたユニットです。

それぞれのグループの代表曲を合わせた、『無責任でええじゃないかLOVE』というタイトルの曲が、5月3日に発表されましたが、この曲が出る4日前にYouTubeにアップされたティザー(「焦らす」という意味らしい)動画がこちらです。


この時点だと、おそらくデビュー曲はダンスがメインの、クールでカッコよさ重視のテイストになることがイメージされますよね。
ファンもこれはこれで楽しみだったと思います。

しかし、です。
正式に発表された『無責任-』はこんな仕上がりでした。

すごいですよね。控えめに言って最高です。鳥肌すら立ちました。

蓋を開けてみると、目の前に現れたのは、旧来のジャニーズアイドルたちが大切にしてきた、伝統の“トンチキソング”だったのです。


ここ1〜2年で激変したアイドル界。
“帝国”の崩壊と共に、現れはじめた他の男性グループの勢いは凄まじいものがあります。
それはK-POPだけではなく、国内にも数多く存在します。

極めてレベルの高いダンスや歌唱力を披露する彼らからは、これまでの男性グループの概念をも変えるような動きすら感じます。

「アイドルとはーー。」

この問題について音楽業界全体で考えるようになった結果、「旧ジャニーズのグループも、新たな関西のユニットもそっちで行くのか。。」と受け取れるティザーを見せられたと思いきや、

「やっぱり、こっちで行くのね!」

というカウンターに自ずとなったわけです。


関西だからこそ表現できた思い

アイドルソングのヒットメーカーであるヒャダインが作詞・作曲ということで、流石の一言に尽きる仕上がり。
コンセプト通り、頭を空っぽにして歌い踊れるトンチキソングとは言え、要所要所で胸を打つ歌詞があります。

特にサビの、「向かい風 なんぼのもんじゃい!」からは、聴く者を勇気づけるだけではなく、事務所が辿ってきた道程そのものを本人たちが叫んでいるように思うのです。

「いろいろあったけど、やっぱり俺たちはこういうスタイルで、これからもファンの方々に喜んでもらうねん!」という意思表明に他ならないのです。


そして、こういったバックボーンを背負いながらも、しっかりとエンタメに昇華出来たのは、関西のグループだったからだと思います。

真面目すぎず、笑いを入れながら、明るく前向きに表現する。

これは関西の彼らでしか出来なかったと思います。
旧ジャニーズの精神を、彼ら関西が引き受けたと言っても過言ではないはずです。

そんな一曲が、エイトのデビュー20周年、WESTのデビュー10周年、そしてAぇ!groupのデビュー年に世に放たれたというのが非常に感慨深いですね(ちなみにAぇ!のメンバーは声だけで曲に参加している)。

また、7月28日にCDの発売も決まりました。
ここに関しても、CDという旧来の形を愛し続けている人達を見捨てない優しさが伝わってきますね。


まとめ

チーム友達と比べると、KAMIGATA BOYZは戦略的、意図的に作られました。
曲が生まれた経緯や思いは違えど、やはり「カウンター」がもたらすパワーは半端ないと思います。

伝統としてはこうだけど、こっちもいいよね。
主流になりつつあるけど、やっぱりこっちだよね。

ディスやビーフじゃなく、友達と仲良く盛り上がるのが楽しい。
クールなダンスもいいけど、元気が出るアイドルソングも最高。

歴史やシーンの状況、バックボーンを知った上でカウンターを食らうと、やはりそこには感情が生まれます。
その曲が持つパワーに胸を打たれるわけですね。


今年の年末、紅白の舞台で、イカついギャングみたいな連中とキラキラ男性アイドルたちが、一緒に『チーム友達』を合唱する光景が観れるのかなぁ、、なんて妄想を今からしております。



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元芸人です。京都出身、大阪在住。 音楽、映画、ドラマ、スポーツ、エンタメ大好き32歳男性です。 京都検定、大阪検定持ってます。 好きなことを書いていきます🖋 書くお仕事などもお待ちしてます🖋
「チーム友達」と「KAMIGATA BOYZ」から考えるカウンターカルチャーの重要性|えいきち
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