【テレビの開拓者たち / 小仲正重】林修、坂上忍との出会いがテレビマンとしての転機に
1996年にフジテレビに入社。「ダウンタウンのごっつええ感じ」(1991~1997年)のADを皮切りに、「笑う犬」シリーズ(1998~2003年)、「ワンナイR&R」(2001~2002年)などでディレクターを経験し、現在は人気クイズ番組「ネプリーグ」(2003年~)、平日昼の“生ホンネトークバラエティ”「バイキング」(2014年~)のプロデューサーを務めている小仲正重氏。常にバラエティーの現場で番組制作に取り組んできた彼に、転機となった番組や人との出会いなど、自身のテレビマン人生を振り返りつつ、今後の展望も語ってもらった。
「WORLD DOWNTOWN」では国内のロケみたいな感覚で日本とタイを行き来してました(笑)
──小仲さんが、テレビマンとして初めて携わられた番組は「ダウンタウンのごっつええ感じ」だそうですね。
「そうです。もちろん最初は一番下っ端のADでしたが、当時の松本(人志)さんの“ゴールデンタイムに笑いだけで勝負するんだ”という気概は、僕にもひしひしと伝わってきて。すごく緊張感のある現場でしたね」
──「ごっつええ感じ」時代に学んだことは?
「『NOと言わない』ということでしょうか。『ごっつ』は、松本さんがゼロから考え出す発想を、プロデューサー以下、全スタッフが一丸となって形にしていくというような番組で。僕らADには、本当に毎日のように無理難題が課せられるわけです。『来週の収録日までに、1000人分を作れる巨大かき氷器を手配しておけ』とか、世の中に存在しないものも用意しなきゃならない(笑)。でも、そこで『そんなもの、業者さんも作ったことないですよ』なんて言ったらダメなんです。『できない理由を考える前に、何ができるか代案を出せ』と先輩方からよく叱られました。実際、そうやって出来上がった番組は、やっぱり面白かったですし」
──ダウンタウンさんの番組では、後に「WORLD DOWNTOWN」(2004年)も担当されています。
「ディレクターとしては、これまでの中で一番大変だった番組ですね。タイとフィリピンそれぞれで、実際に現地で起きた出来事やブームを撮ってきて、そのVTRをダウンタウンさんに見てもらうんですが、そのVTRというのが、ドキュメンタリーの体裁を取りつつ、“コント”になっているという、非常に凝った作りの番組で。とにかく、あのお二人を笑わせないといけないので、生半可なものは撮れないわけですよ。
僕はタイの担当ディレクターで、毎月4日間くらいタイに行って、3本くらいのロケコントを撮っていたんですが、演出を担当していた先輩の伊藤征章さんにそれを見せると、『全部ボツだな』と言われることも珍しくなくて(笑)。そうすると、すぐにまたタイまで飛んで撮り直すんです。ほとんど国内の地方ロケみたいな感覚で、日本とタイを行き来してました(笑)。現地での撮影も、何とか面白いものにしようと細かく演出をつけてたんですけど、僕があまりにもうるさく注文をつけるので、現地のコーディネーターがあきれちゃって、『あなたの言うことは、もうこれ以上通訳できない。自分でやってください』って(笑)。仕方なく、一生懸命身振り手振りでディレクションしているうちに、気付いたらタイ語がちょっとしゃべられるようになってました(笑)。そんな僕を見かねたのか、コーディネーターもまた協力してくれるようになって、最終的にはすごく仲良くなったんですけどね」
――(笑)。タイのVTRでは、所構わず痰を吐きまくる、傍若無人なレポーターのチャーリーという名物キャラもいましたよね。
「最終回で、タイとフィリピンのレポーターのどちらかを日本のスタジオに呼ぶとなったときに、チャーリーが呼ばれることになったんですよ。番組が始まった当初は、フィリピンのVTRの方が面白いと言われていたので、そのときは『勝った!』と思えてうれしかったですね」