生活に役立つものを作り、会社を通して人々の生活に貢献できる仕事をしたいというのが、学生時代の希望でした。さまざまな角度からそれが叶えられそうな会社を探してみたところ、ふと目に止まったのがテープメーカーの寺岡製作所。「製作所」と名前がついたところにものづくりの雰囲気が感じられ、何より心に刺さったのが、ホームページに書かれた「見えないけれど身近な」という一言。大学ではテープの研究というのはあまりされていない分野のようでしたが、調べてみると電子機器や車の内部にも使われ、見えないところで大きな役割を果たしているテープがあると知り、さらに興味を引かれました。私にとっては大学院の研究内容とは異なる世界でしたが、これまで関わったことのない分野の研究に好奇心と挑戦心のみを持ってゼロから関わるのは、とても面白いことではないかと思えました。まったく新しいフィールドを自分の力で切り開いていくワクワク感にかられ、この会社への入社を決めました。

製品開発部では電子機器向けのテープの研究開発に従事しています。私がチームで主に担当しているのは、様々な機器の内部で部品を固定したり、機器の周囲を固定して密閉したりといった用途に使われる強粘着性の両面テープです。研究開発のミッションはいくつかあり、お客さまや市場の要求を元に新しい粘着製品を開発することや、既存製品の構成を変えてバリエーションを増やすこと、そしてときにはお客さまと一緒にものづくりに取り組むこともあります。
忘れられないのは、2年目に携わったある新製品開発のプロジェクトです。お客さまも私たちもゼロから立ち上げる製品ということで、大きなやりがいを感じました。このプロジェクトのきっかけは、お客さまから、ある部材の固定用テープの開発依頼を受けたことです。先方へ訪問し、実際に試作品を見せていただき打ち合わせで意見交換をするうちに、さまざまな課題が浮き彫りになり、解決に向けてサンプルのやり取りを重ねました。お客さまは製品の設計を固めていく段階でしたので、単なるテープ開発にとどまらず、幅広くお互いにアイデアを出し合いながら開発を進めました。私は先輩と一緒に製品設計を担当しましたが、白紙の状態からお客さまへの提案を盛り込みつつ、製品を生み出すのは初めての経験。最終的に先方の求める性能のテープにすることができ、まさに自分が求めていた“挑戦”を形にできたものとなりました。

製品は一度作れば終わりという訳ではなく、定番品になれば常に改良を重ねていくことになりますが、これも大事な仕事です。今はテーマの一つとして粘着剤の改良にも取り組んでいますが、過去に研究を重ねて生み出され、完成品になっているものを越えるというのは大変なことです。特に難しいのはバランスで、どこかの性能を良くすると、どこかは悪くなるといったように、一筋縄ではいかないことが多くあります。バランス良く性能を高めた粘着剤をどうやって実現するか、大学時代には学んでいない分野の知識も必要なため、わからないときは周囲の人に助けてもらいながら取り組んでいます。
また、入社の面接時に言われたことでもあるのですが、これからの定番品を作っていくことが自分の仕事であると自覚しています。寺岡の強粘着テープといえばこれ、さらに「寺岡のテープじゃないとダメだ」と言われるような製品を生み出してこそ、入社時の目的を果たしたと言えるでしょう。そのためには、担当しているテープについては何でもわかるレベルにまでならないといけませんし、常にチャレンジ精神を忘れずに上を目指して頑張っていきたいと思います。