独立傭兵オルクスの3周クッキング   作:性癖解放戦線

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旧時代データ回収/続 悔いなき選択

ACfa買えました
NWG?戦前に新ホワイトグリントと戦えそうで嬉しい
まだジョシュアグリントにも勝ててないけど…


アイスワーム撃破/わたしだけが

『ナガイ教授の口述筆記…内容は…旧世代型強化人間についてか』

 

 オルクスから歌を教わりながら、機体残骸からデータを収集していく。コーラル逆流が起きたのが嘘のように静かな坑道を進むわたしたちの間には、鉄と硝煙の匂いとはかけ離れた穏やかな時間が流れている。

 

《あなたもまた、コーラル技術によって生み出された存在…でも…そうでなければ、私たちの交信はなかった》

 

 …エアの交信には、わたしが強化人間であることが関係しているらしい。オルクスやウォルターがエアを感知していないのはそういう理由というわけだ。エアが何者なのかについても、いずれ知ることができるのだろうか…

 

《取得できる情報は、もうなさそうです。あなたがルビコンの過去やコーラルについて、何かしら思いを巡らせてくれたなら…私としては嬉しいです》

 

「…かんがえて、みる」

 

 

 

 

 

『…レイヴン』

 

 坑道から出た所で、オルクスがわたしの名を呼ぶ。

 

『そう遠くないうちにこの惑星を出ることになる俺とは違って、君にはまだこのルビコンでやるべきことがあるんだろう』

 

 わたしの目的はコーラルを手に入れて人生を買い戻すこと、ということになっている。以前はハンドラーがそう言うからという意図しかなかったこの目的も、今ならば悪くないものだと思える。

 

『そんな君の仕事に、最後まで付き合ってやれなくてすまない』

 

「…うん」

 

『この惑星を取り巻く欲望や思惑は、俺のような独立傭兵の手に負える範疇を既に超えている』

 

 彼ほどの実力でも、企業達の力には敵わない…ということか。

 

『でも、君は違う。君ならば、どれほど過酷な使命も、終わりの見えないの戦いも乗り越えていけるはずだ』

 

 彼に出来ないことが、わたしにできるのだろうか…

 

『レイヴン。その翼が君たちをどこへ運ぶのか、見届けることは出来ないけれど…君の決断を応援しているよ』

 

「…ありがとう」

 

『偉そうで無責任な先輩面はここまで。別に永遠の別れって訳じゃないんだ』

 

 そう言う彼から、どこかの座標が送られてきた。ルビコンの星圏外を示している。

 

『この惑星を出たらしばらくはそこに滞在するんだ。君のやるべきことが終わったら遊びに来てくれ。そしたらまぁ…また歌を教えたり、美味しいものでも食べにいこう』

 

 彼が語るのはまだ見ぬ未来の話。今のわたしには想像もつかないことだけれど…人生を買い戻して、ハンドラーやエアと一緒に彼と会うのは…

 

「たのしみに、してる」

 

『あぁ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…戻りが遅いぞ、621。お前はすでに名の売れた傭兵だ、あまりウロウロ…オルクスも一緒だったのか」

 

 オルクスにここまで送って貰いガレージに帰投したわたしだが、またしても休息の指示を無視して無断出撃をしていたためハンドラーに叱られてしまった。

 

「うたを、おしえて、もらった」

 

「…なら良い。レイヴンが世話になったな、オルクス」

 

『こちらこそ、いつもレイヴンにはお世話になっています』

 

 

「次の作戦はこれまでとは規模が違う。621、お前はブリーフィングに参加しろ。それとオルクス、悪いがアイスワーム撃破に向けて機体構成を手伝ってやってくれ」

 

『それくらいならば任せてください』

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「まず私から前提を説明しましょう。これは両社が合意した一時停戦協定に基づく、惑星封鎖機構に対する同時襲撃作戦です。目標は敵方が保有する拠点群および強襲艦隊。そして先般起動した…」

 

「ここからが本題だ!要するにルビコン各地で封鎖機構との総力戦が起きる。貴様らは貧乏くじを引いた!ここにいる面々がアサインされたのは最大の脅威、氷原の化け物退治だ!」

 

「やってられるかよ。俺は遠巻きに見物させてもらうぜ」

 

「G5!前線に出るメンバーがひとり確定したようだな」

 

 

 

「アイスワームの多重コーラル防壁を無効化する手段について話そうじゃないか。あれはプライマリシールドとセカンダリシールド、2枚から成る鉄壁の守りだよ」

 

「1枚目を突破する手段はアーキバスが提供しましょう。最新兵器「スタンニードルランチャー」、これを顔部に当てれば求める結果が得られるはずです」

 

「2枚目はどうする」

 

「夜なべして作ってた玩具がある。RaD謹製「オーバードレールキャノン」さ。バートラム旧宇宙港の待機電力を回せば威力は足りる計算だが…問題は命中精度だね」

 

「そういうことであれば射手は任せてくれ、狙撃には自信がある」

 

「私は現場監督として出ましょう。寄せ集めには統率が必要です」

 

「弾幕要員も一枚欲しい、うちからはチャティも出そう」

 

 

 

「あと決まっていないのは、スタンニードルランチャーを誰が当てに行くか…」

 

「最前線で殴りに行く係なら最初から決まっている…G13!話は聞いていたな?愉快な遠足の始まりだ!」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

『…後輩に求められているのはスタンニードルランチャーの命中とその後の追撃が出来る機体…ロック距離と機動力と瞬間火力…』

 

 オルクスと話し合いながら機体を調整。

 

『こんな所かな?FCSは俺からのプレゼントと思ってくれ』

 

 

【挿絵表示】

 

 

 やることはシンプルだ。逆関節の跳躍力で狙撃地点を確保し、シールド突破後はパイルを打ち込む。

 

「…技研の遺物か…オルクス、これをどこで手に入れた?」

 

『オールマインドの戦闘ログ報酬だ。遠中近隙のない性能だが、いかんせん負荷が大きい…幅広い距離に対応出来るから相性は良いはずだ』

 

「…傭兵支援システムか」

 

 時間が時間なので、オルクスはわたしのガレージに泊まっていくらしい。せっかくなので久しぶりに子守唄を聴かせて貰い、作戦の開始に備える。

 

 

 

 

 

『俺に出来るのはここまでかな。応援してるよ、後輩。くれぐれも忘れ物はしないようにね!』

 

「ありがとう」

 

「これだけの勢力が一堂に会する作戦はそうそうない…行ってこい、621」

 

 

 

 

 

〔時間だ、621。準備はいいか〕

 

「もんだい、ない」

 

《作戦の要はあなたです、レイヴン。行きましょう、私もできる限りのサポートをします》

 

 オルクスに見送られて出撃したわたしは作戦領域に到達。

 

 

 

〔ミッション開始だ、本作戦の総指揮はミシガンが執る〕

 

〔これよりベイラムとアーキバスの合意に基づき、混成AC部隊による作戦行動を開始する。始めるぞ!命知らずども!〕

 

 輸送機から切り離されて降下したわたしの隣をアサルトブーストで通り抜けていく3体僚機を追いかけて、わたしもアサルトブーストを開始。

 

「寄せ集め各位、統率を欠かないように」

 

「なんだこいつは、舐めてんのか…?チッイラつく野郎しかいねえ」

 

 

 

 わたし達の目の前に、アイスワームが姿を現した。

 

〔まずは厄介な防壁を引き剥がす、G13!アーキバスが大金を注ぎ込んだ贅沢な専用兵装をお見舞いしてやれ!〕

 

《狙うべきは頭部です、体側は強固な物理装甲で覆われています》

 

 射角には限界がある以上、あの巨体が相手では下から狙うのも簡単ではない。細かい高さ調整が効く逆関節は悪くない判断の筈だ。

 

 

 

〔こちらV.IVラスティ、レールキャノンの準備はできている。戦友、出番なしで終わらせてくれるなよ〕

 

[ビジター、うちのボスから伝言を預かっている「滅多にない作戦 楽しんできな」だそうだ]

 

 V.IVラスティの準備が整ったことを確認して、いつでも狙えるように跳躍。カーラの言うように楽しめるかは分からないが、努力はしよう。

 

 

 

「現場各員に伝達、友軍機とは一定の距離を保ちなさい」

 

[そのようにしよう、まとめて落とされたら終わりだ]

 

「言われるまでもねえ、てめえらと仲良く死んでられるか」

 

 V.IIの指示に従い付き纏ってくるG5から距離を取った瞬間、G5の足元からアイスワームが再び姿を現した。直撃は避けたようだが、側面の装甲に掠ったことでACS負荷限界に陥っている。随分と間の悪い…

 

「クソッタレが…先にやられてたまるかよ!」

 

 

 

《目標、プライマリシールド消失!》

 

 地中に戻ろうと、アイスワームが頭をこちらに向けた瞬間を狙い撃つ。

 

〔プライマリシールド消失を確認、レールキャノン発射シーケンスに入る。EMLモジュール接続、エネルギータービン開放、出力80%。照準補正良し、90…95…〕

 

 旧宇宙港の方角から眩いほどの光が見え始め…

 

〔外しはしない〕

 

 閃光の如く放たれた弾丸が、アイスワームの頭部を貫いた。

 

《セカンダリシールド消失!》

 

〔G13!頭部に直接攻撃を加えてやれ!〕

 

 倒れ込んだアイスワームにアサルトブーストで接近し、パイルバンカーを叩き込む。爆発を起こし始めたアイスワームからクイックブーストで離脱した。

 

 

 

「あの野郎、決めやがった…」

 

「当然です。この程度はやってもらわなくては」

 

 普段は嫌味なスネイルも、V.IVラスティの実力は認めているらしい。

 

[ビジター、目標が子機を展開した。対処する]

 

 ACのレーダーが捉えた敵機の表示が一気に増えた。これではどれがアイスワームか判別出来ない。パイルバンカーをライフルに持ち替え、わたしも子機を落としていく。

 

 

 

「クソッ!機体が…どうして俺が先に落ちる…!」

 

 子機に集中砲火され、G5の機体が限界を迎えたようだ。つくづく運の無い…

 

「情けない、ベイラムのレッドガンはその程度ですか」

 

〔アーキバスのヴェスパーは評論家でも務まるようだな。G13!不言実行の手本を見せてやれ〕

 

 

 

〔V.IV!次弾装填準備!〕

 

〔いま終わったところだ、ミシガン総長〕

 

〔抜かりはないようだな、ナンバーに空きがあれば勧誘しているところだ!〕

 

〔ベイラムの「歩く地獄」にそう言われるとはな。光栄だが遠慮しておこう〕

 

 …レッドガンのG7は空いていた筈だが勧誘しないのだろうかと疑問に思ったが、レールキャノンの準備が整った以上今は作戦に集中すべきだ。

 

 

 

「…そう簡単には落ちませんよ。私はヴェスパー、アーキバスです」

 

 ………???被弾のショックか訳の分からない事を口走るV.IIを無視して、アイスワームが顔を出した瞬間を狙い撃つ。

 

《プライマリシールド消失しました!》

 

〔シールド消失確認、レールキャノン発射準備。エネルギータービン、出力80%〕

 

 再びV.IVラスティが狙撃体勢に入る。

 

〔出力95…100…巻き込まれるなよ…!〕

 

《セカンダリシールド消失!》

 

〔戦友 追撃を頼む〕

 

 彼は危なげなくレールキャノンを再び命中させた。V.IVラスティの声に合わせて、わたしも再びパイルバンカーを頭部に打ち込む。

 

〔待て、様子がおかしい…離れろ、621!〕

 

「これは…!?まだ機能を隠していたのか!?機体は限界か…止むを得ん、撤退する!」

 

 アイスワームの頭部から紅い閃光が迸る。広範囲への攻撃を鈍足なV.IIは躱しきれずに直撃してしまったようだ。

 

《コーラルが…暴走している…!?》

 

〔これは…悠長にやっている余裕はなさそうだな…レールキャノンの出力を限界まで引き上げよう、被害が広がる前に決着を付ける。次が最後の一発と思ってくれ〕

 

 

 

 アイスワームの攻撃は激しさを増し、時折地を這うようにコーラルが迸っている。地面に胴体を擦り付けるようにして薙ぎ払った直後の無防備な瞬間にニードルランチャーを撃ち込んだのだが…シールドを破れていない?

 

《…まだです、プライマリシールドも耐久が上がっている…!》

 

〔焦るなよ…戦友…!〕

 

〔G13!化け物も追い詰めれば守りを固めるようだな。貴様にレッドガンの流儀を教えてやる、「泣きを入れたらもう一発」 だ!〕

 

 V.IVラスティとG1の言葉に耳を傾け、落ち着いてニードルランチャーのリロードを待つ。いくら守りを固めた所で、限界はあるはずだ。

 

 

 

 敵機の動きはますます激しさを増し、隙を見つけられないままミサイルにこちらのAPが削られていく。

 

[ビジター、苦戦しているようだが…厳しい状況こそ楽しむべきだそうだ。ボスがそう言っていた]

 

 逆境を楽しむ…普段のオルクスのように、余裕は常に絶やすなということだろう。彼の真似事ではあるが、鼻歌混じりにアイスワームの攻撃を捌いていく。

 

 

 

 アイスワームが再びコーラルを放出しようとまっすぐに聳え立つ。

 

〔G13!目標が物欲しそうな顔をしているぞ!望みのものを叩き込んでやれ!〕

 

 G1の声と共に跳躍し、スタンニードルランチャーを発射。

 

《プライマリシールド消失!》

 

 

 

〔よくやってくれた戦友。EMLモジュール全点接続、エネルギータービン全開、出力80…90…〕

 

 

 

〔緊急弁全閉鎖、リミッター解除…!100…110…115…〕

 

 V.IVの通信にノイズが走る。

 

 

 

〔レールキャノン最大出力。これで決める………!〕

 

 

 

 極太の閃光が、アイスワームの頭部を寸分の狂いもなく貫いた。

 

《目標、コーラルシールド完全消失!》

 

〔あとは任せたぞ、戦友!〕

 

 

 

 アサルトブーストで接近しながら両腕のライフルを連射。接近してからパイルバンカーに持ち替える。鉄杭は撃鉄を起こし、炸薬の威力も乗せて頭部を貫く。

 

《!?コーラル反応が増幅しています!急いで!》

 

 まだ足りない。バーストモードに切り替えたライフルを発射し、ダメ押しでスタンニードルランチャーを追加。

 

〔決めろ!G13!〕

 

 パイルバンカーの冷却完了。左腕を構える。

 

 

 

「えぐらせて…もらう…!しーへいき…!」

 

 鉄杭を叩きつけた後、即座にチャージ解放のトリガーを引く。オルクスがシースパイダーを仕留めたときのようにパイルを上へ振り抜いた。

 

 

 

 

 

〔やったか…!?〕

 

〔爆発するぞ! 離れろ!〕

 

 安心するにはまだ早い。逆関節の跳躍力を乗せたクイックブーストで、爆発を繰り返すアイスワームから距離を取る。一際大きな爆発と共に、アイスワームは機能を停止した。

 

「マジかよ…野良犬野郎が…決めやがった…」

 

 

 

 

 

 アイスワームが倒れ込む。

 

〔…終わったようだな。爆発の余波は汚染を伴う、作戦領域から…〕

 

《…コーラルが…また失われていく…》

 

 ハンドラーの言葉を遮るように、エアが声を出した。シースパイダーのときのように、コーラルを動力とした機体を悲しんでいるのだろうか。

 

 

 

《レイヴン》

 

 エアが、わたしの名前を呼ぶ。

 

《あなたに…伝えておきたいことがあります。コーラルは…》

 

 

 

 

 

《彼らは…私の同胞なのです》

 

 

 

 

 

《コーラルの織りなす潮流。私は…そこに生じたひとつの波形…実体を持たぬルビコニアン》

 

 

 

 

 

《これまで長い間…誰にも知覚されることはなかった》

 

 

 

 

 

《レイヴン…あなただけが…》

 

 

 

 

 

「わたし、だけ、が…」

 

 

 

 

 

 コーラルが空へ舞い上がる中、わたしをヘリのライトが照らす。

 

〔621、戻って休め。これから忙しくなる〕

 

 

 

〔よくやった〕

 




◯オルクス
621の選択に俺が介入する余地はないけれど…全てが終わったあとに寄り添うくらいならできるかな…
エノメナになにもしてやれなかった分、それくらいは…

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