昔、床屋さんで耳を切られたことがあります 金物の冷たさが耳たぶを通過した感覚が分かりました 次の瞬間、僕の肩に血がボタボタボタボタ… (髪を)切ってくれたのは見るからに新人の若いお兄ちゃんでした その瞬間まず僕が感じたことは これは本当に正直な気持ちなんですが 「新人のお兄ちゃんの心を救わなきゃ!」 という気持ち それだけが真っ先に浮かんできました 新人の兄ちゃんは、ハサミを持つ手も体も声もガタガタガタガタ震えながら 「スススススミミミマセセセセセン!!!アウアウアアウアウア…」 と前後不覚状態 すぐさま店長っぽい人が飛んできてタオルで止血してくれました 僕は血を流しながら必死で笑顔を作り 「大丈夫!大丈夫ですから!気に病まないで!」 となぐさめましたが、 お兄ちゃんは青くなって震えて戦闘不能状態 舞台裏へ退場 その後は店長さんが代わって切ってくれました その間も僕は 「あの彼を怒らないであげてくださいね」 と店長さんにお願いしました カットが終わった後、「お代は要らない」とか「クリーニング代を出す」とか言われましたけど、私の為に髪を切ってくれた分は普通にお支払いして店を出ました 帰り際も必死で謝ってくるお兄ちゃんに 「大丈夫ですから本当に気にしないで下さいね」 と僕も必死で慰めました この出来事に関しては賛同して下さる方ばかりでないことは分かってます でも僕は「耳が物理的に切れた痛み」よりも「客の耳を切ってしまった心の痛み」の方が強く長く続くと思ったから、僕はそっちの方を労るのが先だと、咄嗟に自然に思った、それだけです だから、カネ払ってるからと言ってなんでも相手にクレーム付ける人や、なんでもカネで解決しようとする人っているじゃないですか そういう人に言いたいんですけど カネが何だって言うんですかね そんなにカネって大事ですか 僕はカネ払った側が偉いなんて全く思わないし カネ持ってる人が偉いとも全く思わないです それから 厳しさだけがミスを無くすとも思ってないし 優しさが大きく人を成長させることも僕は知ってます とにかく僕が声を大にして言いたいのは 許してよ 僕も絶対あなたを許すから 怒らないでよ 僕も絶対あなたに怒らないから ということです