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サッカーの伊東純也選手が書類送検されたが不起訴となる公算が高いとの報道。 マスコミ用語の「書類送検」について誤解している人が多いので、この機会に弁護士として簡単に解説しておきたい。 被疑者が書類送検をされると、何か嫌疑が強まったとか固まったとかのイメージを持つ人が多いようだが、これは全くの間違い。 そもそも警察は、捜査をした全ての事件を検察官に送致しなければならないことになっている(全件送致主義。刑訴法246条)。 これは検察官が訴追権限を独占していること(起訴独占主義。同法247条)から来る帰結。 起訴するか否かを決める権限を持っているのは検察官だけだから、検察官に送らなければ起訴か不起訴か決まらないので事件は終わらない。当たり前の話である。 なので、検察官への送致は、事件が警察の手から検察官の手に移ったということを意味するだけ。 被疑者が逮捕されている場合は、被疑者の身柄と書類が一緒に検察庁に送致され、検察官が裁判所に勾留請求するか否かを決める。それに対して、逮捕されていない在宅事件の場合は書類が送致されるだけ。 この後者の書類のみが送致される場合が、俗に「書類送検」と呼ばれている。 だから、起訴確実な事件でも不起訴確実な事件でも、在宅事件である限り「書類送検」はされる。 そこに嫌疑が固まったとか、起訴秒読みとか、そういった意味はない。 ただ、身柄事件の送致とやや異なるのは、身柄の場合は、逮捕後48時間以内に送致しなければならないし、そこで勾留請求が認められても10日、勾留延長請求(1回限り可能)が認められてもプラス10日という時間制限があることから、送致後にも警察が捜査を行う。 これに対して在宅事件にはそういう時間制限がないので、警察において捜査を概ね終えてからの送致となることが多い(送致を受けた検察官から警察に対し補充捜査の依頼がある場合も多々あるので、すっかり終わりというわけではない)。 なので、書類送検されたと聞けば、そろそろ捜査も終結して、起訴不起訴の結論が決まる時期が近付いてきたんだなということはわかる。 逆に言えば、書類送検の事実からわかることはそれだけ。 なお、 私は日頃、被疑者の実名報道は拡散しないことにしているが、本記事には被疑者は不起訴となる公算が高い旨の記述があり、むしろ被疑者の名誉回復的な意味もあると思われるので、例外的に引用した。 jiji.com/sp/article?k=2