極悪人転生〜型月世界で残虐の限りを尽くす 作:犬の可愛さは正義
番外編1
よう俺だ。極悪人に気安く挨拶される気分はどうだい?最悪だろう。俺は気分が良いぜ!
ある日の事だ。俺はいつものように聖女様を虐待していた。あの女は何故か笑顔だったが。
俺は考えた。どうしたらあの女をギャフンと言わせられるか。虐待アイデアを考えるも中々ピンとこない。俺は気分転換を兼ねて家の外を散歩していたんだが、いつの間にか足元に空いていた穴に落ちちゃったんだ。
あの時はびっくりしたぜ…………。こんな穴、昨日まで無かった筈なのに。俺はつい気付かずに落ちてしまった。
穴は相当深く、まるで不思議の国のアリスになった気分だった。テンションの上がった俺は、いったい何処に連れて行かれるのかワクワクしていた。5分ほど落下し続け穴の底に着地した俺は、光が漏れている出口らしき場所へ向かったんだが、そこにあったのはフランスやイングランドの景色ではなかった。
「は?」
「ブキィィィィ!!」
なんと俺の目の前には家より大きな大猪がいたのです。ここは何処ですか?
◆◇◆
大猪にばったり遭遇。みんなもそんな経験あるよな?まったくびっくりしたぜ!
大猪は俺を食おうとして来たので、俺は愛剣で首を刎ねて逆に大猪を喰ってやった。ヒンナヒンナ。おっと、勿論焼いてるぜ?
大猪は家くらい大きいので、とても俺一人で食い切れる量では無かった。お残しは絶対許さない極悪人の俺は、残りの大猪の肉を引き摺りながら探索を開始した。
ここは俺のいた場所じゃないな…………何処もかしこも化け物で溢れてやがる。大猪の血の匂いに引き寄せられ、めちゃくちゃ沢山の化け物が襲いかかってきたから大変だったぜ。
湖のお姉さん直伝のインテリ作戦に基づき、俺は襲い来る化け物全てを斬った。斬って斬って斬りまくった。気付けば、辺りは血の海と化し襲い来る化け物はいなくなっていた。もう終わりか〜?無双ゲームみたいで楽しかったのによ〜。ハーハッハッハ!
思いがけず沢山の肉が手に入ったので、今日はここで野宿することにした。周囲は森だったんだが、化け物の返り血で緑の森は赤く染まっている。日本の紅葉を思いだしてなんだか懐かしくなった。
探索はまた明日からだ。中々面白そうな場所ではあるが、早く帰らないと聖女様が俺の家から脱走するかもしれない。虐待もしたいので、なるべく早くフランスに帰ろう。じゃあお休みー。
朝。大猪のステーキを食べていたら、遠方から人間の悲鳴が聞こえた。興味が湧いたたので走って近づいてみたら村が見えてきて、丁度蛮族みたいな連中に襲われていた所だった。蛮族共はやたらとムキムキしており、村人共を手当たり次第に攻撃している。
ようやく見つけた虐待対象。俺は愛剣を抜いて蛮族共をブチのめした。中々強かったが、極悪人の俺の敵ではなかった。全体の6割が気絶すると、残った連中が気絶した奴らを背負って逃げていった。
ククク…………………どんな気分だ?気持ち良く略奪していたら、通りすがりの極悪人に蹂躙されるのは?俺の事を化け物でも見るかのような目が心地良いぜ…………………!ハーハッハッハ!
「あ…………………貴方様はいったい…………?」
「ああん?」
俺が久し振りの虐待に高笑いしていると、怯えた顔の村人共が俺を見つめていた。どいつもこいつも恐怖しきってやがる!ゾクゾクするぞ!その恐怖の色!
俺に話しかけて来たジジイはこの村の村長らしく、俺が何者か聞いて来た。俺はとっても怖ろしい極悪人だと自己紹介したが、ジジイはポカンとした顔の後、俺に御礼を言ってきやがった。すると、ジジイの礼につられて他の村人共もお礼の言葉を贈って来やがった!!
こいつら…………!!聖女様みたいな皮肉を言ってきやがって!な〜にが、「私達を助けてくれてありがとう」だ!助けてねぇよ!俺は虐待をしただけだ!!
あまりにもムカついた俺は、昨日手に入れた大量の化け物共の肉をこいつらに無理矢理押し付けてやった。部位ごとに解体し、血抜きも完璧に済ませた肉だ。村人共は全員皮と骨しかねぇのかってくらい痩せ細っていたので、俺は様々な料理にして強引に食わせてやった。
極悪人の施しだ!さぞ屈辱的だろう!ハーハッハッハ!こいつら、俺の作った料理を涙を流しながら食ってやがる!そうかそうか!そんなに俺の料理を食うのは嫌か!愉悦!!
あ?なんだ村人共。「ありがとう」だぁ…………?今年は作物が育たず、このままでは全員飢え死にする所だった…………?ピクト人の襲撃から家族を守ってくれてありがとう…………?
かーーッ!!なんて皮肉を言ってきやがる!!俺は虐待してるってのに、お礼を言うとか馬鹿じゃねぇのか!?俺はそう言ってやったんだが、どいつもこいつも笑顔のままだ!カチーンときたぜ!!
あっ!?この村のガキ共が俺に抱きついて来やがった!!やんのかコラ!!「一緒に遊ぼう」だぁ!?望む所だ!俺の虐待遊び、鬼ごっこで疲れ果てるまで遊んでやる!覚悟しな!
俺はキャッキャッと笑うガキ共が満足するまで遊んでやった。こいつらの親が微笑ましい目で見てくるのにはムカついたぜ!ケッ!
◆◇◆
俺は村長のジジイに虐待尋問をして、ここが何処なのか根掘り葉掘り聞きまくった。
何でも、ここはブリテン?とか言う場所みたいだ。長年、外からの蛮族の襲撃に遭うわ、土地が痩せてるから作物が育たず国民は飢える者が多いとか…………。あと、俺の料理は絶品だったと言っていた。なんでも、こんなに美味しい料理を食べたのは初めてだとか…………子供達にお腹一杯食べさせてくれてありがとうとか…………。
まあ、料理を褒められて悪い気はしねぇ。お礼の言葉は余計だが。
他に何か面白い情報は無いのか聞いて見たら、なんでも、ブリテンにはカリバーンとかいう誰にも抜けない選定の剣があるとか。
王権の象徴ともいわれるこの剣を抜いた者は、この国の正統な王位継承者に選ばれるらしい。ほ〜う…………………。
ククク、興味が湧いたぜ!
王様とかこれっぽっちも興味ねぇが、誰にも抜けない剣っていうのは面白い!もし、その剣を俺のような心の穢れ切った極悪人が抜いたなら…………………?その時、この国の連中はどんな顔をするのかなあッ!?想像しただけで甘露だぜ!!
俺は早速この村を発つことにした。昨日、遊んでやったガキ共はお別れするのは嫌だとか言って、俺に泣きながら抱き付いてきた。
ええいッ!うっとおしいぞ!!このクソガキ共ッ!気が向いたらまた会いに来てやるから離れやがれ!そう言ったら、ガキ共は渋々離れ「約束だよ?」とかほざいてきやがった。
ハッ!!いいぜ!俺は約束を絶対に破らない極悪人だから、またこの村に来てやる!だからてめえらも親の言う事よく聞いて、俺が虐待したくなるような良い子で待ってやがれ!
そう言うと、ガキ共を含む村人共は笑顔で笑ってやがった。なんだァ…………………その顔は…………ムカつくぜ!
クソがッ!旅立つ俺を村人総出で見送るんじゃねぇ!なんかポワポワするだろうがッ!俺は怒りながら村を出ていった。
そして暫くの間旅を続け、ようやく選定の剣がある場所にたどり着いた。ククク!会いたかったぜカリバーンちゃん!今、突き刺さってる岩から抜いてやるぜ!!
「それを抜くと、君は人間ではいられなくなるよ」
「…………多くの人が笑っていました。だから───」
んん?よく見たら先客がいるなぁ。フードで顔は見えないが、白いローブを来た男…………………なんか、グランドろくでなしって呼ばれるくらいクズの気配がするな………………。
そしてもう一人は、金髪で頭にアホ毛がついたクソガキ。今まさに選定の剣に手をかけ抜こうと─────。
「何ぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
「「ッ!?」」
なんてこった!!このままじゃ、俺の選定の剣が取られちまうじゃねぇか!大声で叫んだ俺に二人組は驚いてやがるが、そんなのどうでもいいぜ!!俺は全力ダッシュで選定の剣が刺さった岩へと向かう!
「ちょっ、ちょっと待った!!君はいったい何者だい!?私の千里眼に君の様な存在は映って…………」
「やかましい!!そこをどかんかいワレッ!!」
「ぐはァァァァ!!?」
「マーリン!?」
白ローブが俺の前を遮ろうとしやがったので、俺は容赦なく顎に極悪アッパーをぶちかましてやった。本来なら安易な暴力は俺の美学じゃないんだが、白ローブは別だ。
俺の人間観察術、通称【虐待眼】によるとこいつは特Aクラスのろくでなし。方方で恨みを買っている予感がビンビンするぜ!!
特に、王妃様みたいな人には盛大に憎まれていそうだ。気配からしてこいつは半分人外。お姉さんと近しい気配がするが、こいつと比べたらお姉さんが可哀想だ。お姉さんはめちゃくちゃ良い人なので、白ローブとは天と地くらい差がある。当然、白ローブが地のほうだ。
なので容赦なく殴った。白ローブは殴られた勢いでお空を数mくらい垂直に吹き飛び、白目を向いて地面に激突した。
…………なんか今、誰かに『よくやった!!』と言われた気がするぜ。
よし、白ローブは気絶した。俺は呆然としている金髪を押しのけ選定の剣を掴んだ。よし!最初から全力だ!うぉぉぉぉぉ!!
「ま、待ちなさい!そこの貴方!!マーリンを殴ったのには正直胸が晴れる思いでしたが、それとこれとは話が別!!私はその選定の剣を抜く責務が…………………!!」
「おっ、抜けたぜ」
「…………………え?…………………え?…………えぇぇぇぇぇぇ!!?」
なんだよこんなもんかよ。長年、誰も抜くことが出来ないって言うからどれ程のもんかと思ったら、すぽーんと抜けた。まったく力はいらなかった。まるで俺を待っていたのかってくらい、すんなり抜けた。
ちょっと拍子抜けだが、まあいい!!ここはあのセリフを言うべきだな!!
「選定の剣!!GETだぜ!!」
「…………なぜ…………?なぜ、いきなり現れた彼が抜けた…………?私は今までなんのために…………………」
なにやら金髪が青褪めた顔で絶望しているが、なにかショックを受ける出来事でもあったのだろうか?まあ、俺には関係無いことだろう。
さて、新しい剣も手に入ったし、フランスに帰る方法を探すかね。早く聖女様に会いたいぜ。
あ…………………。
違うからな?別に、あの女に会えなくて寂しいわけじゃないからな?虐待が出来なくて寂しいだけだからな?わかったな?わかったと言え!!でなけりゃ、なんとかカリバーの刑だ!!
俺はその場を悠々と立ち去った。なにやら放心している金髪と、泡を吹いて気絶しているグランドろくでなしを放置して。
…………………なんかとんでもない事をしたような気がするのは、気の所為だろうか?
……………………………………。
よし!多分気の所為だな!!
お姉さん
「よくやったわ!その夢魔はろくでなしの権化だからもっとやるのよ!!今のアッパーは汎人類史のモルガンの分だ!ざまをみなさい!これ、録画していつか妖精圏のモルガンやキャストリアに見せて上げよっと!!早速、保存用のディスク用意しなきゃ!」