増加の一途の金属盗被害、23年の都道府県別被害は 抑止に条例も

杉江隼 板倉大地
[PR]

 全国で金属盗が多発している。昨年は、4年連続で最多となった茨城など首都圏の5県で、県内で確認された被害が1千件を超えた。被害が深刻な自治体では金属の買い取り業者を規制する条例の整備が進むが、課題も残る。

 警察庁によると、全国で昨年1年間に確認された金属類の盗難件数は、前年より5908件増の1万6276件。

 県別では、それぞれ被害件数が4桁台あり、上位を占めているのが4年連続で最多の茨城(2889件)や前年から倍増した千葉(1684件)、栃木(1464件)、群馬(1437件)、 埼玉(1172件)の首都圏の各県だ。

 千葉県では被害品のうち、太陽光発電所のケーブルが1千件を超え、最多だった。千葉県警によると、昨年だけで金属盗による県内の被害総額は約21億円に上った。

 大都市圏を抱える都道府県では、北海道(199件)、東京(297件)、愛知(835件)、大阪(443件)、福岡(422件)などでいずれも3桁台の被害が確認された。

 捜査関係者などによると、金属類の市場価格の高騰に伴って各地で取扱業者が急増し、盗品を売却しやすい環境があるという。今年3月には、盗品と知りながら窃盗グループからケーブルを購入した疑いで、群馬県警が買い取り業者を摘発。海外に転売していた疑いもあるとみて調べている。

 買い取る側を規制して抑止につなげようと、自治体が条例を制定する動きも進む。

 千葉県警が4月に公表した条例案では、太陽光発電所のケーブルや道路の側溝を覆う鋼製のふた(グレーチング)などを「特定金属類」に規定。扱う業者は県公安委員会から事前に営業許可を取る必要がある。

 その上で①許可事業者の標識を掲示②特定金属類を売買する際、氏名や住所などを確認③盗品の疑いがある場合は警察に申告④取引記録を保存――することなどを義務化する。実効性を確保するため、立ち入り検査や営業停止命令、罰則規定などを設ける。

 茨城県警でも「金属くず取扱業に関する条例」の改正をめざす。昨年12月には県民から意見を募った。改正案では、金属類を買い取る際に身分証の確認と、そのコピーの保存を義務づける。

 ただ、条例では県外に盗品が持ち出された場合は、適用できない。千葉県警の捜査幹部は「条例ではなく、法整備が必要だ」と指摘する。(杉江隼、板倉大地)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません