再放送で人気再燃、24年前の朝ドラ『オードリー』 今だからこそ発見できる“令和の傑作”『カムカムエヴリバディ』との共通点

2024/06/29
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両作の「名シーン」が脳内で交差

『惨殺浪人・夢死郎』で初主演をつとめる錠島と、大京映画を卒業していったスターで、ゲスト俳優の幹幸太郎による「新旧対決」は、『オードリー』のなかでも屈指の名シーンだ。『ゴッドファーザー』のテーマが流れるなか、估券も恩讐も超えてふたりの刀がぶつかる。これを観ながら『カムカムエヴリバディ』における、斬られ役・伴虚無蔵(松重豊)と桃山剣之介の殺陣が、ジョーとトミー(早乙女太一)の「トランペット対決」にカットバックするあの名シーンを思い出した視聴者も少なくないはずだ。

松重豊 ©文藝春秋

『カムカムエヴリバディ』の劇中にはさまざまな朝ドラが登場するが、もちろん『オードリー』も例外ではなく、102話と104話に登場した。それぞれに、

「(ハリウッド映画『サムライ・ベースボール』の)オーディションの直前に放送されていた『連続テレビ小説』は、『オードリー』でした。京都・太秦が舞台で、時代劇に魅せられたヒロインのお話です。自分と共通点の多いヒロインの物語を、ひなたも熱心に観ていました」「『オードリー』のヒロイン・美月は『連続テレビ小説』には珍しく、結婚も出産もしないまま最終回を迎えました」

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 というナレーションが入る。美月とひなたについて、メタ的に「共通点が多い」と言及しているうえに、『カムカム』に登場した数々の朝ドラのなかでも、『オードリー』についての解説が最も手厚かった。

朝ドラという“文化遺産”のなかで、志は伝承されていく

 ……と、挙げればきりがないのだが、このように、『カムカムエヴリバディ』には『オードリー』への熱いリスペクトが感じられてならない。藤本氏の1作目の朝ドラで落語を題材にした『ちりとてちん』(2007年後期)で多用された「本歌取」の手法が、『カムカム』でも発揮されたと言えるのかもしれない。もちろん、『カムカム』の制作陣が公式に「『オードリー』へのオマージュを込めた」と発言した事実はないので、これは筆者の想像に過ぎない。

 ともあれ、裏方や大部屋俳優など「名もなき人たち」にスポットを当て、どの人物も愛情を持って造形し、全員がそれぞれの人生の主人公であると見せる作劇。「映画」「時代劇」「物語」への愛。これは間違いなく『オードリー』と『カムカムエヴリバディ』の共通点と言っていいのではないだろうか。『オードリー』の当時の番宣ポスターやポストカードに添えられたキャッチコピーには「夢を見るなら映画スター、ワキ役なんてどこにもいない」とある。

『オードリー』の当時の番宣ポスターやポストカードに添えられたキャッチコピーには「夢を見るなら映画スター、ワキ役なんてどこにもいない」とある

 シリーズ110作、63年と続く「朝ドラ」。その長い歴史のなかで、名作を「種」として新たな名作が生まれ、それがまた未来の名作の「種」となる。「血縁の有無によらず『志』は受け継がれていく」というテーマは、『カムカムエヴリバディ』の主幹でもあった。『オードリー』の君江と美月が語り合った「物語への思慕」、そして『カムカムエヴリバディ』にて「A long time ago」ではじまる「物語の伝承」。いにしえより人類が連綿と続けてきたこの営みが、「朝ドラ」という“文化遺産”のなかでも続いていくのかもしれない。

再放送で人気再燃、24年前の朝ドラ『オードリー』 今だからこそ発見できる“令和の傑作”『カムカムエヴリバディ』との共通点

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