ゴミの不法投棄(提供・西牟田靖氏)

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課税対象から外れている一方…

 難民認定申請の悪用抑止を肝とする「改正入管法」が全面施行された。朝日、毎日、TBSなどのメディアは早速これに難癖を付けたが、埼玉・川口市の病院前での大乱闘で逮捕されたクルド人は再入国を果たしていた。報じられない「難民」の不都合な真実とは。【前後編の後編】

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「そもそも病院事件で彼らが不起訴になったこと自体、地域社会に大きな恐怖を与えました」

 と憤るのは、川口市議会議員の奥富精一氏である。

「それが一時でも戻ってきたとあっては、まさに住民にとっては脅威です」

 クルド人の市内在留については、さまざまな問題があるという。

ゴミの不法投棄(提供・西牟田靖氏)

 同市のクルド人の多くは、難民申請中であったり、入管施設への収容を免れている「仮放免」の状態にあったりするが、

「仮放免の場合、自治体はその居住実態を把握していないことが多く、地震などの大規模災害が起こった場合にも適切な救済ができない可能性がある。また、仮放免者には就労が禁止されていますが、実際は彼らの多くは解体業者などで働いている。にもかかわらず、課税対象からも外れているのです。一方で、その子どもの義務教育の費用などは自治体から支払われるのです」(同)

医療費を踏み倒すケースも

 彼らは健康保険にも加入できないので、病院にかかれば全額自費で医療費を支払うことになる。

「それができず、踏み倒すケースもあります。昨年度、市立医療センターには外国人相手の未収金が1億2000万円あり、経営を圧迫していますが、そのうちクルド人も一定の割合を占めているとみられます」(同)

 労災保険も適用されないので、業務中に事故が起こっても給付が受けられない。

「勤務先の業者に低賃金で搾取されても救済されない。児童労働も少なからずあると思いますが、それもブラックボックスになってしまっています」(同)

 すなわち、

「仮放免者の存在は、行政としてはもちろん、本人にとっても良いことはひとつもないのです。適正化するしかないのですが、こうした声を上げると“ヘイトだ!”と糾弾されてしまうのが実情なのです」(同)

目的は「出稼ぎ」

 そもそも、こうしたクルド人が「難民」に該当する、母国で迫害の中にある人々であれば、保護が必要といえるのだが、

「川口のクルド人の実態はほとんどが経済移民。難民条約が対象とする人たちとは思われません」

 とは、さる法務省幹部。

 難民条約が定める「難民」とは、人種や宗教、政治的意見などを理由として迫害を受ける恐れがある者を指す。

「しかし、川口に来るクルド人のほとんどはトルコ南部のガジアンテップという地域周辺の山岳地帯で、農業をやってきた人たちです。彼らはトルコ国内で差別されてはいるものの、さりとて生命や自由が著しく脅威にさらされているかといえば、そうしたレベルではないんです」(同)

 ではなぜ遠く離れた日本にやって来るのか。

「稼ぐためです。そのために先に日本に来ている親族や友人、知人のつてをたどる。現在、日本とトルコとの間では3カ月以内の短期滞在であればビザがいりませんから、パスポートと飛行機代さえあれば、簡単に来られてしまう。その後、難民申請を繰り返せば合法的に滞在、就労できるのです。日本には、彼らを手助けする“人権派”弁護士やNGOがいますから、彼らにとってはそれも心強い」(同)

 要は出稼ぎ目的がほとんど。それが証拠に、クルド人は難民申請後、1年以内に2~3割が帰国しているという。

「出稼ぎの目標額が達成できたか、あるいは意外と稼げないということが分かったのか、どちらかでしょう」(同)

 いずれにせよ、1年で母国に帰国できる「難民」が真の「難民」に当たらないのは明白であろう。

仮放免中に暴行

 世界を見渡せば、アメリカやイギリス、フランスでもみな、移民の受け入れを巡る問題で大揺れ。かんかんがくがくの議論が行われている。

 翻って日本では、外国人に対し、今後国がどう向き合っていくのか、という本質的な議論がないまま、「難民」を母国に戻してはかわいそうだなどと、感情的なストーリーが展開されている。

 さる入管関係者は言う。

「クルド人の強制送還問題でよくマスコミが取り上げる男性がいます。彼は入管施設で顎の下を圧迫されたなどとして国に勝訴し、ヒーローのように扱われていますが、外面と実際の姿は異なる。彼は彼で入管施設の中で、女性の医療従事者に対し、“何を言ってもあなたはクソババアだから”など、面と向かって口汚い言葉を連呼しています。更に言えば、仮放免中に酒に酔って暴行を働き、実刑判決を受けて服役した過去がある」

 こうした事実はほとんど報じられないのだ。

「実情をきちんと記してから論じるべき」

「一部メディアは支援者側からの情報に過度に依拠して記事を作っているのではないか、という気がします」

 とは川口市周辺でのクルド人問題を取材する、ノンフィクション作家の西牟田靖氏。

「現地でクルド人に取材をすれば、“仕事があるからと親戚に言われて来た”などの話はすぐに聞けます。少し取材をすれば彼らが難民に当たるかどうか疑問が浮かぶはずなのですが、そうした話ははじめから聞かないのか、あるいは聞いても無かったことにしてしまうのか。改正についての賛否はそれぞれあってしかるべきですが、少なくともリアルな実情をきちんと記してから論じるべきでは」

 前編「不法入国し前科ありのクルド人、強制退去に『すぐにまた来る』『私は金持ち』 病院乱闘事件で逮捕されたのに再入国」では、「病院乱闘事件」で逮捕されたクルド人男性が再入国を試みた上、強制退去させられると「すぐにまた来る」「私は金持ち」と吐き捨てていた件について報じている。

「週刊新潮」2024年6月27日号 掲載