深淵卿に憑依しました リメイク   作:這いよる深淵より.闇の主人

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どうも!徹夜で何とか書き切れました!!

少しアレかな?と思いつつも脳死+徹夜明けのテンションで投稿!!

ちょいグロあるので気を付けて下さい。そんなですけど


それでは、どうぞぉ!!


奈落の底での死闘

「う、うぅ……此処は?」

 

 起きた時に感じた事はとにかく'寒い'という事だった。それもそのはず、俺の下半身がどっぷりと川の中に浸かってる状態で、更には上半身も濡れてしまっている。

 

 はっきりとしない意識の中、川から這い出た俺は少し先に人型の何かが打ち上げられているのを発見する

 

 ……ハジメだ

 

「ハ、ハジメ……ッ」

 

 急いで駆け寄ろうとするが、足が思うように動かずバランスを崩してしまった。といっても地面にぶち当たる前に手を付いたので怪我はない

 

 ヒョコヒョコと不格好になりつつ側まで寄ると、脇に手を挟み込んで引き上げる

 

「おい! 大丈夫か?」

 

 頬を軽くペチペチと叩きながら呼びかけると、「うっ」と呻き声を上げてハジメは目を覚ました。

 

「浩介……くん?」

 

 まだはっきりと意識が覚醒していないようで、ボーとしているが次の瞬間には驚きの表情と共に俺の名前を呼ぶ

 

「……はぁ、一先ずは安心したよ」

 

「浩介くんも無事で良かっ——(つぅ)ッ〜、ここは……」

 

 ハジメはふらつく頭を片手で押さえながら、記憶を辿りつつ辺りを見回している

 

「ベヒモスのせいで橋が崩落して、俺たちは奈落の底に真っ逆さまってわけだが、そこん所は覚えてるか?」

 

 そう質問しつつ、最後に「ま、その後のことは知らないんだけどな」と付け足す

 

「覚えてる……確か——ずっと落ちていくと崖の壁に穴があったんだ。そこから水が噴き出てて……そこからは何処かに体を打ち付けて意識が飛んじゃって分からない……」

 

「……俺なんて真っ先に意識無くなってたのに凄いな」

 

「いや、それは多分だけどダメージ量の差じゃないかな? 浩介くんボロボロだったし——は、はっくしゅん! ざ、寒い! こ、浩介くんは寒くないの?」

 

 ガタガタと震えながら手をすり合わせると、気になったのかそんな事を聞いてくる

 

「えーと、あれだ。八重樫道場の門下生達は特殊な訓練を受けていますって言えば分かるだろ?」

 

「……え?」

 

「とはいえ流石にこのままだと低体温症になったりする危険性も……よし、ハジメ服を脱いでくれ。パンツは……いいかそのままで」

 

「ええっ?!」

 

 服を脱ぎつつそう言うが、何故かハジメは驚いたように固まったままだ。気にせず脱いだ服を絞って近くに置き、パンツ一枚だけになると地面に魔法陣の式を刻んでいく。

 

 ペンか何かがあれば良かったが、生憎そんなものは無いので仕方なく近くに落ちている手頃な岩でガリガリと書き上げること約五分……ようやく完成した魔法陣に魔力を通して起動させる。

 

「求めるは火、其れは力にして光、顕現せよ、〝火種〟……ふぅ、なんとか成功したか。どうした? ハジメも来いよ」

 

 服を乾かす俺にならってハジメは急いで服を脱ぐと水を絞り出し、傍に服を並べて乾かしつつ拳大の炎に手を当てて暖をとる

 

「ふぅ、暖まる……近接戦闘も出来るのに魔法まで使えるとか……流石だよね」

 

「簡単なのしか覚えてないし、あんま覚える気は無いんだよなぁ」

 

「どうして?」

 

「ん〜、大した理由じゃないし気にすんな」

 

「ふ〜ん。それよりここどこなんだろう。……だいぶ落ちたんだと思うけど……帰れるかな……」

 

 体が温まり、気持ちが落ち着いてきたのかハジメは不安そうに聞いてくる。その目には涙を溜めて泣きそうになっているが、必死に堪えて涙を拭っている

 

「……ッ、別に泣いてもいいんだぞ? 溜めてても良いことなんて——」

 

「泣いてなんかいられない! 怖がってても何も始まらない……やるしかない。なんとか一緒に地上に戻ろう。大丈夫、きっと大丈夫」

 

 顔を上げ、何度も自分に言い聞かせるようにして決意を固めるハジメ

 

(俺は、お前を——)

 

 

 あれから約二十分ほど暖をとり服もあらかた乾いたので出発することにした。出発前に残っていた回復薬を半分ハジメに渡し、二つのことを頼んだ。最後まで了承してはくれなかったが、言わないよりはマシだ。

 

 俺が先頭となり、極力声と音を出さないようにハンドサインをしながら慎重に慎重を重ねて奥へと続く巨大な通路に歩を進めていく。

 広い通路なので全くと言って良いほど進んだ気はしないが、何よりも大事なのは敵に見つからないことだ。好都合なことに隠れる場所も豊富にあり、物陰から物陰に隠れながら進んでいった。

 

 

 

 そうやってどれくらい歩いただろうか。

 

 

 着いてくるハジメのペースが落ちてきて息が上がり始めた頃、遂に初めてとなる分かれ道にたどり着いた。巨大な四辻である。岩の陰に隠れながら、どの道に進むべきか逡巡した。

 

 しばらく考え込んでいると、視界の端で動く気配を感じ、顔を出そうとしたハジメを慌てて説得し、岩陰に身を潜める。

 

 丁度よくあった岩の隙間から様子を窺うと、俺たちから真正面となる道に白い毛玉がピョンピョンと跳ねている……俺は一目でソイツが何なのか分かった。

 

 蹴りウサギだ。

 

 戦って勝てなくもないと思うが、戦闘は必要最低限にしておきたいので、直進は避けて右か左の道に進もうと決める。蹴りウサギの位置からして右から入るほうが見つかりにくそうだ。

 

 まずは俺が《+気配遮断》を使用してバレないように渡ると、ハジメはウサギが後ろを向き地面に鼻を付けてフンフンと嗅ぎ出したところで、今だ! と飛び出そうとして……

 

 その瞬間、蹴りウサギがピクッと反応するとスッと背筋を伸ばし立ち上がった。警戒しているようで耳が忙しなくあちこちに向いている。

 

 ハジメは岩陰に張り付くように身を潜めているが、蹴りウサギが反応したのは別の理由だった。

 

「グルゥア!!」

 

 獣の唸り声と共に、白い毛並みの狼のような魔物"二尾狼"がウサギ目掛けて岩陰から飛び出した

 

 そうして一体が飛びかかると、別の岩から二体めの二尾狼が飛び出すと、何処からともなく二尾狼が蹴りウサギへと殺到していく……が、その全てを敵ながら見事な蹴り技で殺し尽くしている。

 

 ハジメはどさくさに紛れて移動しようとしていたが、まさかのウサギによる快進撃で、乾いた笑みを浮かべている。「気がつかれれば死ぬ」そんなことを思ってしまい、無意識に後退る。

 

 後退ってしまった。

 

 カラン 

 

 その音はこの広い洞窟内でやたらと大きく響いた。

 

 ハジメは下がった拍子に足元の小石を蹴ってしまったのだ。あまりにベタで痛恨のミスだ。自分が蹴り飛ばしてしまった石からウサギに視線をむけると、ウサギはばっちりハジメを見ていた。

 

 ハジメは硬直して動けないでいるが、蹴りウサギは体ごとハジメに向き、足にグッと力を溜める。

 

 声を出さずに身を潜めていた俺はほんの一瞬だけ出来た隙を逃すことなく、二本の苦無を蹴りウサギ目掛けて投げつけた。

 

 

 普通は避けてしまうだろうが、生憎と俺は普通ではなく世界一影が薄いと言われる男だ。そんな男が技能と技術を合わせた投合を避けることは流石の最下層にいる魔物といえど出来なかったようで、一本目は顔面に、二本目は胴体へと突き刺さった。

 

 

 いつまでも来ない衝撃と、ドチャッという音にハジメは恐る恐る目を開ける。が、先ほどまで自分を殺そうとしていた蹴りウサギには何か黒いものが刺さっており、既に絶命している。

 

 助かった……と、安堵の表情を浮かべた次の瞬間、何かに体を思い切り吹っ飛ばされて壁へ叩きつけられた

 

「ぐ……ゴホッ! な、何が——」

 

 咳き込みながらも何が起こったの確認しようとして……何かが顔にかかっているのに気付く。それはヌメリと少し温かみを感じる赤い液体

 

 血だった。

 

 ハジメは困惑する。なにせ出血するような傷は受けていない。ならどうして? その疑問は直ぐに解決した。自分ではない他の人間……

 

「浩介……くん」

 

 そう、目の前に立っている浩介のものだった。左耳は半分切られたように無くなり、左腕の肩から肘にかけての皮や肉が鋭利な物に削がれたようになっている。筋肉と骨が剥き出しになっている様は痛々しすぎて見ていられない

 

 

「何やってんだ……こういう時は錬成使って逃げろって言って……ぐっ……」

 

 直感でハジメに危険が迫っていることを察知したが、こうするしかなかった。でなければハジメは真っ二つになり、死んでいた筈だ

 

「血がたくさん出て……ヒィィ!!」

 

 どうやら俺の体で見えなかったようで、心配して近付いてきたハジメは正面にいる爪熊の存在に気が付く

 

「おい、ハジメしっかりしろ! 早く逃げ——」

 

「グゥルァァァッ!」

 

 近くの()を食べ終えた爪熊は次の標的はお前達だと言わんばかりに唸り声を上げて迫る。

 

「グゥルァッ?!」

 

 足場が急に消え、間抜けな声と共に地面に転がる爪熊。ハッとして後ろを振り向くとハジメが床に手をついて錬成を行使していた。

 

「こ、怖いからって……逃げてたまるか! 僕だって……浩介くんと戦うんだ!」

 

 錬成でベヒモスのように足を嵌めようとするハジメだったが、これ以上魔力を消費させるわけにはいかない。と、止めるように言おうとするが、その前に直感が危険だと警鐘をガンガン鳴らす。

 

「避け——」

 

 俺が全てを言い終える前に爪の刃が三つ飛来する。一つは避けようとしたハジメの左腕を切り落とし、残りの二つの内、一つは既にボロボロで動かない左腕を落とした。もう一つは腹を掠めるだけに収まった

 

 ハジメの困惑した声と悲鳴が洞窟に響く、流石に腕が切り落とされれば俺も泣き叫びたくなる。だが、それを歯を噛み締めることで堪え、効果は見込めないだろうが多少はマシになるだろう。と、秘薬といわれている丸薬と共に回復薬を一気飲みする

 

「頼むから逃げてくれ、お前がいると……邪魔なんだ」

 

 絶叫するハジメに一言そう残し、爪熊へと突貫する。

 

「喰らえッ!」

 

 上段に構えた剣を思い切り振り下ろすが、爪の間で上手く捉えられ、そのまま喰らうつもりなのか大口を開けて噛みつこうとしてくる。

 

「……ハッ!」

 

 止められた瞬間には既に剣から手を離していた俺は素早く懐から小さな丸薬を取り出し、一つは口に落とし、もう一つは流れるように鼻へとデコピンの要領で吹っ飛ばす

 

「グゥオァァッ?!」

 

 地球と異世界二つの世界にあるものを使って作った特製の丸薬は効果があったようで、途端に苦しみ暴れだす爪熊。そこへ念のために煙玉を使って視界を奪うとその場から直ぐに逃げ出す

 

 後に残ったのは飛び散った魔物や人間の一部と大量の血、そして苦しみもがき続ける爪熊の咆哮だけが響いていた

 

 

 




浩介の落ち着きのアレは……アドレナリンと八重樫道場での鍛錬のたわものだと思って下さい!!

左腕に関しては話の成り行きと……か、格好いいかなって

すいません!!
この調子で次の話も書いていっちゃいますが、次もお楽しみに!


投稿スペースについて

  • 遅い。リメイク前と一緒でもええから早く
  • 普通、このペースでこの内容なら普通程度
  • このまま数ヶ月に一話でもいい

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