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残念ウサギと苦労人浩介
あれから十日して、遂に俺たちは地上へと出る。南雲は魔方陣を起動させている
「久しぶりの地上かぁ……うん、なんだか緊張してきたぞ」
「だな……そうだ、話しておくことがある。
遠藤……は大丈夫か」
話をふられるのかと期待したが、途中で止められて非難する俺だったが、南雲に手で制された。大事な話をするのだろう
「ユエ、俺の武器や俺たちの力は、地上では異端だ。聖教教会や各国が黙っているということはないだろう」
「ん……」
「兵器類やアーティファクトを要求されたり、戦争参加を強制される可能性も極めて大きい」
「ん……」
「教会や国だけならまだしも、バックの神を自称する狂人共も敵対するかもしれん」
「ん……」
「世界を敵にまわすかもしれないヤバい旅だ。命がいくつあっても足りないぐらいな」
「今更……」
南雲の言葉に笑みで返すユエ。そんな彼女の髪を優しく撫でると気持ち良さそうに目を細めるユエ
出そうになるため息を押し留めると、「あーもう二人だけの空間だねー邪魔物は空気になりますぅ~」と言いたそうな顔をして離れようとして━━手を捕まれた
「ここからはお前もいないと駄目だ」
「邪魔者は退散しようとしただけですぅ~」
「……コウスケいじけてる。可愛い」
「まぁさっきまでのは別に言わなくても
「……なんと、ライバルは身近にいたっ……!」
どういうわけだそりゃ? と思ったが、口に出さずに次の言葉を待つ
「俺が、遠藤が、ユエが、それぞれが守り合う。それで俺たちは最強だ。全部なぎ倒して、世界を越えよう」
「んっ!」
「おうっ!」
その言葉にユエはいつも通り笑顔で返し、俺は不敵に笑って答えた
魔方陣が発動し、一面が光に満たされた視界、何も見えなくても確かに変わったことは実感した。奈落の底の淀んだ空気とは全くの別物。懐かしさを感じる空気に自然と笑みが浮かぶ。
しばらくすると光が収まり目を開けた俺の視界に写ったものは……
洞窟だった。
「「なんでやねん」」
普通ここは地上だろ! と、思わずツッコミを入れてしまったが、どうやら南雲も同じようだ
「とにかく進もうぜ、よくよく考えたら反逆者の住処が隠されていない筈ないもんな」
その言葉に頷くユエと南雲、途中にトラップの反応があったが、南雲の指輪のおかげで一切何事もなく洞窟内を進んでいると遂に光を見つける。これは確かに外の光だ。俺たち二人は数ヶ月、ユエに至っては三百年間という長い年月。求めていた光だ
「ふっ、お先に!」
俺たちは互いに顔を見合わせてニッと笑みを浮かべて━━俺は抜け駆けして、いち早く駆け出す
近づくにつれて段々大きくなる光。新鮮な風も吹き込んでいる
俺は光に飛び込み、待望の地上へと出た。最初は眩しくて目を開けていられないが、じき慣れてきて目の前の光景を見る。二人も追いついてきたようだ
「戻って来たんだな」
「……んっ」
「おぉ」
そして顔を見合わせた俺たちは喜びからか叫ぶ
「よっしゃぁぁぁ──!! 戻ってきたぞぉおおおっ!!」
「んーー!!」
「やったぞぉおおっー!」
俺は感動したのかツーと少し涙を流しながら雄叫びに近い大声を上げる。存分に叫ぶと、魔物が集まってきているのにいち早く気付き、二人の方を見る
南雲はユエを抱きしめると、くるくると廻る。二人は笑顔に満ち満ちた笑い声をあげているが地面の出っ張りに躓いて転倒してしまう。気にしてないのか大の字になるとクスクス、ケラケラ笑い合う
「あーはいはい、魔王様とその奥方様の為に一仕事しますよぉ~」
俺は呆れたように言うと、喜びあっている二人の周りに集まってきた魔物たちを排除するために迅速に動く
「別に? 目の前に立ってる俺を無視して二人を襲おうとしたからって怒るわけないじゃん? ましてや二人が俺の存在を忘れてイチャイチャしてるからってのも違うからな? はははっ」
ブツブツと怨念のように呟きながら"瞬光"も使い、機械のように手を動かして魔物を殲滅させた。
あーいい仕事した。
「うおっ、どうしたんだ? 魔物が殺られてやがる」
「……本当、一体誰が?」
俺の中の何かが切れた気がした
「あっちに魔物がいる気がするぞぉぉぉ! 憂さ晴らしじゃぁぁ!」
"直感"の技能に頼って、
全力ダッシュをしてから暫くして、頭が二つ生えているティラノサウルス擬きの魔物が何かを追いかけていた
「獲物発見っ! 即殺二コマだごらぁぁ! 深淵流暗殺剣術・疾風転斬っ!」
ヒュドラ戦で使用した技名を叫ぶと一瞬にして頭を斬り飛ばした。格好いい技名だが、要するにただの回転斬りである。重要な事なのでもう一度言おう……ただの回転斬りである
無駄に格好よく着地を決めると刀を鞘に納めて去ろうとする……しかし自らが倒した魔物の下敷きにならんとしている少女が見えた。それを助けるために行動する
「深淵流移動術・"
はい、ただの"瞬光"である。"瞬光"を使って少女のもとへと一瞬で移動するとお姫様抱っこをして離れる
「大丈夫か?」
少し深淵モードに入っていたが、あの二人以外の者に"
「は、はいぃ! 助けて頂きありがとうございますぅぅ!!」
シアなのか? いや、別の兎人族の人って事も
「はっ!? そうだった! 私の話を聞いてくだいぃぃ!」
頬を上気させているシア(仮)だったが、いきなりガバッと掴みかかってきた。それを肩に手をやり引き離そうとする
ガオォォォオォォン! グルッ! キキィィィッ!
南雲たちが追い付いたらしく、異世界に似合わない音を響かせて魔力駆動二輪が俺たちの手前に止まる
「遠藤すまなか」
南雲が途中で言葉をつまらせる。それに心配したのか南雲の肩に手をかけて此方を覗きこむユエだったが、そのユエまで硬直して二人はヒソヒソ話し出す
「ユエっ!」
「……ハジメっ!」
すると話し合っていた二人はいきなり抱きしめ合い、此方を向くとグッとサムズアップしてきた
どいうこと?
「彼女できたんだな! おめでとう!」
「……んっ! これで好きなだけイチャ……寂しくないね」
おっとユエさんや、好きなだけイチャつけるとか言おうしただろこら
「いやっ、違うから! 俺はこの子を助けただけで……だよね?」
内心で「いや、この子アンタの将来の嫁さんだよ!?」とかツッコミながら、未だに放心中の彼女に真実を話して貰おうとデコピンしてやると「ひゃうっ!?」と可愛らしい声をあげて戻ってきたらしい
「はやくしてくれ」
「なっ、なんですか?! いきなりキスっ!?」
俺が問い詰めるように接近すると、何を勘違いしてるのか目を瞑り、口をタコのようにしてチューと近づけてきた
「アホ」
今度はデコピンではなく、軽いビンタをする
「な、なにするんですか!?」
「人の話を聞かないからだろうが!」
「話……そうです!
先程は助けて頂きありがとうございました! 私は兎人族ハウリアの一人、シアといいます! 取り敢えず、私の家族も助けてください! ものすっごくお願いしますっ」
いやなんで俺の方見てんの? だから南雲に言えって
「遠藤、助け行ってフラグ回収してこい!」グッ
「……んっ! コウスケ頑張れ」グッ
「いやだからさ……なんで俺ぇぇぇ!?」
続きは6日の昼間く頃ですかね
それではお楽しみに!
雫視点ってかクラスメイトたちの話とか興味ある?下手くそでいいなら
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