深淵卿に憑依しました リメイク   作:這いよる深淵より.闇の主人

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遅れてすいません

お気に入りが増えてくれて嬉しいです!う〜んヒロインにシアはいらないのかなやっぱり……とか思ってきた今日この頃


さて、それではどうぞ!


トラップ

 次の日、浩介が起きたのは集合時間30分前と普段よりも遅い時間だった。念に念を入れて装備を今一度だけ確認していると、想像以上に時間が掛かってしまい、宿屋の朝飯を味わう事なく急いで口に詰めて集合場所であった広場へ向かった

 

 

 

 

「おはよう雫」

 

「おはよう……て、どこ行ってたの?」

 

「……今さっき起きたばかりで走ってきたんだよ」

 

「あ、ごめんね? 昨日お邪魔しちゃったから——」

 

「問題ない」

 

 急いだ甲斐あって何とか間に合った浩介は近くにいた雫に挨拶をする。どうやら俺の不在に気が付いていなかったようだ

 

「よし、全員揃ったな?」

 

「……あれ、そういや遠藤——」

 

「先に言っておきますが、いますからね〜メルド団長!」

 

 もはや定番となり始めた「あれ、遠藤いなくね?」という流れを断ち切るべく、メルド団長の目の前へ素早く移動して大きめの声で割り込む

 

「安心しろ浩介! お前がいた(・・・)事は分かっていたぞ!」

 

「……そうですか、また俺がいない感じで話が進むのかと」

 

(え、いたって……俺今来たばかりなんだけど……)

 

「お前はいつも集合10分前には来ているからな! 

 よし、それではこれより【オルクス大迷宮】での実戦訓練を開始する。今回挑戦する階層の魔物はお前たちからすれば弱すぎるくらいだと思うが、油断と慢心だけはするな! もし、仲間がピンチになったら皆んな助け合うんだ、どんなことがあってもな、いいなっ!」

 

 メルド団長のいつになく真剣な表情と言葉に、全員が気を引き締めて返事をすると、満足そうに頷いた。

 

「では、行くぞ!」

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 初めて入った迷宮の中は予想よりも明るい方だった。といっても奧まで見渡せるわけではなく、壁に埋まっている鉱物のおかげでぼんやり見える程度だ。通路の広さ的には龍太郎二人分くらいなので、剣を振るうには支障ない

 

 辺りを観察しながら指示された隊列を組みながら進んでいると、少し広めのスペースに出た。ドーム状の場所で天井の高さは倍程度はありそうだ。

 

 メルド団長の反応と、直感が何か(・・・)の存在を察知したので、腰の剣に手をかける。すると、壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出てきた。

 

「よし、光輝達が前に出ろ。他は下がれ! 交代で前に出てもらうからな、準備しておけ! あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」

 

 天之河を含めた7人が相手をするらしいので、剣にかけていた手を離して大人しく戦闘を見る。ラットマンと呼ばれたネズミマッチョな魔物が結構な速度で飛びかかってくると、前衛組の天之河、雫、龍太郎が相手をする。

 

 まずは天之河だが、勇者らしく光属性の性質が付与された"聖剣"と呼ばれるテンプレートなアーティファクトを振るって纏めて葬っている。

 

 龍太郎の天職は”拳士”なので、籠手と脛当てを装備している。これも衝撃波を出すことができるアーティファクトで、本人は「アニメキャラみたいで格好良くね?」とか言っていたが、ちゃんと俺の教えた"八極拳"を駆使して迫りくるネズミ共を流れるように吹き飛ばし、潰している。

 

 最初はラットマンが気持ち悪いらしく、引き攣った表情だった雫も奮闘する二人の姿に気持ちを切り替え、八重樫流の抜刀術や剣術で敵を次々に切り裂いていく。相変わらずの洗練された動きと、美しい太刀筋にガン見をしていると、後衛組の詠唱が響き渡る。

 

「「「「暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ──〝螺炎〟」」」」

 

 鈴、恵里、香織、後輩女子(一之宮楓(いちのみやかえで)というらしい)の四人同時に発動した螺旋状に渦巻く炎がラットマン達を吸い上げるように巻き込み燃やし尽くしていく。「キィイイッ」という断末魔の悲鳴を上げながらパラパラと降り注ぐ灰へと変わり果て絶命する。

 

 

「ああ~、うん、よくやったぞ! 次はお前等にもやってもらうからな、気を緩めるなよ!」

 

「優秀過ぎるのも困りもんだな」と苦笑いしながらも控えている俺たちに気を抜かないよう注意するメルド団長。

 

「それとな……今回は訓練だからいいが、魔石の回収も念頭に置いておけよ。明らかにオーバーキルだからな?」

 

 付け足すように言ったメルド団長の言葉に香織達魔法支援組は、やりすぎを自覚して思わず頬を赤らめている。

 

 

 それから何事もなく順調に進んでいき、ついに俺とハジメにも魔物を倒す順番が回ってきた。俺とハジメの二人だけな理由としては単にあぶれたってだけだ

 

「それでは次の二人組は前へ!」

 

「はい、そんじゃハジメ……作戦通りで」

 

「うん」

 

 ハジメに一言そう伝え、犬型の魔物4匹と相対する。ハジメはというと、後ろで地面に手を付いて錬成の準備をしている。

 

「グルルルッ」

 

 まず1匹目が俺を無視して後ろに控えているハジメに駆けて行こうとしたので、右へ横一閃して真っ二つにする

 

「「ガルルッ!」」

 

「ハジメは左頼む」

 

「分かった!」

 

 流石に浩介の存在に気がついたらしく、次は左右同時に2匹が襲い掛かってきた。左をハジメに任せて錬成で足止めして貰っている隙に口を開けて噛みつこうと突っ込んできたもう1匹の顎を蹴り上げ、無防備に宙に浮いた所を縦に一閃して殺し、錬成で動きを誘導されて真っ正面から突っ込んできた1匹も同様に殺す

 

「ハジメ、コイツの動き止めるから埋めてくれ」

 

 残り1匹の攻撃を避けつつハジメにそう伝えると、柄頭を犬型の頭に振り落ろして地面に叩きつける。痙攣しているのか動けない所を錬成で埋めて更に動きを封じる

 

「ハジメって短剣持ってたよな?」

 

「うん、この調子だと使わなさそ——「いや、コイツ埋まってるだけだから殺らないと駄目だろ? ハジメが(・・・)」あ、うん」

 

 何となく察したようで、ハジメは腰に装備していた短剣を抜いて犬型の喉笛を切り裂いて倒した。

 

「メルド団長、終わりました」

 

「う、うむ……良い錬成の使い方だったな! 浩介も見事だ。よし、下がって魔力回復薬を飲んでおけよ! 全員終わったら次の階層に進むからな!」

 

 苦笑いをしつつもそう言ってくれたメルド団長に礼をして列に戻る。今の倒し方を不満そうに思っている奴がいるのを横目に最後尾に向かった。そこには……

 

「やっほ〜」

 

 なぜか、えりがいた

 

「何で此処にいんの? お前」

 

「だって次の階層に進むまでは自由にしてて良いってメルド団長が言ってたんだもん」

 

「雫とか香織、鈴がいるんだがら三人と——」

 

「鈴ちゃんとは昨日いっぱい話したしぃ、香織ちゃんは南雲君ウォッチングに夢中でしょ? 雫ちゃんは昨日の夜、浩介君を独り占めしてたんだから今ぐらい良いでしょ?」

 

(ハジメウォッチングって……確かに香織の視線はハジメに一点集中だけどさ——え、てか何で知ってんの?)

 

「あれ、もしかして昨日の夜いたの? ど、何処に?」

 

 昨夜のことを思い出そうと記憶を辿る。確かに雫を部屋に招き入れた時の廊下は誰もいなかった。扉の前にいたとしたら直感で分かる筈……分かるよな? 

 

「僕はただ、不安に怯えるフリして色々と慰めて貰いに行こうとしてたら香織ちゃんと雫ちゃんの二人が部屋を出ていったからバレないように着いて行っただけだから……ナニしてたかは分からないよ?」

 

「お、おまっ!? そういう(アッチ系)話は止めろって言ったよな? 怒るぞ?」

 

「はいはい、それで昨日は何か進展あった?」

 

「……特に何も」

 

 ニヤニヤとからかうように聞いてきた恵里だったが、浩介の返答を聞くと呆れたようにため息をつく

 

「そ、そんな話よりも……ちょっと頼みたい事があるんだが——」

 

「……?」

 

 

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 二十階層まで進むと、メルド団長に「浩介、お前も前に出ろ」と言われたので、勇者パーティーと合流することになった

 

 後衛の四人に「よろしく〜」と、軽く挨拶すると、前衛である三人の隣へと並ぶ

 

「頑張りましょ、浩介」

 

「おう」

 

「よろしくな!」

 

「おう、守りは任せたぜ」

 

 龍太郎からの「おうっ!」との力強い返答を聞き、正面に向き直る。「遠藤、俺は——-」と、何かを言いかけた勇者の言葉はメルド団長の「ロックマウントだ! 二本の腕に注意しろ! 豪腕だぞ!」という馬鹿でかい声にかき消された

 

「グゴォァッ!」

 

「ぐぅおっ?!」

 

 龍太郎がロックマウントの剛腕を何とか受け止め、三人で反撃をしようと接近した瞬間、急に後ろへ下がると仰け反りながら大きく息を吸った

 

「──っ?!」

 

「グゥガガガァァァァアアアア────!!」

 

 直後、部屋全体を震動させるような強烈な咆哮が発せられた。

 

「ぐっ!?」

「うわっ!?」

「きゃあ!?」

 

 浩介は直感のおかげでギリギリ離脱することができたが、三人は直撃を食らってしまったらしく、麻痺でもしたかのように硬直してしまった。

 

 ロックマウントはその隙に、傍らにあった岩を投擲する。迫る岩を迎撃をしようと杖を向け、魔法を発動しようとした香織達だったが、目の前の衝撃的光景に思わず硬直してしまった。

 

 

 何故ならば飛んできている岩……否、それは岩ではなくルパンダイブで突っ込んできているロックマウントだったからだ。心なしか顔がデレデレしている

 

 詠唱を止めてしまった香織達では対処できないと判断した浩介は技能を使って壁を走り、飛んでいるロックマウントの首を落とした

 

 さきほどまで、「いやぁぁぁ! 変態ぃぃ」とか騒いでいた香織達は別の意味で「ヒィッ?!」と悲鳴をあげた

 

「貴様、よくも香織達を……許さない!」

 

 香織たちの悲鳴を勘違いした天之河が怒りをあらわにすると聖剣が輝き出す

 

「万翔羽ばたき、天へと至れ──"天翔閃"!」

 

「あっ、こら、馬鹿者!」

 

 メルド団長の静止を聞かずに発動したその技は、後方のロックマウントを真っ二つにオーバーキルし、奥の壁を破壊し尽くした

 

 殺りきったぜ! と清々しい顔をした天之河にメルド団長は近付いていき、思いっきり拳骨をした

 

「へぶぅ!?」

 

「この馬鹿者が。気持ちはわかるがな、こんな狭いところで使う技じゃないだろうが! 崩落でもしたらどうするんだ!」

 

 メルドの言葉に「うっ」と声を詰まらせ、バツが悪そうに謝罪をした天之河。そんな落ち込んだ様子の彼を後衛組が近づいてきて慰める

 

 ふと、香織が崩れた壁の方に目を向けた

 

 そこには青白く発光する鉱物が花咲くように壁から生えていた。その美しさに香織を含め女子達は夢見るように、うっとりした表情になった。

 

 

「ほぉ~、あれはグランツ鉱石だな。大きさも中々だ。珍しい

 この鉱石は加工して指輪・イヤリング・ペンダントなどにして贈ると大変喜ばれるらしい。求婚の際に選ばれる宝石としても人気だ」

 

 

「素敵……」

 

 と、香織がチラッとハジメの方に視線を向けている。それをニヤニヤ見守る雫と恵里、鈴だったが、その三人をヤレヤレと眺めていると、目が合い、全力で反らされてしまった。why? 

 

「だったら俺らで回収しようぜ!」

 

 ハジメと香織を見た檜山は「チッ」と舌打ちをすると、グランツ鉱石に向けてヒョイヒョイと壁を登っていく

 

「こら! 勝手なことをするな! 安全確認もまだなんだぞ!」

 

 その注意を聞いてないフリをして無視を決め込むと、まるで猿のようにどんどん登っていく

 

 すると、トラップがないか探っていた団員は顔を青ざめさせて叫んだ

 

「団長! トラップです!」

 

 しかし、騎士団員の警告もむなしく、檜山は鉱石に触れてしまった

 

 その瞬間、部屋全体に魔方陣が広がった。魔方陣は徐々に白く光輝いていく

 

「くっ、撤退だ! この部屋から急いで出ろ!」

 

 メルド団長の叫び声もむなしく、誰一人として間に合わず、一瞬の浮遊感の後、地面に叩きつけられた

 

 その場所は石造りの橋の上で、俺達の位置はちょうど中間で、両サイドには奥に続く通路と上階への階段が見える

 

 それを確認したメルド団長が、険しい表情をしながら指示を飛ばした。

 

「お前達、直ぐに立ち上がって、あの階段の場所まで行け。急げ!」

 

 雷の如く轟いた号令に、わたわたと動き出す生徒達。

 

 しかし、迷宮のトラップがこの程度で済むわけもなく、撤退は叶わなかった。階段側の橋の入口に現れた魔法陣から大量の魔物が出現したからだ。更に、通路側にも魔法陣は出現し、そちらからは一体の巨大な魔物が……

 

 その時、現れた巨大な魔物を呆然と見つめるメルド団長の呻く様な呟きがやけに明瞭に響いた。

 

 ──まさか……ベヒモス……なのか……

 

 




さてさて、次はベヒモス戦です!あ、そういえばTwitterやってるのでフォローしてくれると嬉しいです

それでは次の話でお会いしましょう!

ではでは

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  • 遅い。リメイク前と一緒でもええから早く
  • 普通、このペースでこの内容なら普通程度
  • このまま数ヶ月に一話でもいい

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