俺だけレベルアップの仕方が違うのは間違っているだろうか 作:超高校級の切望
【アルテミス・ファミリア】の主な活動は狩猟だ。とはいえ、狩るのはもっぱらモンスター。要するに地上で繁殖したモンスターの子孫を討伐しているのだ。
地上のモンスターは魔石を切り分け子孫に与える。強いモンスターほど魔石は良質になるので、逆説的に魔石の小さいモンスターは弱くなる。
それでも元が強力ならそれなりの強さを持ったモンスターになるし、一般人からすれば驚異以外の何物でもない。故に、その日もモンスターを狩りに向かう。
「標的は山に住み着いた竜だ。今のところ、家畜にしか被害は出ていないが相手はモンスター。何時人を襲うか解らない。速やかに殲滅するぞ」
「「「はっ!!」」」
「はーい!」
一人だけズレたのはランテだ。天真爛漫で、ムードメーカーだが流石にギロリと睨まれる。
「地上で繁殖したとはいえ、ドラゴンだ。油断はするな。気を引き締めろ」
「はい」
団長のレトゥーサに叱られシュン、と落ちこむランテ。まあ、今回の相手は竜種だ。最強種の一つ。警戒しておいたほうがいい。
「? なんか、騒がしいですね」
竜の住まう山へ近付くと、何やら確かに騒がしい。人ならざる、かと言って獣でもない叫び声。
「別の群でも来たか、ボスの座をかけた決闘でも行われているのか……どちらにせよ気が立っている。皆気を引き締めろ」
と、アルテミスが警戒するように注意した時だ。ガサガサと音が響き枝や葉が落ちてくる。
「下がれ!」
即座に後ろに飛ぶアルテミスとその眷属。枝をへし折りながら落ちて来たのは、青黒い鱗を持つドラゴン。その首筋に噛み付くのは一匹の漆黒の熊。
「な、なに!? キラーグリズリー!?」
「いや、でかいぞ!?」
既知のモンスターの名を叫んでみたが明らかに違う。サイズが知ってるモンスターの倍近くある。
ミチミチとドラゴンの首に牙を食い込ませ、ブチンと首を千切り取った。強い、地上で繁殖した個体とは思えぬ程に。
「はああああ!」
真っ先に我に返った団員がハルバードを振るう。しかし、弾かれる。熊はジッと【アルテミス・ファミリア】の眷属達を眺め、すぐに興味でも失せたかのようにドラゴンを咥えると踵を返す。
「…………な、なんですか………あれ」
「わからん。が、人里近くに竜をも喰らう怪物が出た以上放任はできない。獲物を持って帰ったのは、巣があるやもしれん。考えたくはないが、群の可能性も」
「………目は、貫けるかもしれません」
地上のモンスターとして異常なまでの耐久力を持つモンスター。それが数匹の可能性に顔が青くなる一同だったがレトゥーサの言葉に可能性を見出す。
「今の装備では心許ない。流石に、縄張りを手に入れて一日二日で人里に降りてくるとは思えない。今日は巣の位置の確認。その後、村で警戒しつつ装備を整える」
「はい!」
そして、熊が歩んだ跡、折れた枝や倒された木々を目印に進んでいくと、無数に積まれたドラゴンの死体があった。その眼前に立つのは、一人の青年。
「『起きろ』」
たった一言。その一言に、アルテミスは目を見開き飛び退いた。
「アルテミス様?」
「……なん、だ………あれは? 何故、
彼女が慌てる姿など、初めて見たかもしれない。一体何が起きるのかと振り向けばドラゴンの死骸からズルリと無数の黒い靄が溢れ出す。それは竜の爪や翼、牙を型取り古い肉体を捨てるかのように顕現する。
「カルルル」
「クアアアア!」
無数に現れる漆黒の竜種。それ等は、たった一人の人間に跪く。
「それで………そこに隠れているのは誰だ?」
「「「────!?」」」
上級クラスの眷属である【アルテミス・ファミリア】達をして、ギリギリ五感で捉えられる距離。それをあっさり察知し振り返る男。眷属達が動揺しているとアルテミスが飛び出す。
「アルテミス様!?」
「…………君は………人間、か?」
「ああ………」
「……………………」
アルテミスはじっと青年を見つめ、周囲の黒いモンスターを見回す。
「………君は、間違いなく人間だ。だが、その力は我々に近い………一体何者だ?」
「…………【ヘスティア・ファミリア】で世話になっている、水篠旬」
「ヘスティア? 君は、ヘスティアの眷属か!?」
「ええ、一応……」
旬と名乗った青年の言葉にアルテミスは顎に手を当て考え込む。
「嘘は、ない………無い事が、解る。ならやはり人間? ううむ………」
これが【アルテミス・ファミリア】と水篠旬との出会いだった。
俺だけレベルアップの件の女性キャラを出すなら
- エシル(悪魔娘)
- 観月絵里(ヒーラー)
- 今宮さつき(ヒーラー)