俺だけレベルアップの仕方が違うのは間違っているだろうか   作:超高校級の切望

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シルさんマジで何者なんやろ。
それを見抜くアリーぜさんも。
てか今更だけど初期設定ではレヴィス=アリーゼだったんだなあ。
予想はしてた。けどアリーゼのビジュアル見て勘違いかと思ったらある意味読み間違いではなかった!


保護者目線

 ベルが魔法を覚えた。何でも『豊穣の女主人』でシルに渡された本が魔導書(グリモア)と呼ばれる、魔法発現書だったらしい。

 読むだけで魔法を得られる破格の魔道具はしかし一度見れば効果を失う、物によっては億は下らぬ希少道具。それを、読んでしまった。つまり残ったこれはただの本。

 ベルは素直に謝ろうとしたがヘスティアは猛反対。当然だ、返せる宛などない。旬ならあるいは稼げるかもしれないが、ベルはこれは自分の責任だからと『豊穣の女主人』に走っていってしまった。

 店主のミアはそんなものを忘れるものが悪いと言って忘れろとの事だ。

 

「………」

 

 とはいえ、やはり気になる。そんな希少な物を忘れるだろうか? そもそもそんな物を持って何故酒場へ? 購入した帰り?

 いや、高くて数億、安くても数千万する物を購入したあとに酒場などによるものか。金銭的にではなく、精神的に。

 という訳で現場にやってくる。そして、初めて来た時ベルと共に座っていた席に、誰かが居た。それ自体は、別段不思議でもない。だが、店の中にはその客とミア、シル以外の誰も居なかった。

 

「あら、こんにちわ。偶然ね、相席していかない?」

「偶然、ね………」

 

 銀色の髪をした、美しい女神は旬を見てニコリと微笑む。旬は胡散臭げに彼女をジロリと見つめ、ため息を吐くと対面するように席に座る。

 

「あの子は気に入ってくれたかしら?」

 

 何を、とは言わないし、旬も何が、とは尋ねない。

 

「そうだな。夜の内に飛び出して、ダンジョンに潜って気絶するまで魔法を撃つほど喜んでたよ」

「それは良かったわ。でも、少し悪い事をしちゃったわね。あの子を運ぶのは大変だったでしょう?」

「俺がその場にいたわけじゃない。アイズが守っていたって、リヴェリアに聞いたんだ………何だその顔」

 

 旬は夜の内抜け出したベルには気づいていたが、帰りが遅く、心配して迎えに行ったら出会ったリヴェリアからアイズに膝枕されていると聞いた時のことを思い出しているとフレイヤは半眼で頬を膨らませていた。

 

「気になる男の子が、美人と噂の女と話していたと聞いたのよ? それも、派閥以外の男とはまず話さない王族(ハイエルフ)の女。少しくらい嫉妬しても良いじゃない………」

「? ベル君は彼女と話してないと思うが………」

「…………ふ、ふふ。何だか怒る気も失せちゃったわ」

 

 旬の言葉に態度を一変させクスクス微笑むフレイヤ。旬にはやはり理由が分からず首を傾げる。

 

「しかし、意外だな。仮にも美の神。自分の容姿には絶対の自信があるだろうし、事実それに相応しい容姿をしているのに、嫉妬なんかするなんて」

「そうね。自分でも、子供らしいと思うわ………」

 

 楽しそうに笑うフレイヤに、旬は目を細めた。

 

「ベル君をストーキングするのは勝手だが、あまり迷惑をかけないように」

「迷惑をかけると言うなら、最近あの子のそばに良くない子が居るみたいだけど?」

 

 リリのことだろう。最近側に、よりも、良くない子、と言う単語の方にこそ旬は確信した。

 

「汚れ切ることも出来ない中途半端な子。相手が悪人である事を望むくせに善人にすがりたい愚かな子」

「悪人であることを望む、ね。自分がやってる悪事を正当化したい訳か。悪いのは冒険者って……」

「でしょうね………」

「ならこの数日で、ベル君が分かったはずだ。その上でやるなら、俺は情けをかける気はない」

「そう。まあ、私は()()に興味はないわ………けど、あの子には聞いてあげても良いんじゃないかしら?」

 

 

 

 

 別れ際頭を撫でようとしてきたフレイヤの手を払い、デメテルにはさせたくせにと剥れるフレイヤに何処で見てたと苦々しい顔をした旬だがフレイヤは答えず去っていった。

 旬は日替わりランチセットを頼み、食べ終わると店から出ていった。

 そしてその日の夜、旬は母を癒せる『命の神水』や『悪魔の君主の指輪』などを手に入れた事で確認が疎かになっていた戦利品の整理をしていた。バルカを倒し新たに手に入れた新たな『バルカの短刀×2』。それもあり手持ちを整理する事にしたのだ。悪魔王の武器、とんでもないチートだった。

 

「あ、あの、神様、旬さん………」

 

 と、何やらいつ口に出そうか、いやだけどと迷っている様子だったベルが意を決した様に声をかけてきた。ヘスティアと旬は、当然そんな反応をするベルの話を適当に聞くことなどない。

 

「その、最近一緒のサポーターの女の子が、厄介事に巻き込まれているみたいで………ここで保護してあげる事って、出来ないでしょうか?」

 

 詳しく聞くと、彼女を嵌めようと提案してきた冒険者がいるらしい。だから、保護したいとか。なかなか無理を言っているのは理解しているのだろう。2回目の言葉はだんだんの尻込みしていく。

 

「ベル君。そのサポーター君は、本当に信用に足る人物かい?」

「え………」

 

 ヘスティアの言葉も最もだ。なにせベルはそのサポーターを雇った日にナイフを落とし、そのナイフはサポーターが持っていたという。

 拾ったのを報告せず、地上に戻った。勿論地上に戻り解散した後落として、リリが偶然見つけた可能性とてあるが、そんなもの前者の可能性に比べれば低い。それでも、ベルにとっては後者の可能性のほうが高かった。

 ヘスティアの言葉を理解し、ベルが反論しようとテーブルに乗りだそうとする前に、旬が口を開く。

 

「俺は思えない」

「旬さん!?」

「直接会って、見て、思った。俺はそれなりに人の顔色をうかがっていた時期があったからね。まあ、あの連中に比べればだいぶマシだが、あれは人を己の為に利用する者の目だ」

 

 旬の世界では、『トカゲ』などと呼ばれるハンター。『しっぽ切り』と言う、囮に使い切り捨てるから名付けられた連中がいる。旬はそいつらの標的にされた事があるし、その悪意に満ちた目を覚えている。

 リリの目は、己の行為に罪悪感を覚えながらも相手が悪いと言い聞かせ、己の為に他者を利用できる目だった。

 

「そのリリさんを嵌めようと提案してきた冒険者って、以前パルゥムの女の子を追い掛けてた冒険者じゃなかった?」

「え、あ………はい。でも、何で解ったんですか?」

「君はその時点で、その冒険者が弱い者を嵌めてお金を巻き上げる冒険者と、そう思った?」

「は、はい………」

「本当に?」

「………………」

 

 その言葉にベルが黙り込む。何かを言う前に、旬が視線をヘスティアに向ける。神の前では嘘は通じないと暗に言っているのだ。

 

「彼女にも理由はあるのかもしれない。でも、その理由を盾に人を貶める理由にはならない」

「……………その通りだと、思います」

「…………ベル君」

 

 人の善意を信じている彼には、辛い選択をさせると思う。それでも、あの娘とは縁を切ったほうがいい。それが旬の素直な感想だ。

 

「それでも、僕は彼女を信じたいんです」

「─────」

 

 だが、ベルはそんな旬とは真反対な意見をいう。

 

「お願いします。僕に、一度だけ彼女を信じる機会を、彼女の行動を許す機会をください………」

「……………俺はあの日、ベル君のナイフを取り返した時に彼女を見逃した。既に一度、チャンスはやった………」

「そこを、なんとか………」

「旬君、僕からもお願いしていいかい?」

 

 ベルの言葉を擁護したのは、まさかのヘスティアだった。彼女もリリを疑っていたはずなのだが。

 

「ベル君はこうなったら頑固だぜ? それに、ベル君は人を見る目があると、僕は思ってる」

「改心できるはずだから、今回の悪事やこれまでの悪事を見逃せと?」

「傲慢なのはわかってます。今回の件はともかくこれまでの事を見逃すなんて、僕が言えたことじゃないとも…………でも!」

 

 はぁ、と旬はため息を吐いた。

 

「…………彼女にはチャンスを上げた」

「っ! 旬さん、そこをなん────」

「だから君にもチャンスをあげよう」

「…………え?」

「君が、彼女を信じるチャンスを………」

「あ、ありがとうございます!」

 

 旬は以前、諸菱やエシルなどネジが一本抜けてる相手とうまくやれるのではないかと思ったが、ベルもその抜けてるタイプだったらしい。

 

 

 

 

 翌日、流石にダンジョンに潜る気にもなれず街を歩く旬はふと地下から複数の、この都市では上位の強さの人間を筆頭にそこそこの強さを持った者達が複数人で動いているのを感知する。というか、この気配は

 

「…………?」

「どうかしたのか? 水篠旬」

 

 と、不意に声をかけられる。振り返るとリヴェリアが居た。

 

「………地下でお前のところの団長が動いてるみたいなんで」

「…………驚いたな。解るのか」

 

 と、リヴェリアが微かに目を見開く。

 

「まあ、お前も事情を知る者か…………ここで話すのはなんだ。場所を変えよう」

 

 

 

 

「食人花の調査?」

 

 リヴェリアいわく、怪物祭(モンスターフィリア)や18階層で現れた食人花、50階層で現れた芋虫型のモンスター、極彩色のモンスターと名付けた魔石の色が通常と異なるモンスター達の調査をしていたらしい。

 祭りの後【ロキ・ファミリア】で調べたところ、下水道にて食人花を見つけたらしく、新たな手がかりを探して再調査しているらしい。

 

「そちらはなにか有力な情報はないか? フィンの気配を感じ取れるぐらいだ、何か違和感を感じたなら教えてほしい」

「オラリオの下水道は魔石灯や魔石を使った浄水装置のせいで魔力が読みにくいからなあ。Lv.4程度あれば多少離れていても感じ取れるが、祭で現れたのは打撃耐性を除けばLv.3程度だし………」

「…………そうか」

 

 ならば仕方ないか、とリヴェリア。

 コーヒーを一口飲むと、極彩色の調査をしていた『ロキ・ファミリアの副団長』としての顔ではなく『リヴェリア』としての顔を出す。

 

「時に、下を見る前から何やら考え込んでいたようだが、何かあったのか?」

「…………」

「何、お前ほどの男でも悩むことがあるのかと、個人的に興味があってな」

 

 話したくないなら話さなくていい、と微笑むリヴェリア。

 

「………少し、ファミリアの子の事でね。教育方針、というわけでもないけど、彼の我儘を、尊重すべきか否定すべきか………」

「ああ、なるほど…………危険なことか?」

「それはまだ。どの程度やるのか分からないからな」

「人間関係というわけか………ふむ、まあ考えなしに進まれると、見ているコチラとしては不安で仕方ないか」

 

 懐かしむような遠くを見つめるリヴェリア。過去に似たような経験でもあるのだろうか。

 

「信じてやれ。その上で見てられないと思ったら、ひっぱたいてでも止めればいいさ」

「経験則か?」

「ああ。今では、親子のようになれたと思っているよ」

「……………子育ては大変ってことか」

「おい、お前まで私を母親(ママ)とでもいう気か?」

 

 むっ、と顔を顰めるリヴェリア。何か癇に触ったのだろうか? 母親がどうの言ってるし、母親扱いされるのが嫌なのだろうか? まあ年寄り扱いに取られたのかもしれない。

 

「そういう意味じゃ無かったんだが………そう取られたなら謝罪しよう」

「む、いや……すまんな。敏感になりすぎた」

 

 旬の謝罪に、リヴェリアも素直に謝った。

 どちらも同時に吹き出した。

 

「なかなか楽しい一時だった。この店は私が奢ろう」

 

 リヴェリアはそう言って先を立つと、ああそうだ、と振り返った。

 

 

 

 

 

 迷宮の中で、男達が懸命に走る。走ったからだけでなく、興奮したように息を荒げていた。

 

「へへ、まさか魔剣まで手に入るなんてなあ………!」

「おい、良いから行くぞ! 俺達まで蟻共の餌になっちまう」

「なぁに、アーデの奴が餌になってくれてるさ」

「違いねえ!」

 

 ゲラゲラと笑う男達。そろそろ良いだろうと、走るのをやめ歩き出す。

 金時計に魔石に、魔剣。そして大金となる宝石が入っているであろうノーム金庫の鍵。魔剣は、勿体ないから自分のものにしよう。あとは全部金に変える。そうすれば、また()()()を飲める。

 

「ひひ………アーデぇ、お前のぶんも味わってやるからなあ」

「えー、必要なくないっすかぁ?」

「バカ言うなお前ら。感謝してやれよ、俺らの為に金稼いでくれたんだからなあ」

「あー、まるで働き蟻でしたねえ。今頃虫けらどうし仲良くやってるでしょうね」

「新しい蟻見つけねえとですねえ」

 

 上機嫌で、自分は今後も付きまくるに違いないと笑う男。カヌゥと言うその男は、不意に目の前に人影が現れたことに気付く。

 降りてきた冒険者だろうか? 世界に祝福された気になっているカヌゥ達はふん、と鼻を鳴らし脇に避ける事もせず歩く。相手にどけと言わんばかりにズンズンと………が、相手は足を止めるものの横に退く事はなかった。

 カヌゥは苛立ったように舌打ちすると目の前の男に向かって叫んだ。

 

「おい邪魔だ! さっさとどけ! ぶっ殺されてえのか!?」

「どいても良いぞ」

 

 鎧も来てないような、頭のおかしいかよっぽど貧乏なのかの何方かとしか思えない相手に強気になったカヌゥ立ったが帰ってきた声はとても落ち着いていた。

 

「ただ、内の団員についてたサポーターから奪った金目の物を全て返したらな」

「………………」

 

 その言葉に、カヌゥ達の表情が変わる。

 

 

「なんの事ですかい? あっしらにはさっぱり………」

「口封じ、とかは考えない方がいい。今ならギルドに報告もしないでやる」

 

 その上から目線の言葉に、絶頂だったカヌゥ達の顔にカッ! と血が登る。

 一人二人、殺したところで一緒だ。大して金になりそうな装備も持ってないくせにいきがりやがって!

 

「死ねやあ!」

 

 カヌゥが魔剣を振るうと炎が飛び出し、爆ぜる。劣化しているとはいえ魔法は魔法。カヌゥ達からしたら、それはどんな相手にも通用する最強の攻撃に思えた。

 

「…………え?」

 

 だから、傷一つなく立っている男を見て、頭が真っ白になる。

 

「警告はした………」

 

 男、旬は目を細めながらバルカの短刀を装備する。カヌゥはひっ! と喉を鳴らし後退る。

 

「ま、待てお前! こんな事していいと思ってんのか!?」

「アンタの団員はめたのは、アーデの奴で!」

「お、俺達を殺す気かよ!? ひ、人殺しなんてして、【ガネーシャ・ファミリア】が黙ってねえぞ!」

「警告したと言ったろ?」

 

緊急クエストが発生しました

  『緊急クエスト∶敵を倒せ!』

プレイヤーに敵意を持つ者達が現れました。

全員倒し身の安全を確保してください

これに従わない場合心臓が停止します

残り人数∶3人

倒した人数∶0人

 

 一歩一歩近付いてくる旬に、カヌゥ達の顔は青ざめる。それでもせめて強がろうと、叫ぶ。

 

「──────!!」

 

 叫んだつもりだった。パクパク動く口から、声が漏れることはない。何せ、肺から切り離されてしまったのだから。

 

残り人数∶0人

倒した人数∶3人

クエスト完了

『緊急クエスト∶敵を倒せ』をクリアしました

クエスト報酬

報酬を選んでください

次の中から選べます

報酬1.能力値ポイント+3

 

 危険度が少なかったからだろう。報酬もしょっぱい。旬は鍵を回収するとその場から姿を消した。

 

 

 

 カフェにてヘスティアと面談するリリを、旬は横目で見る。旬にまだトラウマがあるのかリリはチラチラ見ては震えていた。ベルは席が足りなかったので取りに行ってる。

 

「素直に聞くよ。サポーター君、君はまだ打算を働かせているかい?」

 

 嘘は許さぬと、嘘は通じぬとヘスティアは目で語る。リリは神の持つその雰囲気に押されながらも、ヘスティアの目をまっすぐ見つめ返し、答えた。

 

「ありえません。リリはベル様に助けられました。もう、あの人を裏切る真似なんかしたくない」

「……うん、わかった。君のその言葉は、まず信じよう」

 

 ヘスティアが、その言葉を本心だと認めた。もし謝罪したいと心から望むなら今後も態度で示せと神様らしい事を言っていたヘスティアは、しかしベルが戻ってくるとこれみよがしに抱きつきベルと自分の関係をアピール。そのままリリもベルに抱き付き睨み合ったので旬は助けを求めるベルを無視してその場から離れた。

 

「鍵は………俺が判断できてからでいいか」

 

 旬はそう言うと鍵をイベントリにしまう。

 そして、代わりにある手紙を出す。

 

「【ロキ・ファミリア】本拠(ホーム)の、招待状ねえ………」

 

 リヴェリアから渡されたものだ。リヴェリアはある程度察してか、落ち着いたらで良いと言っていたが、リリの件がひとまず片付いたというのに渡すタイミングを失った。

 まあ夜になれば流石に落ち着くだろうからその時に話せば良いだろう。後ベルには内緒にしとこう。絶対恐れ多いですよー! なんて叫んで逃げる。




感想お待ちしております

俺だけレベルアップの件の女性キャラを出すなら

  • エシル(悪魔娘)
  • 観月絵里(ヒーラー)
  • 今宮さつき(ヒーラー)

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