岸田政権1000日、円安株高進行の〝キシダノミクス〟 実質賃金はまだ…

1ドル=161円台を付けた相場を示すモニター=28日午後、東京都港区の外為どっとコム(酒井真大撮影)
1ドル=161円台を付けた相場を示すモニター=28日午後、東京都港区の外為どっとコム(酒井真大撮影)

首相在職1000日を迎える岸田文雄首相の経済政策「キシダノミクス」を最も高く評価するのは株式市場だ。3月には日経平均株価が初めて4万円の大台を超えた。ただ、政権が最重要視する物価変動を考慮した実質賃金の上昇は、思うように進まない。円安進行で輸入コストの上昇圧力が再び高まっており、物価と賃金がともに上昇する好循環には道半ばだ。

日経平均の28日終値は3万9583円08銭。岸田政権発足時から39%上昇した。企業統治改革を促したほか、1月には新たな少額投資非課税制度(NISA)を開始したことが評価された。

日銀の資金循環統計によると、個人が3月末時点で保有する金融資産残高の合計は2199兆円と5四半期連続で過去最高を更新。政権が掲げる「貯蓄から投資へ」の流れが現実になった形だ。

株価と対照的なのが実質賃金だ。4月まで25カ月連続でマイナス圏に沈む。令和6年春闘では大企業で平均5・58%の賃上げ率を実現したが、中小企業の賃上げは鈍く、物価高に追い付いていない。政府は中小企業の労務費の価格転嫁を後押しするため下請法の改正を視野に入れており、省力化投資も支援している。

明治安田総合研究所の小玉祐一チーフエコノミストは「民間の価格交渉に介入しようとする政府の姿勢に本気度を感じる」と評価する。ただ、民間取引は無数にあるため、どこまで実効性を確保できるかは不透明だ。

物価高に苦しむ国民の手取りを底上げする政策は、「バラマキ」とも批判される。首相は21日、5月で打ち切ったばかりの電気・ガス料金の補助金を8月に復活させることを突如発表し、政府内では困惑が広がった。

28日には円相場が一時1ドル=161円台まで下落。円安で値上げラッシュが再燃すれば、実質賃金のプラス転換が遅れ、実現しても定着しない可能性もある。キシダノミクスの果実を国民が広く享受できるのは、まだ先になりそうだ。

(米沢文)

会員限定記事会員サービス詳細