「PTSD 心のケガを手当てする」① ~つらい体験がトラウマとなったら~

24/07/22まで

健康ライフ

放送日:2024/06/24

#医療・健康#ココロのハナシ#カラダのハナシ

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【出演者】
飛鳥井:飛鳥井 望さん(青木病院院長・精神科医)
聞き手:福島祐理 キャスター

PTSDとは?

――青木病院院長で、精神科医の飛鳥井 望(あすかい・のぞむ)さんに伺います。飛鳥井さんは、被害者支援都民センター理事長で、これまでおよそ30年、大きな災害や犯罪被害で心に傷を負った方の心のケアをされてきました。

PTSDというのは、つらい体験をした時の後遺症のようなものかなという認識だったんですけども、このPTSDについてわかりやすく教えていただけますか?

飛鳥井:
PTSDというのは「Post Traumatic Stress Disorder」の頭文字からなっておりまして、日本語では「心的外傷後ストレス症」といいます。

――心的外傷、つまり“心が外から傷を負う”ということですね。

飛鳥井:
この心的外傷というのは、よく「トラウマ」といわれるもので、いわば精神的衝撃により心がケガをするような体験なんですね。PTSDとはそのような体験による強い恐怖や不安がもたらす特徴的な症候群です。

――よく私たち、「こういった経験がトラウマになっちゃんたんだよ」と、比較的軽い気持ちでトラウマという言葉を使うこともあると思うんですけども、PTSDのトラウマ・心的外傷は、それとはちがうものなんでしょうか?

飛鳥井:
失恋をしたという場合などにも、日常会話の中ではよく「トラウマになった」と話すことがあると思いますが、定義上はPTSDを引き起こすようなトラウマ体験には該当しません。

PTSDを引き起こすようなトラウマ体験とは、具体的には「災害・重大な事故・暴力による被害・性的被害・虐待・いじめ・戦闘・テロ事件などで、命や体の安全への深刻な脅威を感じたり、悲惨な場面を目撃したり、大切な家族がそのような目にあったことを知ること」です。
トラウマ体験後の早い時期での不眠・不安・神経過敏などのストレス反応は、ほとんどの人が経験しますが、その全員がPTSDになるわけではなくて、その衝撃の記憶は時間とともに和らいではいきます。ただ一部の人はそのトラウマからのストレス症状による精神的苦痛ですとか、生活への支障をきたす状態が続いてしまいます。それがPTSD・心的外傷後ストレス症という精神疾患です。

PTSDかどうかを見分けるには

――つらい体験をした人がすべてPTSDになるわけではないというお話でしたが、深刻な状況かどうかというのはどう見分けたらいいでしょうか?

飛鳥井:
このトラウマによるストレス反応の多くは、しばらくは自分で様子を見ることでも大丈夫です。ただ、次の項目に当てはまる人は、一度専門家に相談してみることをお勧めします。

――では教えていただきましょう。

飛鳥井:
✓ ふとしたときにトラウマとなった出来事の記憶がよみがえり、精神的苦痛を感じることが繰り返されている。

――これは具体的にはどのような症状でしょうか?

飛鳥井:
これは「再体験、侵入症状」といって、トラウマ体験の記憶が自分の意思とは関係なく繰り返しよみがえるフラッシュバックの苦痛ですとか、トラウマに関連した内容の悪夢にうなされるといった症状です。

つぎに…。

✓ トラウマの記憶に結びつくような物事や状況、人物や場所を極力避けている。

――こちらは具体的にどんな症状でしょうか?

飛鳥井:
「回避」といって、例えば、事件や事故のニュースは見ないようにしている、被害の現場には近づけない、といったことです。

そして…。

✓ 過度に用心深くなっていたり、ちょっとした物音などささいなことにもビクッとして過敏に反応したりしてしまう。

――これはどういうことでしょうか?

飛鳥井:
「過覚醒」といいます。ほかに、怒りが爆発したり、物事に集中できない、睡眠障害などの症状が現れることもあります。

最後に…。

✓ 自分自身や周囲の人への信頼感がもてなくなり、物事を否定的にとらえてしまう。

――これはどういうことでしょうか?

飛鳥井:
「認知や気分の陰性変化」といいまして、自分がだめな人間に思えたり、人との関わりや物事を以前のように楽しめなくなる症状ですね。

――これらに当てはまっていたらPTSDの可能性が高いということなんでしょうか?

飛鳥井:
こういった症状があって生活への支障を感じていたら、1人で抱え込まずにぜひ精神科のクリニックや各自治体の精神保健福祉センターに相談していただければと思います。
また犯罪の被害であれば、各都道府県の「被害者支援センター」ですとか、警察の支援室でカウンセリングを受けることが可能です。

――虐待やDVなど長期に繰り返されたトラウマではPTSDの症状に違いがあるのでしょうか?

飛鳥井:
虐待やDVなどは、そこから逃れることができず、トラウマが長期に繰り返されてしまうような状況なんですね。そういったような場合には「複雑性PTSD」といわれる症状につながりやすいといわれています。

――では、今日のポイントをお願いします。

飛鳥井:
「PTSDとは苛酷な体験により、心がケガをした状態」


【放送】
2024/06/24 「マイあさ!」

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