高知の捜査機関を悪用した詐欺 被害者が実名告白
- 2024年06月24日
「あなたに逮捕状が出ました」
「守秘義務誓約書にサインを」
警察官を名乗る人物からこのような電話がきたら、みなさんはどうしますか?
その後、誘導されたのは高知地方検察庁の偽のホームページ。気づけば700万円をだまし取られていました。特殊詐欺の被害の実態を知ってもらいたいと、今回被害者が実名でNHKの取材に応じました。犯人グループの巧妙な手口とは。詐欺被害の全容に迫ります。(NHK高知放送局記者 佐藤巴南)
詳しくは動画でご覧ください。
「あなたは疑われています」
京都市にある京都精華大学の小田 隆(おだ たかし) 教授(54)です。
専門は絵画やイラスト、美術解剖学。
各地で展覧会を開き、SNSでも作品を積極的に発信しています。
事の発端はことし5月17日。
展覧会の準備に向け慌ただしくしている中、小田さんの職場の固定電話が鳴りました。
相手は、総務省総合通信基盤局の職員を名乗る女。
総務省総合通信基盤局の職員を名乗る女
「おだたかしさんですか?」
「あなたの携帯電話から迷惑メールが大量に送られ、高知市で多くの被害が出ています」
全く心当たりはありませんでしたが、
高知で起きた事件のため、高知県警察本部に電話をつなぐので事情を話してほしいと言われます。
電話は転送され、代わった相手は高知県警察本部捜査2課の「田辺」を名乗る男。
高知県警察本部捜査2課の「田辺」を名乗る男
「LINEで事情聴取をさせてほしい」
「田辺」のLINEには、高知県警を示すマークが表示されていました。
警察官であることを証明するためか、ビデオ通話を使って警察手帳を見せられたうえで、さらに、衝撃的な言葉を告げられます。
高知県警察本部捜査2課の「田辺」を名乗る男
「巨額の詐欺事件に関与していないか?」
「あなたは疑われています」
全く心当たりがなかったのでいったいどういうことか、全然見当もつかない話でした。
疑われたのは、ことし3月東京で起きた実際の詐欺事件。
小田さんは否定しましたが、捜査対象になっているとして定期的に行動連絡をするよう強制。
さらに、守秘義務を誓約する書類にも署名させられました。
あなたが悪いことをしているんですよ、と割と威圧的な感じでした。
ばかばかしいなと思いましたが、
100%疑っているんだなというふうに感じました。
素直に従おうと思っていました。
守秘義務を破ると真っ先に疑われるのはあなただって言うわけですから。
誰にも相談できないまま、1日およそ3回、どこで何をしているか報告を求められました。
「あなたに逮捕状が出ました」
さらに数日後。
「田辺」から追い打ちをかけるように電話がありました。
高知県警察本部捜査2課の「田辺」を名乗る男
「捜査会議の結果、あなたに逮捕状が出ました」
全く何言っているんだろうこの人は、と思いました。何言い出したんだろうなと。
その後、「高知地方検察庁」のホームページを見るよう誘導されました。
そこには、本来存在していない「逮捕状 検索」という項目が。
小田さんは、名前や生年月日、指示された承認番号などを入力。
すると・・・。
表示されたのは、小田さんの名前が記された偽の逮捕状でした。
本当になんだろうこれはと思いました。全くあぜんとしましたね。どういう理由ですかって聞きましたが、「いやもう理由なんかどうでもいいんだ、あなたは逮捕状出ているんです」と。
続いて登場したのが、田辺の上司だという別の警察官「松本警部」。
潔白を証明しようと、小田さんは「松本警部」とLINEで新たに連絡を取ることになりました。
田辺の上司 「松本警部」
「大きな詐欺事件の金の流れをつかむためにあなたの口座を調べる必要がある」
「いま預金している口座の金額を一度送ってほしい」
もう冷静に考えれば、1から10までおかしいんですよ。
でもとにかく、もうそこから逃れたくてしょうがなかったですよ。
信じ切った小田さんは、相手と通話を続けた状態で銀行の窓口で現金を振り込みました。
その金額は700万円。
振込先は今回の捜査のために特別に作ったものだと説明されました。
送金したあと、小田さんはあることに気づきます。
URLのドメインを見ると、
「kensatsu」が「kensetsu」に。
政府機関を示す「go.jp」が「gο-jp」になっていました。
すぐに弁護士と警察に相談し、だまされたことに気づきました。
偽サイトのURLをよくよく見れば明らかにおかしいんですが、
やっぱりあの時にすぐに気がつけなかったってことがどこかで冷静さを欠いていた。
こちらが頑張ってきたものを簡単にとることに対しては非常に怒りを覚えます。
逮捕状は本物?
今回の詐欺についてどう見ているのか、高知県警察本部に取材しました。
小田さんが示された逮捕状や守秘義務の誓約書は本物なのか。詐欺の対策を担当する警察官に確認してもらうと・・・
①日本語体の「令」という字
日本語の公用自体になっている「令」という字になっておりません。
このような書き方は、外国のフォントを利用している可能性がございます。
②誤字脱字
本来は「有効期間」と記載されるべき部分が誤字で「効期」となっています。
③改行している部分
左詰めで記載される部分が、変なところで改行されています。
警察がインターネットを介して、その方に逮捕状を示すということは100%なく、
ありえません。この場合は詐欺と断定していただいて大丈夫です。
また、警察は容疑者などと直接会わずにSNSだけでやり取りすることは決してないと注意を呼びかけています。
これらは警察機関や公共機関の信用を悪用して犯行に及んでおり非常に卑劣な犯行といえます。 SNSでの応対を求められた時は詐欺の可能性が極めて大きいですので、すぐに近くの警察署へ
事実確認のため赴いて連絡してください。