0561
俺が相手のことを暴露した後、多少剣呑な状況はあったが今は普通に話している。
女将さんは30代前半ぐらいの見た目だが結構長生きしているらしく、種族は魔女族だった。80歳ぐらいらしいんだけど色々な苦労があったのか、ちょっと老けた見た目だ。
メルは初めて会った時、同じ様な見た目で200歳を越えていたしなぁ……。お肌のケアって地味に大事なんだろう。今は初めて会った頃に比べて少し若返っていて、27~28歳くらいの見た目だ。
邪生の心臓ってやっぱり効果が高いんだろうと思うが、亡くなる1月前まで20代前半の見た目だったという伝説の魔女は、やっぱり伝説に相応しい人物なんだなー。
「いや、申し訳ない! まさか<伝説の魔女>のお孫さんだとは知らず、無礼な事をしてしまって……」
「別に無礼ではないし、気にしなくていいわよ。そもそも祖母は祖母、私は私だしね。それよりも、若い子ばかり食べるのはどうなのかしら? 刺されはしないだろうけど、代わりに哀しい老後になるわよ? 早めに子供を作る事をお薦めするわ」
「メルも2人子供が居るんだっけ? 僕達の中で子供を産んだ事があるのはメルだけだし、その辺りの事はよく分からないんだよね。大変なのは分かるんだけど、どれくらい大変かは想像する事ぐらいしか出来ないし」
「まあ、まずは妊娠するのが先だろうし、それまでは想像しても仕方がない気はするがな。300年くらいは今のままの恋人気分で構わないと言っていたし、直ぐに求めなくても良いんじゃないか? 旅もあるんだ」
「フォルも今すぐ欲しい訳じゃないんだろ? アタシ達もそうだけど、不老長寿である以上は焦る必要なんてどこにも無いしね。今はゆっくりと楽しめば良いのさ。こんな東まで来た事なんて無かった訳だし、次はどんな国なのかねぇ」
「東の国々かい? あの国々は碌なもんじゃないよ。10以上の国に分かれての戦争状態さ。それも100年以上も戦争を続けてるんだよ。かつては大帝国として繁栄してたのに、今じゃ無法地帯になってしまってる」
「姐さんも仰いましたが、自分の様に東の国々から逃げて来たのもおります。その立場から言いますと、東に行くのはお薦め出来ません。無法地帯ですし、村や町の者も盗賊と変わらない者が多いのです。正直者は馬鹿を見るというのが正しいところかと……」
「自分もそう思います。正直に言って、あそこは地獄と言っても差し支えありません。このオアシスに比べれば、あそこはまともな者の住む所ではないというのが偽らざる本心です」
「ただ、先代から聞いた話だと、東の国の東に海があるらしいんだ。その海の向こうに島国があるらしくってね。人の良い奴等が住んでたって言ってたよ。確かヤシマの国って言ってたかね?」
ヤシマの国ねぇ……。それって関八州の事か? 日本っぽい感じだとしたら、東の国々は中国か? 分かれてるって事は、五胡十六国時代みたいな感じなのかも……。
ただ、俺はその辺りの事は殆ど知らないんだよ。中国の歴史なんて、1番詳しくて三国志演義なんだよな。アレは歴史じゃなくて、小説だけどさ。
まあ、荒れてる国はスルーすればいいだけなんで特に気にしなくて良いとは思うが、東へ抜けていくのに時間が掛かるのはな。何とか最短で抜ける道はないものか……。こういう時は素直に目の前にいる人達に聞いてみるかね。
……このまま真っ直ぐ東へ行けば砂漠を抜けられるらしいんだが、その後も東へ真っ直ぐ行けば海にぶつかるらしい。その間の国は2つで、それが最短で海に出るルートなんだそうだ。
実はヤシマの国というのは多少知られていて、宝石とか銅や銀を輸入してる国らしい。向こうには絹とかを売っているそうだ。
何か南宋と日本みたいな関係だな。たしか古い時代にも、日本側からは翡翠や瑪瑙なんかを売ってたらしいし、この世界でも変わらないんだろう。それとも偶然か? 沿岸の国と島国というのは、結局似たような歴史を辿るんだろうか。
まあ、俺は元の世界を知ってるからそう思うだけで、この世界の人にとっては知りえない事だしな。
単に少し似てるだけで、俺だけは大きく似てると思い込んでるだけかもしれない。事前に情報を得ていると、情報通りに思い込んでしまうってどこかで聞いたな。
ヤシマの国はヤシマの国であって日本じゃない。思い込みは止めて、素直に見聞きした方が良いだろう。
他にも幾つか情報を教えて貰ったが、国境の町は北東方向らしい。じゃあ何故東だと言ったかというと、国境の町に素直に行くと税として半分以上の荷を奪われるそうだ。
だから商隊も国境の町には行かず、真っ直ぐ東に抜けた先にある村に立ち寄るらしい。
情報料として金貨3枚を支払ったら多過ぎると言われたが、「第一オアシスのゴミどもをブチ殺して得た金だから気にするな」と言ったら黙って受け取った。
オアシスの裏組織は互いに繋がっている部分もあるらしいが、第一オアシスのヤツは相当嫌われていたらしい。理由は、第二オアシスの裏組織を乗っ取った阿呆を煽ったのは、第一オアシスのあのクズだったからだそうだ。
どうも全てのオアシスを自分の物にしようとしていたらしく、このオアシスでもかなりの警戒をしていたらしい。と言っても、このオアシスは前の2つと違って遠い為に、奴等は攻めあぐねていたそうだが。
俺に喧嘩を売った所為で、オアシスを牛耳るどころか一家皆殺しという結果になったがな。あと、父親を殺されて恨んでいた娘だが、あの女は拷問好きで有名な奴らしく、何人も惨殺しているそうだ。
本当に自業自得のゴミどもだったんだな。呆れてものも言いたくなくなるとは、この事か……。
話が終わり女将さんと護衛は部屋を出て行ったので、鍵を掛けてから寝る事にする。女将さんいわく、ここから砂漠の終端まで徒歩なら7日で、ディキマで3日だそうだ。
俺達なら、おそらく1日で踏破できる距離だろう。ゆっくり寝て、夜の間に一気に突破してしまおう。それじゃ、おやすみ。
<異世界232日目>
おはようございます。今日で砂漠も最後かと思うと……本当に清々します。
流石に砂漠の景色にも飽き飽きだからなぁ。代わり映えのしない砂漠の景色によく耐えられるもんだと思うが、ここで暮らしている人達にとっては普通の事なんだろう。むしろ季節ごとに景色が変わる事に驚くのかもしれない。
「「「「「「チュッ! おはよう、皆」」」」」」
「おはよう、皆」 「ニャ」 「………」
「今日で砂漠も終わりかと思うと、早く起きる事が出来たよ。いい加減、この昼夜逆転の生活を何とかしたかったからね。今日は急ぎで走って行こうか」
「それがいいでしょう。私も、もう飽き飽きですから。口に出すと余計に辛いので言いませんでしたが、代わり映えのない景色はもう嫌です。まさか景色というものがここまで大事だとは、生まれて初めて知りましたよ」
部屋の中を綺麗に浄化した後に片付けて、宿を後にする。食堂に行き大銅貨18枚を支払って夕食を食べたら、オアシスを出発して東へと進む。
いつも通り【探知】と【空間把握】を使いながら進んで行き、休憩を挟みながらも順調に走って行く。
2度目の休憩時に魔物の争いを目撃したが、こっちを襲ってくる事もなかったのでスルーした。それ以外はイベントも無くどんどん進んで行き、4度目の休憩の後、遂に周囲の景色が荒地に変わる。
荒地ではあるものの、ようやく砂だらけの光景ではなくなったので喜びも大きい。ここで一旦カマクラと焼き場を作り、食事の後に仮眠をとる事にした。
ここからは昼夜逆転生活をする必要もないので、さっさと元の生活リズムに戻しておく必要がある。昼間寝て、夜に活動するなんて、不審者か盗賊ぐらいの者だからな。
いつもの3人に生地を練ってもらい、その間に真っ白なゴブリンの肉と内臓を全て出す。これでゴブリンは終わりなので、派手に使っていこう。
寸胴鍋に野菜と焼いたゴブリン肉を入れて煮込んでいき、内臓類は一口大に【分離】しておく。生地が練りあがったら竜の脂を鍋に用意して揚げていくのだが、揚げるのも3人に任せた。
ダナとメルとアルメアはそれなりに料理が出来るので助かっている。実際、生地を練るだけならディルとフォルにも出来そうなんだけど、そうすると誰かさんのみ何もしていない状態になるしなぁ……。
まあ、これ以上料理するメンバーが増えても、場所が足りなくて邪魔か……。
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0561終了時点
大白金貨3枚
白金貨9枚
大金貨119枚
金貨385枚
大銀貨544枚
銀貨335枚
大銅貨325枚
銅貨220枚
神金の矛
神鉄の太刀
アダマンタイトのサバイバルナイフ
氷擲竜の棒手裏剣
アダマンタイトの十手
王角竜の帽子
王角竜の革鎧
大海竜の半篭手
真っ黒な指貫グローブ
王角竜の剣帯
王角竜の脛当
海蛇竜のジャケット
真っ黒なズボン
真っ黒なブーツ
白い大型のアイテムバッグ