■4:万博の会場整備コストについて コストについて、明確なファクトに基づいて説明しておきたい ■ 万博のコストについて、幾らくらいが適正な額なのかという問題は、さまざまな議論があるに違いない。いろいろな算定方法がある中で、一つの基準となるのは、愛知万博に比べてどうなのか、という視点ではないだろうか 2005年の愛知万博(約1350億) この間の建設物価上昇は約1.5ー1.6倍 万博の規模が増大しているのでそれを考慮に入れると、 参加国増(121→150カ国以上、約1.24倍)、 想定入場者数増(想定入場者数1500万人→2850万人、約1.9倍、 (実質入場者数2200万人→2850万人、約1.29倍) となり、規模感で少なく見積もっても1.2倍になっている。それら加味すると 1350億(愛知整備費)x1.5(物価上昇)x1.2(規模係数)=2430億 となり、今回の会場整備費(2350億)が、愛知万博のものとほぼ同等以下となっていることがわかる。 愛知万博 1350億 (2003年工事開始時) ↓ 物価上昇 約1.15倍(2003年ー2020年) 規模拡大 約1.2倍(少なく見積もって) 1350億x1.15x1.2=1863億 ↓ 大阪関西 1850億 (2020年記者発表時) ↓ 物価上昇 約1.3倍(2020年ー2023年) 戦争による急激な物価上昇 1850億x1.3=2405億 ↓ 大阪関西 2350 億 (2023年最新) 物価上昇を加味すると、2000年末の1850億も、2023年の2350億も、共に愛知万博と同等か少し下回る額となっていることがわかる。2020年から2023年にかけての急激な物価上昇はご存知の通りロシアーウクライナの戦争によるもので、誰も予測できるものではなかった。 繰り返しになるが、我々は、愛知万博と同等ということが万博会場整備費として妥当であると考え、計画を進めており、今のところその範囲に収まっている。 ■ ちなみに万博招致時点での1250億という数字が一部メディアで取り沙汰され、その額からの増額幅の大きさを指摘されている。これは既に万博協会事務総長からも明確に言及されている通り、1250億は、何かをしっかり積算して作った数字ではない、超概算の額だった。 我々実働部隊は、適切に積算され、かつ愛知と同等である2020年末の1850億を出発点としている。 1250億という数字をもとにした比較は誤解を生むだけなので、以後、誤った情報が拡散しないようにご確認をお願いしたい。 ■リングの350億について 上記の試算から、万博の会場整備費が愛知万博と同等で適正だという前提に立つ。 そこでの設計者の役割は、適正な予算の中で、その配分を工夫して、質の高い会場デザインを作ることである。 いろいろな物に満遍なくお金を振り分けると、同じ総額でも特徴のない誰の記憶にも残らない万博になる。逆にを適切に集約させ、メリハリをつけることで、同じ総額でも、世界中の記憶に残るものを作ることができる。 今回のリングは、先日会場計画の意図について説明したポストでも解説した通り、会場計画の機能をしっかり満たしながら、さまざまな機能と意味をリングに集約し、限られた予算の中で最大の効果を生み出す工夫を持って作られている。 リングがなければ安くなるのではないか、というのは誤りである。現に僕がプロデューサーに就任した当時の、すでに先行して検討されていた、リングなども無い元々の設計案の概算が、ほぼ1850億程度だった。 ■ ちなみに、リングの施工床面積は、一階部分で約6万平米、屋上部分の歩行エリアで約2.5万平米、合計で約8.5万平米である。坪単価に換算すると施工床あたりの工事費は 350億/8.5万平米(25,680坪)=約136万円/坪となる。 高さ12mのエスカレータが上下合わせて9機、エレベータ5機、40機以上の公衆トイレを備えた高さ12ー20mの大規模木造建築であることを考えると、坪136万円はかなり安い額であることがわかる。これは施工してくれるゼネコンの努力の賜物であろう。リングは現状の半分の額でできるという声もあるが、これだけの仕様で半額の坪単価70万円を切る工事は、木造住宅の値段より安いこととなり、不可能な数字である。 会場整備費については、上記のように、丁寧に計算して説明することで、愛知万博の会場整備費と同等か少し安い程度であるということがご理解いただけると思う。 そしてその限られた予算の中で最も印象的かつ機能的な提案として、このリングの会場計画が生まれていることもご理解いただけると思う。