にこぱ氏という、音楽界隈の癌について
俺が最初に彼に会ったのは、サロンイベントだった。様々な連中が集まって、政治やらスピリチュアルやらVRChatの未来やら、そんな話題に没頭するイベントだ。
「音楽をやっているとマスターから聞いた」「自分も音楽をやっているので、ぜひ聞かせて欲しい」という位の会話を交わしたと思う。嬉しい申し出だと感じ、俺は一曲その場で披露した。確かやったのは「サタデーナイト・サテライト」という俺のオリジナル曲だったと思う。俺はギターがあまり上手じゃないから、大分はらはらする演奏だったと自分でも思う。
「良い曲だけど、アレンジにまだ改善の余地があるね」彼は言った。その通りだと思った。俺はアレンジャーを求めていた。「良かったら僕がアレンジを手伝ってあげようか?」願ってもない話だった。「そうしたら、僕の仲間たちに紹介できるからさ」うんうん。今のレベルではとても聞かせられないという意見は分かるし、一定のクオリティでないと立てないステージというものがあるのだな。色々聞いてみたいな。
そう、思っていた。しかしながら、彼の音源を聞いて全てがぐらついた。
シンプルに、そうシンプルに、音楽の趣味が悪い……!
「僕ってオシャレでしょ?」と言わんばかりに2小節毎に鳴らされ続けるCM7。フリー素材でももっと良いのがあるだろうというクオリティの、スカスカのピアノ。オーディオインターフェースにギターを直接ぶっ刺してそのまま録音したとしか思えないペラペラのギター。そして、ラップともポエトリーリーディングとも言えない、自己啓発文を読み上げるイケメンボイス。彼は、この楽曲の、女性ボーカルとイケボ以外の全てを担当したと、動画の説明欄にあった。
こんなやつに、アレンジして仲間に紹介してやろうとか言われてたのか。
こんなやつがプロデューサーを気取って、仲間と談笑するのがVRChatの音楽界隈なのか。
この時点で俺の何かが折れていたと思う。だが、当時バンドも組んでおらず一匹狼だった私に、選択肢はなかった。彼が仲間とともに私の楽曲について議論を重ねてくれるならば、それだけでも価値のある時間だ。そう思ったのだ。
2週間が経過した。特に何の音沙汰もなかった。「ごめんごめん、僕って多忙だからさ」久しぶりに会った彼はそんなことを言っていたと思う。その日は色々音楽の話をした。その中で、容認できない一言が飛び出した。
「VRChatで流行る音楽を作りたければ、VRChatで流行ってる音楽をたくさん聴くといいよ」
ダサい。とてつもなく考え方がダサい。身内にウケるために、身内でウケ狙いをするという目的にための資料として、わざわざVRChatの音楽を摂取するというその考え方がダサい。
そもそもVRChatで流行ってる音楽って何だよ。まだ音楽界隈には居たことなかったが、みんなが口ずさめる楽曲なんて一つもなかったぞ。それが流行ってことだろ?音楽界隈を除いた、それ以外の全ての人々が知っててこその流行だろ?彼は大いなる誤解をしているように見えた。音楽界隈がVRChatの全てであるという、傲慢な誤解だ。私は決して音楽界隈へ喧嘩を売っている訳ではない。結局のところ、規模としてはそう大きくないフリーマーケットの中で、生産者同士がやり取りして、作った楽曲をお互いに消費しあっている、その段階のコミュニティであると、私は考えていた。だが彼の頭の中には、あたかもVRChatという巨大な市場が存在しているかのようで、それを前提にやたら規模の大きい話をするのであった。
私はVRChatはそう大きな規模の音楽業界を有してはおらず、身内ノリを狙って周りの傾向に迎合するのは有意義だとは思えない、Apple Musicにいくらでも世界中の音楽が溢れていますよということを遠回しに伝えたが無意味だった。私の主張の中で用いた「本物の音楽」というワードがお気に召さなかったようで、「それはVRChatの音楽が本物ではないということか」と論点とは別のところで突然怒り出したのだった。「VRChatには、メジャーに飛び出していけるような音楽がたくさんある」そう彼は主張していた。だが前述した通り、メジャーレーベルに所属しているVRChat出身のアーティストは現時点では存在しない。彼の誇大妄想としか、私にはどうしても思えないのであった。
さらに1ヶ月が経過した。「いやいやごめん、僕も新曲とか書くのに忙しくてさ。でもしばらく君はライブでない方がいいと思うよ?」初心者混じりのインスタンスで彼はそんなことを言っていた。私はこの時点で彼に見切りを付けていたが、彼は私というプロデューサーであり続けるための存在を、関係性を維持したいようであった。致し方なかった。だがな、その後の初心者さんとの一連のやり取りは看過できなかったなあ。大体覚えてるから書くな。
「ナンバーガールって、どんなバンドですか?」初心者が彼に尋ねた。
「ああ、不眠症女みたいなバンドだよ」彼が応じた。
「へえ。ナンバーガール聞いたことないんですけど、ジャンルとしてはポストロックとかですか?」
「うん、そうだね。ナンバーガールはポストロックだよ」
この時点で、彼のロックンローラーとしてのキャリアは終わりを迎えたと思う。少なくとも私の中では。これを読んでいる人たちの中で何人が同意してくれるかは分からないが、少ない問答の中で、彼は致命的な過ちをいくつか犯している。
まず、例えが悪い。不眠症女は良いバンドだが、それでもなおナンバーガールという大きすぎるバンドを例えるのに用いるのは明らかに両バンドに失礼だ。熱帯雨林がどんな所か問われた時に「ジャングルパークみたいな所だよ」と答えるのに等しい、愚かな回答だ。
そしてナンバーガールは明らかにポストロックじゃねえだろ。舐めてんのか。ポストロックあんまり聞いたことないし、オルタナとポストロックの境目なんて俺は知らないがな、一回でも聴いてればあれをポストロックと呼ぶわきゃねえだろうが。彼は騙ったんだよ。聞かずに騙りやがった。だからロックンローラーとしてはクソだ。こんな文章を書く俺もクソ野郎だが、クソそのものと、クソを無限にひり出すクソ袋のどっちがマシかといえばクソだろう。流せば消えるからな!だが、あいつは今でもクソをひり出して、VRChatを悪臭の霧で覆わせている。
ここまでのやり取りで俺はキレた。だからTwitterで名前を明かさずに上記のエピソードを部分的に公開し、罵った。最初に書いたサロンの店長が「私の友人を誹謗中傷するのは看過できない」と割り込んできた。だから表面上は謝って、DMで彼の音楽に全く興味を持てないことを伝えて関係を切った。
それで終わるはずだったが、どうやら彼は私のことを意識しているらしい。
その後私は仲間に恵まれ、BLUE RACCOONというバンドを結成した。同期のバンドとも仲良く対バンしたり、色んなライブに参加させていただいている。彼はあらゆるVRChatの音楽イベントをリツイートしているが、私のバンドが絡んだ瞬間にピタッとリツイートをやめるのだ。興味深い現象だった。何故なら、彼は過去にこんなことをツイートしていたからだ。
「僕は人間的に認められない人が作った音楽でも、素晴らしければ悔しいけど褒めます」
私は嫌味のつもりでそのツイートにいいねを押した。彼はすぐにツイートを削除し、こんな弁明をツイートした。「改めて素晴らしい音楽は素晴らしいと認めますけど。にこぱの身体は一つしかないし友人と遊ぶ時間もあるので、ライブに行かないから素晴らしい音楽じゃないという訳ではありません」
聴かずに語るな。そもそもいいねされた位でツイートを消すな。後大の大人が一人称に自分の名前を使うな。
俺の話は大体終わりだが、俺がいいねをして彼が消したツイートがもう一つあって、俺が心から謝罪を要求したい内容だったので共有させてくれ。
「所詮音楽は僕にとって、会話を彩るエッセンスの一つに過ぎないのだから」
音楽に謝れ。真剣に音楽を演って、それで生計を立ててる人に謝罪しろ。どの面下げて音楽界隈に居座ってんだお前は。ツイート消したってことはヤバい内容書いた自覚があるんだろ?本音がポロリしちゃったんだろ?世間が許しても俺は許さん。音楽を舐めるな。俺の話は終わりだ。読んでくれてありがとう。
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