2023.07.28
# 年金

【追及スクープ】日本人500万人のマイナンバーと年収情報は、池袋の一室から中国の工場に「丸投げ」されていた

《事件の概要》 2017年の大幅な税制改正を受け日本年金機構は、厚生年金から所得税などを源泉徴収する「税額計算プログラム」を作成し直す必要があった。約770万人の厚生年金受給者に「扶養親族等申告書」を送付。記載内容に漏れや間違いがないかをチェックしてもらうとともに、あらたにマイナンバーや所得情報を記入し、送り返すよう要請。送り返されてきた「申告書」をデータ入力することでプログラム化をはかることとした。機構はその入力業務を、東京・池袋のデータ処理会社、SAY企画に委託したものの、同社が中国大連市のデータ処理会社に再委託したため、そこから日本の厚生年金受給者の個人情報が、中国のネット上に流出した。

詳しくはこちら:中国にマイナンバーと年金情報が「大量流出」していた…厚労省が隠蔽し続ける「不祥事」の全容

マイナンバーと年収情報が中国に大量流出した—日本年金機構に関わる委員を歴任し、この問題で検証委員も務めた筆者が、決死の覚悟で「虚構のストーリー」と「欺瞞の論理」を明らかにする。

岩瀬達哉(いわせ・たつや)/'55年、和歌山県生まれ。'04年、『年金大崩壊』『年金の悲劇』で講談社ノンフィクションを受賞。著書に『新聞が面白くない理由』『裁判官も人である 良心と組織の狭間で』『キツネ目 グリコ森永事件全真相』(いずれも講談社刊)ほか多数

流出はないと言っていたものの

「どこに迷惑かけてるの? その後、何も出てきてないでしょう。これまで新しい情報の流出はないわけだから—」

6月18日に日本年金機構の水島藤一郎理事長を自宅に訪ねると、玄関先でこう嘯いた。

「新しい情報の流出」とは、2年前の衆議院予算委員会で、厚生年金受給者のマイナンバーや所得情報などが流出していた事実を認めて以降、「新しい情報の流出」は指摘されていないという意味である。

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当時、水島理事長や厚労大臣官房の高橋俊之年金管理審議官は、情報流出は一切ないと国会で断言していた。

ところが立憲民主党の長妻昭議員が、機構の「法令等違反通報窓口」に届いていた「通報メール」を示しながら、「(このメールには)二人分のマイナンバーが書いてある。流出してるじゃないか」と追及したことで、ようやく流出の事実を認めたのである。

 

水島理事長は蚊の鳴くような声で、こう答弁していた。

「このマイナンバーは、いずれも届出書の扶養親族等申告書に記載されたものと同一であるということを確認しております。記載された御本人のものであることを確認いたしております」(衆議院予算委員会第五分科会・2021年2月26日)

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