さらなる増税が予想される
森永:そんな余力はないでしょう。実質GDPの個人消費は4四半期連続のマイナスになっていて、これはリーマンショック以来です。リーマンショック時は世界的な金融危機が起きていましたが、現在金融危機は起きていませんし、もっと言えば「リベンジ消費」が期待されているほどです。
日本のGDPに占める個人消費の割合は約55%ですが、その消費力が極端に落ち込んでいるのが現状なのです。
国家も企業も、中長期的な成長を見込むのであれば「投資」をしなければなりません。国家の場合はそれが「財政出動」にあたります。PB黒字化を目標にするということは、国債発行に上限を設定することの他に、歳入を増やさなければなりませんから、さらなる増税が必要になることは目に見えています。
ただでさえ弱っている国内経済に「PB黒字化」を金科玉条としたマクロ経済政策を打ってしまうと、供給力がさらに先細ってしまいます。
もし本当にPB黒字化をはじめとした“財政健全化”を目指すのであれば、歳入アップを目指すべきでしょう。
「日本は人口減少していくから財政出動しても無駄だ」という意見もありますが、例えば台湾のTSMCの半導体工場を誘致した熊本の菊陽町では、これから所得も上がるでしょうし、人口も増えていくでしょう。投資をすることによって、結果的に税収も増えていくのです。
むしろ、PB黒字化を金科玉条のように掲げて、投資(=財政出動)をしないことになれば、民間の懐は寂しくなり、税収も吸い上げられなくなります。結果として、歳入と歳出のバランスが崩れ、PB黒字化という目標から遠ざかってしまう可能性すらあるのです。