地方自治体でハラスメント続発なぜ?首長に求められる「受け止め力」

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臼井昭仁 富岡崇
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 職員に「辞めろ」と迫る。女性職員の体を触る――。愛知や岐阜で、首長や地方議員による職員へのハラスメント行為が相次いで明らかになった。ハラスメント根絶に向けた取り組みが社会で続く中で、地方の現場でこうした行為がなぜ続くのか。

 「いまは言葉遣いは改め、やさしく言うようにしていますよ」

 市職員へのハラスメント発言などがあったとして、9月に市議会で自身への議員辞職勧告決議案が可決された愛知県東海市の村瀬進治市議(74)=6期目=はそう話す。

 市議会がまとめた調査報告書によれば、村瀬市議は職員に対し、「くそたわけが。出来の悪いやつだな」「そんなこと10歳くらいの子どもでも分かるぞ」「すぐ辞めろ」などと発言したとされる。

 村瀬市議は取材に、「(くそたわけは)この辺りではよく使う言葉。声も大きかったかもしれないが、そんな激しい言い方はしていない」と説明。「言葉遣いは改めることにした」としつつ、「市民の代表なので役所に対してやることはやる」と話した。

 一方、「被害」を受けたという2人の職員は、取材に対して「馬鹿にしたような口調でとても受け入れられるものじゃなかった。何度も繰り返され、頭が痛くなってきて体調も悪くなったこともある」「きつい言葉で本当に気がめいった」と答えた。

「良かれと思って言ったつもりでも…」

 こうしたハラスメントの背景のひとつに、社会の認識とのズレを指摘する声があがる。

 「何やっとるだ。出てけ」。愛知県内のある市長は数年前、ミスを繰り返す市職員にこう怒鳴ったことを振り返る。

 市長になる前の県職員だった頃は、上司から怒鳴られるのは「普通のこと」だったとし、自らが市長になった際も、「部長」のつもりで部下を指導した。

 だが、ハラスメントへの社会の視線が厳しくなっていることを感じたことで認識を改め、職員への指導が必要な際は上司に任せている。「良かれと思って言ったつもりでも受け止める側の気持ち次第」と述べる。

 一方、愛知県内の町長は、こんな「本音」も口にする。「選挙で当選して任期は4年。この間に結果を出さないといけない。急いで取り組まないといけないから職員を追い込んでしまうことがある。職員は定年まで何もなくても40年間働けるが……」

選挙の状況も影響?ハラスメントを生む土壌とは

 岐阜県岐南町で小島英雄町長が複数の女性職員の体に触るなどしていたことが発覚したほか、愛知県東郷町の井俣憲治町長は職員に「死ね」「殺すぞ」とパワハラ発言を行ったことを認めた。地方自治の現場でこうした行為がなぜ相次ぐのか。

 「人口が少なく、流動性が乏…

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この記事を書いた人
臼井昭仁
半田支局長

農林水産業、運輸、過疎問題

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    小松理虔
    (地域活動家)
    2023年12月26日12時0分 投稿
    【視点】

    地方自治体の首長の場合は、良くも悪くも「目立っている」のでニュース化されやすいですが、こういうハラスメント、残念ながらどこにでも転がっているものだと感じます。記事にならないところで、それこそ毎日にようにある。 日々の暮らし、仕事、あるいは

    …続きを読む