実から立派な芽が伸びることから、「めでたい」縁起物としておせちやお祝いの料理で親しまれてきた。平安時代に中国から伝わったとされ、広島県福山市が全国生産の6割ほどを占める。
市内の沼地に自生していたものを、明治期に福山城周辺の堀に植えたのが栽培の始まりとされる。2020年に「福山のくわい」は、地域ならではの産品の名称を知的財産として保護する農水省の「地理的表示(GI)保護制度」に登録された。
水田のような泥の中で育ち、地下茎にできる丸い部分(塊茎)を食べる。ほろ苦さの中にほんのりと甘みがあり、加熱するとほくほくした食感になる。含め煮が一般的。素揚げや炊き込みご飯、中華風炒め物や洋風クリーム煮などでも楽しめる。
11~12月が収穫の最盛期。「芽が出ますように」という立身出世のほか、地下茎にたくさんの実を付けることから子孫繁栄を願う気持ちも託される。