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わたしのふるさと便

あまり知られていない観光スポットや地元で人気の食べ物を、現地で勤務する支局長が紹介。47都道府県を巡ります。

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イチオシマップ 山形県 酒田市など「映画・おくりびとの聖地」 繁栄の跡、ノスタルジー

旧割烹小幡を改修した交流観光拠点「日和山小幡楼」=酒田市で

 2022年に両親を相次いで亡くした時、思い出して見直した映画が「おくりびと」だった。くしくも舞台は現在の勤務地、山形県。県内での映画撮影の事情に詳しい山形市のシネマパーソナリティー、荒井幸博さん(66)に「主なロケ地の庄内地方は海と山両方に恵まれ、趣深い場所ばかり。ぜひ行ってみて」と勧められ、遅ればせながら“聖地巡礼”をした。

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映画「おくりびと」で主人公が鳥海山を背にチェロを弾いた月光川河川敷には、体験できるよう椅子が置かれている(冬季は撤去)=遊佐町で

 港や日本海、市街を一望できる酒田市の景勝地・日和山に建つ明治・大正期の和館と洋館からなる旧割烹(かっぽう)小幡(おばた)。洋館は、映画では主人公が納棺師として勤務する会社となった。訪ねると、古びた外観は一転、建築当初の姿に塗り直され一新。市が改修し、ベーカリーやカフェ、レストラン、交流スペースなどが整備され、21年に交流観光拠点「日和山小幡楼」に生まれ変わっていた。

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映画の重要場面が撮影された「鶴乃湯」は鶴岡市の撮影場所に移築され、公開されている。現在は4月下旬まで冬季休業中

 近くの石畳の街並みや映画館「港座」跡は映画と変わらず、懐かしさが漂う。少し歩けば、コンサート場面が撮影された酒田市民会館・希望ホールや、車窓から見えた国史跡「山居(さんきょ)倉庫」がある。

 映画には登場しないが、即身仏で知られる海向寺、酒田舞娘(まいこ)の踊りを見ながら食事ができる観光施設「相馬楼」や料亭文化を伝える国の登録有形文化財「山王くらぶ」など、北前船交易で栄えた港町の歴史を感じさせる街歩きが楽しめる。

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 公開から15年、ロケ地を訪れる人は少ない。主人公の実家になった上山コンチェルト館は閉鎖され、上山市の温泉街にたたずむ。

 重要場面が撮られた鶴乃湯は鶴岡市で営業中の銭湯だったが廃業後、数々の映画が撮影されている同市のスタジオセディック庄内オープンセットに移築され公開されている。鳥海山を背に主人公がチェロを演奏した遊佐(ゆざ)町の月光(がっこう)川河川敷とともに、冬季以外は映画のシーンを追体験できる。

 主人公のように親を送れただろうかと自問しながらの道中だったが、映画で象徴的に描かれた北国の厳しい冬や白鳥が飛来する田園風景など、変わらないものの良さが心にしみた。【山形支局長・横田信行】


ふるさと便・山形県 おすすめスポットツアー

 SHONAI SUIDEN TERRASSEに泊まる「おくりびと」の舞台・庄内ひな祭りとアル・ケッチャーノのイタリアン(商品コードW0073-37) 2024年4月2日発(1泊2日):7万5800~7万9800円。東京駅発着、新幹線利用。鶴岡駅集合・酒田駅解散は2万1000円引き。4食付き。添乗員同行。お泊まりは天然温泉。申し込み・お問い合わせは毎日新聞旅行(03・6265・6966、平日10~16時、土日祝休)まで。ツアー詳細はこちらから見られます。

https://l.mainichi.jp/mwC9NJv


 <メモ>

「おくりびと」は2008年に公開された滝田洋二郎監督の日本映画。主演は本木雅弘。チェロ奏者から納棺師に転職した男性が古里・山形でさまざまな人や死と向き合い成長していく物語で、米アカデミー賞外国語映画賞、日本アカデミー賞最優秀作品賞など数々の賞を受賞した。


次回21日は高知県です

 「お国トリビア」では、各県にまつわる隠れた事実、興味深いことなどを取り上げます。14日は休載し、21日は高知県、28日が栃木県です。気になる都道府県についての疑問点や知りたいことなど、皆さまのご意見をお寄せください。郵便は〒100-8051(住所不要)毎日新聞地方部「わたしのふるさと便」係、メールはt.chihoubu@mainichi.co.jpへ。二重投稿はご遠慮ください。掲載分の著作権は毎日新聞社に帰属します。ただし、投稿者本人の利用は妨げません。毎日新聞の電子媒体にも掲載します。

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