キラキラと輝く魚体が美しい。刺し身にしてしょうゆとおろしショウガでいただくのが広島の夏の風物詩だ。西日本を中心にだしをとる「煮干し」や「いりこ」の原料として知られるカタクチイワシ。広島では「小イワシ」と呼ばれ、古くから親しまれてきた。戦国時代から行商が行われたとされ、現在は毎年6月に漁が解禁されると、飲食店やスーパーに一斉に並ぶ。
広島の海産物といえば養殖カキが有名だが、魚類では小イワシが県内漁獲量の約7割を占める。安芸灘や燧(ひうち)灘といったプランクトン豊富な漁場で、小イワシは大きく育つ。大きなものは刺し身や天ぷらで、稚魚(しらす)は加工して「ちりめん」に。川から栄養分が流れ込み、島々を通る海流とほどよい穏やかさの海が育む。カキ同様、小イワシもまた瀬戸内の恵みなのだ。